借地権の相続を放棄するメリットやデメリットとは?
手続きの方法を解説2025.02.13
●両親から相続した借地権を相続放棄しようかで悩んでいる
●相続放棄するメリットとデメリットが知りたい
●相続放棄の手続きの仕方がわからない
ここでは両親から相続された借地権を放棄すると、どのようなメリットとデメリットがあるかを解説します。
また、相続放棄するときの注意点や手続きの流れもあわせて解説します。
この記事でわかること
●借地権を相続放棄する際のメリットとデメリット
●相続放棄する際の注意点
●相続放棄の手続きの仕方
借地権の相続を放棄するメリットとデメリット
建物を建てる目的で、他者が所有している土地を借りる権利を借地権と呼びます。
建物を有効に活用するのに必要な権利ではありますが、相続人のなかには、権利を手放したいと相続放棄を考える方もいるでしょう。
ここでは、借地権の相続を放棄する場合のメリットとデメリットを解説します。
地代や固定資産税などの支払いが不要なのがメリット
借地権がある建物を相続した際は、故人と地主間で交わした契約に基づき、地主に対して地代を支払う必要があります。
借地権の相続を放棄をすると、土地の借主としての地位が受け継がれなくなるため、契約内容や期間に関係なく、地代の支払いの拒否が可能です。
さらに、借地権のある建物を相続した場合は、財産の所有者に対して固定資産税や都市計画税を支払わなければなりません。
固定資産税や都市計画税は相続された年に限らず、毎年納税義務が生じます。
相続放棄すれば納税義務がなくなり、経済的負担が軽減されます。
建物の管理や売却の手間が省けるのがメリット
相続した家を所有し続ける間は、家を定期的に管理しなければなりません。
とくに空き家であれば、居住している家屋と比べて老朽化が早い傾向にあり、破損しているケースもあります。
月に何回か清掃や換気、点検に出向いて家を管理するのは手間がかかり、また、管理会社へ管理を委託する場合は、手間が省ける代わりに手数料が生じます。
ほかに、建物の賃貸物件として活用したり、売却したりして利益を得る方法がありますが、様々な手続きをしなければなりません。
相続放棄すると建物の管理や売却する手間が省けるのが利点です。
相続人同士とのトラブルに巻き込まれなくなるのがメリット
借地権の相続で、地代や更新料の交渉、立ち退きの話し合いから地主とトラブルが生じる可能性があります。
さらに、誰が相続した建物を所有するのか、管理費と建物の解体費は誰が負担するかで他の相続人とトラブルになるケースもあります。
トラブルが解消されるまでに数年かかるケースもあるでしょう。
相続放棄すると、はじめから相続人ではない扱いとなるため、地主や相続人同士のトラブルを回避できるのがメリットです。
地主や相続人との仲が良くなく、揉めそうであれば放棄するのを推奨します。
他の遺産もすべて放棄しなければならないのがデメリット
借地権の保持が煩わしいとの理由で、相続放棄しようと考える方もいるでしょう。
しかし、借地権だけでなく、すべての財産も相続放棄しなければならない点に注意してください。
相続放棄をすると、被相続人の預金や現金などの金融資産、不動産などの利益になる財産も手放すようになります。
もし両親と同居していた場合は、家から出ていかなければならなくなるでしょう。
また、1度相続放棄すると、原則撤回や取り消しができません。
相続放棄を検討している場合は、あらかじめ利益となる財産があるかどうか財産調査をしてから判断するのを推奨します。
売却や活用したときの利益が得られないのがデメリット
賃貸物件として貸し出した際は、入居者がいる限り毎月安定した家賃収入が得られます。
空室が発生しにくい建物にしたり、メンテナンス代がかかりにくい施工にしたりと、土地の購入費用がかからない分を建物へとあてれば、さらに収益が得られる可能性が高いです。
地主の許可を得たうえで建物を売却すれば、まとまった収入が手に入る可能性があります。
得た収入から、新たな物件や土地の買い替え資金にあてるのも選択肢の一つでしょう。
しかし、相続放棄すると、売却や活用して得られる利益も放棄するようになります。
借地権を相続放棄する場合の注意点
借地権を相続放棄するメリットやデメリットを理解した後は、注意点もあわせて知っておいたほうが良いでしょう。
相続放棄してから後悔をしないように、意識すべき3つの注意点について解説します。
相続放棄の手続きは期限が定められている点に注意
自分に相続があるのを知った時点から3か月以内に、相続人は相続するのかあるいは放棄するのかを決めなければなりません。
もし期日以内に何もしなければ、遺産を条件なしに引き継ぐ単純承認を選んだとみなされ、相続が生じてしまいます。
相続が発生したとわかったら、すぐに放棄すべきかどうかを決めるのが大切です。
なお、3か月を過ぎても家庭裁判所へ申し出て、期間延長が認められれば、延長した期間が過ぎるまでは相続放棄できます。
ただし、相当の理由がなければ期限延長は認められません。
たとえば、被相続人と疎遠であり、他の相続人からの協力がない状態のため、相続した財産について把握できなかったケースであれば、延長が認められる可能性が高いです。
