借地建物の解体義務はあるの?
気になる費用や新旧借地法も解説2025.02.13
●借地建物の解体の義務はあるの?
●借地建物の解体をする場合の費用は誰が負担する?
●借地建物を解体するにあたって注意点は?
借地契約の満了が近づいている方、または借地上に家を建てて住んでいたけれど、もう住まなくなった方もいるでしょう。
建物を解体する義務が誰にあるのか、費用はどれくらいで誰が負担するのかは気になるポイントです。
この記事では、借地に建っている建物の解体義務や費用などを解説していきます。
この記事でわかること
●借地建物の解体が不要な条件は3つ
●借地建物の解体の費用は状況によって負担する人が変わる
●旧借地法と新借地借家法と解体の注意点
借地の建物には解体義務があるのか?
借りた土地には、建物を建設して利用する方がほとんどです。
土地を返還する際に、誰が建物の解体をするのか気になる方も多いでしょう。
原状回復義務があるため借主が解体するのかと思われがちですが、返還方法によっては解体義務は発生しません。
ここでは、原状回復義務の条件や借主が解体費用を負担しないケースを解説します。
原状回復義務がある
土地の売買契約書を確認してみると、一般的な賃貸借契約書には原状回復義務の表題があります。
借地の原状回復義務とは、返還する際には土地を契約締結時の状態に戻して貸主に返す義務を指します。
しかし、この義務はほとんど機能していません。
なぜなら、借地の場合は借地借家法13条で、建物買取請求権のルールが適用されるからです。
解体が不要となる借地返還の方法
次に、解体が不要となる借地返還の方法を3つ紹介します。
建物買取請求をおこなう
借地借家法13条では借地権の期間が満了した場合、契約の更新がないときには地主に建物を時価で買い取るべき旨を請求できる建物買取請求権があります。
建物買取請求権とは借地人が建てた建物を地主に買い取ってもらえる権利で、契約が更新されないときに使われるケースが多いです。
ただし、3つの要件を満たしてないと使用できません。
要件は、借地契約の満了時である・借地上に建物がある・地主が正当事由によって自動更新を拒否した場合です。
今までは借主が望めばほとんどのケースで契約更新されていたため、建物買取権はあまり使用されていない権利でした。
しかし、少子化の影響で建物を持て余すようになった点や、建物買取請求権を使うと借主に解体費を負担する必要がなくなる点から、この権利を使おうとする人が増えています。
ただし、建物の老朽化が進み、資産価値がないと判断された場合は行使できない可能性もあるので注意してください。
地主に借地権を買い取ってもらう
借地権とは、借地人が建物を所有する目的で地主から土地を借りる権利です。
借地権も通常の不動産として扱われるので、売却ができます。
しかし、借地権は明確な相場がなく、更地価格の約50%で取引されるのが一般的です。
事前に地主と交渉する必要がありますが、地主が土地を活用したいと考えているケースでは前向きに考えてくれるでしょう。
買い取ってもらう際には、話し合いのうえで借地権の価格や条件を適切に設定してください。
第3者に売る
借地権は不動産として扱われるので、底地と借地権を第三者に売るのも可能です。
その場合には地主の許可が必要で、「譲渡承諾料」といったお金を払わないといけない場合もあります。
譲渡承諾料は、更地価格の10%程度を払うのが妥当です。
しかし、地主が許可しないケースや、高い金額を要求されるなど問題が起こる場合もあります。
また、借地権は毎月地代を払い続け、改築やリフォームの際に地主の許可が必要です。
そもそも、借地権を買いたい人が簡単に見つからないのもネックといえます。
借地建物の解体費用負担者は誰になるのか?
