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借地の相続税評価はどう決まる?
計算方法と注意点も解説
2025.07.22

● 親から引き継いだ借地、相続税評価がどうなるのか不安
● 路線価や借地権割合ってなに?調べても難しくて困っている
● どの評価方法を使えば損をしないか、自分に合った方法が知りたい

借地の相続は、土地そのものではなく「権利」の評価になるため、通常の不動産よりも複雑です。
契約内容や権利の種類によって評価方法が異なるうえ、路線価や借地権割合など専門的な知識も求められます。

この記事では、借地の相続税評価の仕組みから計算方法、よくある間違いまでをわかりやすく解説します。

この記事でわかること

● 借地の相続税評価がなぜ複雑なのか、その背景と理由
● 普通借地権・定期借地権それぞれの評価額の計算方法
● 借地相続で起こりやすいミスやよくあるトラブル

はじめに

借地を相続した場合、「土地を持っていないのに相続税がかかるの?」と戸惑う方も多いでしょう。
借地権とは、他人の土地を借りて建物を建てる権利であり、相続や贈与時には正確な評価が求められます。

しかし、土地の路線価や借地権割合など専門的な用語が多く、評価方法も一様ではありません。
そのため、「どう計算したらよいかわからない」「評価額によって税額が大きく変わるのでは?」と不安になる方も少なくありません。

ここからは、借地の相続税評価の基本から計算方法、注意点までをわかりやすく紹介していきます。

借地の相続税評価はなぜ複雑なのか

借地の相続税評価を正確におこなうには、契約内容や利用形態、過去の権利変動や土地ごとの条件が複雑に絡み合い、同じ土地でも状況によって評価額が大きく異なる場合があります。

また、法律や税制も毎年改正がおこなわれるため、最新の制度を把握する必要があり、さらに難易度が高いです。
ここでは、こうした複雑な要素をさらに掘り下げて解説します。

借地権は「使用権」かつ評価の対象が複数存在する

借地権は「所有権」とは異なり「使用権」と呼ばれる特性を持つため、評価対象が借地権そのものだけにとどまりません。
たとえば借地に建物が建てられていれば建物の価値も別個に評価対象となり、あわせて地主が持つ底地(その土地の所有権部分)との関係が生じます。

さらに契約時の権利金、地代、更新料など契約内容の詳細や経緯も評価に強く影響します。
加えて、建物の老朽化や使用状況によって実際の経済的価値が大きく左右されるのも珍しくありません。

そのため、評価の場面では「どの資産を、どのタイミングで、どこまで加味するか」といった判断が必要になり、一般的な不動産評価よりも多層的かつ専門的な視点が求められます。

借地契約の種類で評価方法が異なる

借地権の評価方法は、その契約形態によって大きく異なります。
代表的なものとして普通借地権、定期借地権、一時使用借地権があり、それぞれの契約目的や期間、権利内容に応じて適用される計算方法や根拠が変わるので注意が必要です。
普通借地権なら、自用地評価額に借地権割合を掛ける単純な形ですが、定期借地権となると残存期間や現在価値の計算が含まれて複数の算定項目が出てきます。

更に一時使用目的や特別な契約条件付きの場合は、国税庁の評価通達にも例外的な規定が設けられる場合があり、標準のルールでは対応しきれないケースも少なくありません。
契約内容の細かな違いが直接評価額に直結するため、評価の際はまず契約分類を正確に見極める点が極めて重要となります。

権利関係の複雑さが評価の難易度を上げる

借地権は一人の相続人だけでなく、複数人で共有されていたり、相続の回数ごとに持分が細分化している場合が少なくありません。

また、地主や第三者との間で慣例や口約束、未登記の変更が重なっているような場合、現場ごとの調査やヒアリングが不可欠となります。
仮に権利金の支払い状況や地代の改定経緯などに曖昧な部分が残っていれば、それらの不明点が評価額の決定をさらに難しくします。
実際には契約書が失われていたり、相続人間の認識に食い違いが生じる場合も珍しくありません。

さらに、使用実態によって「使用貸借」と判断されるケースでは評価がゼロになるなど、個別判断の要素も増えます。

路線価・借地権割合など専門的な知識が必要

借地権評価の最大のハードルの一つは、路線価や借地権割合、不整形地補正率など国税庁が発表する各種専門的な数値情報の活用です。
これらは毎年更新されるうえ、地域や道路ごとに細かく数字が異なり、正確な土地番地や利用形態まで総合的に判別しないと適用できません。