建物の解体ができなくなる
地主に気を遣って、両親が建てた土地を処分して更地にしてから返そうと考える方もいるようです。
相続放棄してしまうと借地権上の建物を勝手に解体できなくなります。
地主の土地や両親から引き継がれた建物に手を加えてしまうと、相続放棄が認められている場合であっても借地権を相続したと判断されます。
リフォームや建て替えするのも相続したとみなされるため注意してください。
また、不動産に限らず被相続人が所有していた預金を使ったり、債務の支払いをしたりするのも単純承認に該当し、相続放棄が認められなくなる可能性が高いです。
相続放棄する場合は、相続する財産に手を付けないようにしましょう。
相続放棄後も建物の管理が必要
相続放棄すると、通常被相続人の財産の管理義務がなくなります。
しかし、民法では相続財産に属している財産を、現に占有している状態に当てはまる場合は、財産を保存する義務が生じるのです。
たとえば、借地権上に建てられた被相続人名義の建物に被相続人が同居していると、現に占有している状態とみなされるでしょう。
そのような場合には、他の相続人へ引き渡しするまでの間、定期的に管理する必要があります。
もし他の相続人がいなければ相続財産管理人を選任しましょう。
相続財産管理人の選任には、家庭裁判所に自分から選任の申し立てをするか、地主から選任する方法の2つです。
相続財産管理人の選任は、申し立てから約2か月〜3か月かかります。
大がかりな修繕は不要ですが、汚れが溜まらないように定期的に掃除し、清潔にしましょう。
借地権を相続放棄する手続きの仕方
相続放棄は慎重に検討する必要がありますが、申請する期間が決められているため、スムーズな手続きが求められます。
相続放棄までの一連の流れで、意識しておきたいポイントもあわせて解説しますので参考にしてください。
相続する財産の調査をする
相続放棄するかどうかを判断するために、相続対象となる財産の調査をし、確認してください。
●動産(預貯金、自動車、美術品)
●不動産(持ち家、土地、借地権)
●債権(株式、仮想通貨、国債)
●負債
相続放棄してから多額の資産が見つかるなどないように、きちんと調査する必要があります。
被相続人の財産や負債がわからないときは、弁護士や行政書士、司法書士に依頼して調査してもらう方法もあります。
なお、専門家によって対応できる範囲や費用が異なるため、各項目を比較したうえで依頼するのがポイントです。
約1か月〜2か月かけて財産調査がおこなわれますが、相続人がどのくらい協力してもらえるかによって期間がさらに延びるケースもあります。
必要な書類と費用を用意する
相続放棄するのを決めたら、被相続人の住民票の除票と被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本、申述する方の戸籍謄本は必ず用意しましょう。
被相続人の住民票の除票と戸籍謄本は、被相続人の本籍地である市区町村の役場から入手できます。
戸籍謄本は、居住地の市区町村役場では手に入らないため注意してください。
なお、誰が相続放棄の申述をするかで、必要な書類が変わるため、家庭裁判所へ事前に確認しておくとよいでしょう。
費用に関しては、戸籍謄本1通につき450円、申述書の収入印紙代が800円かかります。
手数料とは別に郵送用の切手代も用意する必要がありますが、切手代は管轄している家庭裁判所によって異なります。
相続放棄申述書を記入して提出する
必要書類を一通りそろえたら、裁判所の公式サイトにある相続放棄申述書を印刷して、必要事項を記入してください。
申述書に書類を提出する家庭裁判所の名前、提出日、相続人の氏名を書いた後は、相続人の方の捺印が必要です。
申し立てする申述人が成人されているのか、未成年かで記載する内容が異なります。
もし書き方を間違えてしまったり、不備があったりした場合は、相続放棄が受理されない可能性があるので注意しましょう。
書類には相続放棄する理由を書く項目がありますが、債務超過で支払いができないといった具体的な理由を書いてください。
相続放棄証明書の発行
申述書の提出から約2週間で、家庭裁判所から照会書が届きます。
照会書にいくつか質問事項があれば回答を記入し、追加書類も添付して家庭裁判所へ返送してください。
照会書の回答を参考にしながら、相続放棄を受理するかどうか判断するため、速やかに返送しましょう。
相続放棄の審査は、長くても約2か月要しますので、早めに書類を準備するのがポイントです。
審査に通ると、家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届いて手続き終了です。
まとめ
借地権を相続放棄すると地代や固定資産税などの支払いがかからず、家を定期的に管理する手間が省けるのがメリットです。
一方で、相続放棄すると借地権に限らず、すべての相続財産も放棄しなければならないデメリットもあります。
相続放棄する際は財産調査をおこない、必要な書類や費用を用意して、相続放棄申述書と一緒に家庭裁判所へ提出するのが一連の流れです。