借地建物の解体をする場合、誰が費用を負担するのかは状況によって変わってきます。
地主が負担するケースと買主が負担するケース、気になる解体費用を見ていきましょう。
地主が負担するケース
地主が負担するケースとしては、先ほど開設した建物買取請求権を行使する場合です。
土地の契約期間満了になった時点で、借地借家法13条の建物買取請求権を行使すると、建物の売買契約が成立となります。
権利を行使すると地主は拒否できないため、強制的に建物の売買契約が成立し、建物の所有権が移転するようになっています。
通知は口頭でも可能ですが、言った言わないで争いにならないためにも、書面に記して郵送で送るのがいいでしょう。
建物は、時価で買い取りがされます。
借主が負担するケース
借主が負担するケースは、債務不履行や契約違反の場合です。
債務不履行とは、借主が契約した条件を守らないケースを指します。
地代の不払いや契約違反などをした場合の判例では、一貫して建物買取請求権が否定されています。
借主が建物の解体費用を負担するようになり、最悪の場合は損害賠償請求や契約解除となる場合もあるでしょう。
解体費の負担を抑えたいなら、日頃から地代の不払いなどの債務不履行や契約違反に注意する必要があります。
解体する場合にかかる費用の相場
建物を解体する際に、気になるのが費用の相場です。
解体費用は、建物の構造・地域・立地条件などによって変わってきます。
構造別のおおよその目安としては、木造は4万円/坪・軽量鉄骨造は6万円/坪・鉄筋コンクリート造は7万円/坪が費用の相場です。
地域によって価格が異なるのは、おもに人件費に差があるからです。
都心ほど人件費が高くなるため、解体費用も高くなります。
立地も重要で、狭い土地でさらに通路も狭い場所には、重機を運び入れるのが困難です。
人の手を加えて作業をおこなうため、それだけ人件費や時間がかかります。
また、建物だけではなく外構のブロック屏がある場合は、10mで約10万円の費用がプラスされます。
地中に埋設物が見つかったり、アスベストが含まれている建物だったりすると、さらに費用はプラスされるでしょう。
借地建物の解体義務に関する法律と注意点
法律では、借地権を旧法の借地法と新法の借地借家法の2つに分類しています。
ここでは、借地建物の解体義務に関する法律や注意点を解説します。
借地人の権利が強い旧法の借地法
1921年に制定された旧法の借地法は、借地人の権利を強く保護するものでした。
地代の支払いや継続も地主より借地人の権利が優先され、新法に比べ借地期間が長く、契約したら期間満了になっても借り続けやすくなっています。
借地料も簡単に上げられないため、借主は安定した費用で土地を借りられます。
旧法の借地法が適用されるのは、1992年以前に契約を交わした借地までです。
借地期間は建物の構造によって異なり、鉄骨・鉄筋構造は30年以上で、期間の定めがない場合は60年以上のケースもあります。
木造は、初めの契約では20年以上かつ定めがないと30年の借地期間が設けられています。
上記よりも短い期間を定めている合意は無効となり、定めがない期間で契約を交わすのが条件です。
借地人が拒絶しない限り、契約期間は自動更新されます。
新借地借家法の普通借地権
新しい借地借家法は、1992年に借地法を改正する形で制定されました。
旧法の借地法と異なり、地主の権利をより強く保護するためのものになります。
普通借地権と定期借地権に分けられているのが特徴です。
普通借地権の契約期間は、建物の構造を問わず30年以上になります。
30年より短い契約期間を定めても30年の契約になり、30年以上の契約期間を定めた場合は長い方が優先されます。
契約満了後は、1回目の更新で20年、2回目以降の更新は10年の契約です。
新借地借家法の定期借地権
定期借地権は契約期間が決まっていて、契約が更新できないのが最大の特徴です。
契約期間は当初50年以上(居住用建物の場合)と長めですが、期間が終わったら返還しなければなりません。
引き続き借地を借りたい場合には、地主と再契約になります。
旧借地法は借地人の権利が強かったため土地を貸したいと考える方が少なく、土地の有効活用ができないのが問題でしたが、定期借地権が制定されたため貸しやすくなりました。
解体する場合の注意点
まずは、複数の解体業者に見積りを依頼しましょう。
チェックする内容は安さだけでなく、建築業許可や解体工事登録があるか、工事保険に加入しているかなどちゃんとした業者かどうか確認します。
産業廃棄物の処分方法が明確になっているかも重要です。
費用や内訳をしっかりと確認し、追加工事の可能性がないかなど疑問があれば解消しておく
ようにしましょう。
更地になったら地主に返しますが、解体から1か月以内に所在地管轄の法務局で建物滅失登記の手続きをして、解体された証明をしなければなりません。
忘れてしまうと10万円以下の過料が課せられたり、取り壊した建物に固定資産税が発生したりする可能性があるので注意してください。
まとめ
借地建物の解体は契約期間満了時に建物買取請求権を使えば、基本的に解体費はかかりません。
しかし、地代の不払いや契約違反があった場合には行使できないので注意してください。
他にも、建物を解体せずに地主や第3者に買い取ってもらう方法もあります。
解体費用は建物の構造や地域、立地によって異なり、他にもアスベストの調査やブロック塀があれば撤去しなければならない場合は高額になってしまうでしょう。
複数の解体業者に見積りを依頼し、内訳が細かく記載されて産業廃棄物の処分方法が明確になっている信頼できる業者にお願いするのがおすすめです。