また、借地権割合のアルファベット記号や倍率表の読み違いによる評価ミスも頻発します。
たとえば土地に高低差や特殊な制限がある場合には、さらに別計算の補正が加わります。
こうした数値の扱いに不慣れな人が独力で評価作業をおこなうのはリスクが大きく、場合によっては税額の過不足によるトラブルや追徴課税に発展しかねません。
専門家の知識と経験が特に重要視されるポイントです。

借地の相続税評価額の計算方法

借地の相続税評価を正確におこなうには、まず基本構造をしっかりと理解しましょう。
土地ごとの評価は路線価と借地権割合、そして契約内容や地域特性によっても違いが生じます。

ここでは、基本的な評価の考え方から契約ごとの詳細、借地権割合や路線価の調査法まで具体的な手順とともに説明します。

借地の相続税評価額計算の基本

借地の相続税評価額の計算は、「自用地評価額」に「借地権割合」を乗じる方式が原則となります。

自用地評価額とは、その土地を持ち主が自分で使用していた場合の評価額で、路線価地域なら「路線価×土地面積」、倍率地域なら「固定資産税評価額×評価倍率」で算出が可能です。
算出した自用地評価額に、国税庁が地域ごとに公表している借地権割合(たとえばA~Gの記号に応じて30〜90%)を掛け合わせます。

さらに、土地や契約ごとの状況によって適用例外が発生するケースもあるため、個別具体的な契約条件・地域判定も大切です。
各手順を表にまとめると次の通りです。

各ステップ 内容
自用地評価額の算出 路線価×面積 または 固定資産税評価額×評価倍率
 借地権割合の確認 路線価図・評価倍率表での割合の確認
評価額の計算 自用地評価額×借地権割合

普通借地権の相続税評価額の計算方法

普通借地権の評価額算出は特にシンプルで、土地の自用地評価額に設定された「借地権割合」を掛けるだけで完結します。
たとえば、路線価が40万円/㎡で面積が100㎡なら自用地評価額は4,000万円、借地権割合が60%の場合は4,000万円×0.6=2,400万円が評価額です。

借地権割合の判別は国税庁の路線価図記載のアルファベット記号(例:Dなら60%)でおこないます。

項目 手順・判断基準
自用地評価額 路線価×面積 または 固定資産税評価額×倍率 4,000万円
借地権割合 路線価図の記号(例:D=0.6) 60%(0.6)
評価額 自用地評価額×借地権割合 4,000万円×0.6=2,400万円

ただし、権利金の支払い状況や地代が著しく低い、またはない場合、使用貸借として評価ゼロとなる場合や、地代の設定による例外計算(比率での調整)にも注意が必要です。
契約内容を詳細に確認し、正規の算定式が適用できるか事前チェックを徹底しましょう。

定期借地権の相続税評価額の計算方法

定期借地権の評価は、普通借地権よりも複雑です。

相続時点において借地権者に帰属する経済的な利益を算出し、設定時に受け取る利益の総額や、現時点の残存期間に応じた複利年金現価率なども考慮されます。
具体的には「自用地評価額×{(設定利益合計÷通常取引価格)×(残存期間の現価率÷全期間の現価率)}」の計算式が用いられるのが特徴です。

計算項目 内容
自用地評価額 路線価または倍率法で算定
設定利益/通常取引価格 借地権設定時に得た利益と市場価格の比率
複利年金現価率(残存/全期間) 国税庁基準の年利率に基づく計算
評価額 自用地評価額×{(利益合計÷通常価格)×(現価率比)}

このため、借地権設定時の契約内容や現時点の年数、経済価値が計算に大きく関わります。
また、専門知識や資料が不可欠のため、迷いがあれば必ず専門家の協力を得るのがおすすめです。

借地権割合・路線価の調べ方

借地権の評価には、必ず「路線価」と「借地権割合」の確認が必要です。
これらは国税庁の公式ウェブサイトで毎年公開されており、該当区画の地番や住所から該当路線価(1㎡単価)やその横に記載された借地権割合(A〜Gで30〜90%)を調べましょう。

倍率地域であれば「評価倍率表」で数字を確認し、固定資産税評価額に倍率をかけます。
これらはその地域ごとに異なる数値なので、必ず毎年最新版を使って調べ、申告内容に適用する必要があります。
手続きは簡単ですが、調査ミスがあれば評価額にも誤差が生じるため慎重な確認が重要です。

項目 方法・入手先 ポイント
路線価 国税庁Web「路線価図」で地番から確認 都度更新され、1㎡単価が記載
借地権割合 路線価図記号(A~G)で数字を特定  地域により30%~90%
倍率 評価倍率表から倍率を取得 特に地方部や倍率地域で利用

借地の相続税評価でよくある間違いと注意点

借地の相続税評価には契約や土地の状況を正確に把握する必要がありますが、現場では誤認や手続き上のトラブルが頻繁に発生する傾向が高いです。
さらに、特例適用の可否や各種書類の有無も、税負担や遺産分割に直結します。

ここでは、借地の相続税評価でよくある間違いと注意点について各ポイントを詳細に解説します。

契約内容や地代の誤認への注意

借地の契約内容や地代の設定を正確に理解しないまま評価手続きへ進むと、誤算が生まれる典型例となります。

たとえば契約書の記載事項や更新時の書面、過去の権利金の受け払い状況などを十分に検証しなければ、その契約が本当に「普通借地権」に該当するか、地代が市場相場と合致しているかの判断を誤る場合もあります。

さらに、旧来の口頭契約や非公開の合意事項が残っていると、評価基準と現実がかけ離れ、租税負担や名義の扱いでも支障が生じるでしょう。
慎重に書類の内容を現況と照合し、疑問点や曖昧な部分は専門家とともに一つずつクリアにしていく姿勢が不可欠です。

借地権割合・路線価図の見落とし

借地権評価の実務で多いのが、適用すべき借地権割合や路線価そのもの、またはいつの年度のものかを取り違えたり、複数路線に面するケースで優先順位を誤る場合です。

路線価や借地権割合は国税庁の基準で毎年改定されており、年度や地番によって数値が変わります。
そのため単に「前年と同じ数値を使う」「周辺地と同じ感覚で設定する」などの安易な判断は禁物です。

また、土地が2つ以上の道路に接している場合、どちらの路線価を使うべきか間違えやすいので、該当地の最新路線価図や評価倍率表から、妥当な数値を丁寧に確認する必要があります。

手続き・名義変更で問題になりやすい

借地の相続で生じやすいトラブルのひとつが、名義変更や関連手続きを怠る場合です。
相続や譲渡が発生した際、速やかに名義や登記の変更を実施しないと、将来的な契約更新や賃貸借契約上で地主側と認識の違いが生まれる恐れもあります。

特に借地権は不動産とは異なる独特の承継ルールも多いため、地主の承諾取得や公的書類の準備、相続人全体での協議といった手順を計画立てて進めるのが重要です。
不明点や合意に遅延が出た場合は、司法書士や税理士等の第三者専門家のサポートを活用しましょう。

借地の上の建物は相続登記が必要になる

土地の借地権だけでなく、その上に建つ建物にも相続登記が必要です。
土地と建物は別個の財産として、それぞれ名義の移転手続きをしなければなりません。

とくに建物を複数人で共有していた場合や遺産分割協議前の状態で放置してしまうと、次世代でさらなる相続や分割時に大きな混乱を招くリスクがあります。
登記申請には戸籍や協議書など多数の書類も伴い、適正な書類準備とともに法務局で手続きを速やかに済ませるのが、将来のトラブル回避につながります。

借地にも小規模宅地等の特例を適用できる

借地の上に居住用建物が建っている場合、「小規模宅地等の特例」を活用できる場合があります。
本特例では一定の要件を満たせば評価額を大幅に減額でき、相続税の負担軽減が期待できます。

たとえば被相続人の居住用で相続人がそのまま住み続けるケースや、特定同族会社の事業用財産などが該当しやすいです。
制度を知らずに単純評価して申告し過払いになる例も多いため、特例の適用要件・申請手順・必要書類をしっかり調べ、対応漏れの無いように進めるのが重要です。
最新の法改正状況もあわせて確認しておきましょう。

まとめ

借地の相続税評価は、土地そのものではなく借地権と呼ばれる使用権に対しておこなわれるため、評価方法が複雑になります。
契約形態や借地権の種類、路線価や借地権割合などを正確に把握するのが重要です。

また、特例の適用や登記の手続きなども見落としがちなポイントです。
誤った評価は税負担の増加や手続きトラブルを招く可能性があるため、不安な場合は税理士や専門家に相談するのをおすすめします。



 

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