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破産管財人による任意売却とは?通常の売却との違いを解説2024.08.02

●破産管財人とは何か?
●任意売却と通常の売却との違いが知りたい
●破産管財人による任意売却の流れが知りたい

ここでは破産時に関係する破産管財人とは何か、どのような業務を担うのかを解説します。
また、破産管財人による任意売却と通常の売却ではどのように違うのか、売却までの流れもあわせて解説します。

この記事でわかること

●破産管財人とはどのような業務をするのか
●破産管財人がおこなう任意売却とは何か
●破産手続き中の不動産売却の流れ

破産管財人とはどのような業務をするのか

破産管財人とは、破産者が所有している財産を管理したり、処分したりする権利を持つ人のことです。
不動産を所有している方が自己破産した際の手続きには管財事件と同時廃止の2つがありますが、管財事件になると裁判所は破産管財人を任命します。
破産管財人になるための条件や必要な資格はありません。
しかし、破産に関する法的知識と処理対応能力が求められる点から、当事者と利害関係のない弁護士を選ぶのがほとんどです。
破産管財人の業務は、おもに5つあります。

破産者の債務額の調査

破産の手続きを始める前に、借金をしている先はどこか、債務額はいくらなのかを明確にします。
具体的には金融機関と貸金業者からの借金の残高がいくらか、個人間の貸し借りがあったか、家賃や光熱費・携帯電話の使用料の支払い状況です。
破産者が提出した申立書と添付書類、債権者が裁判所へ届け出た書類をすべて確認するでしょう。
また、破産者が隠しているあるいは申告していない負債がないかも調べ、もし申告していない財産が見つかった際は破産者へ聞き取りをします。
その他に、優先的に返済が必要な債権者がいるのかも確認します。

破産者の資産管理と処分

破産者から資金を回収し、1円でも多く配当するのが破産管財人の役割です。
借金の支払いができなくなった破産者は、すべての債権者の利益になる財産管理が難しいため、破産者の代わりに財産管理するでしょう。
破産管財人が資産管理すると、破産者が勝手に財産を処分したり、隠したりするのを防ぐ役割もあります。
また、債権者へ配当する原資である破産財団を管理し処分する権限もあります。
もし破産手続きする直前で債務者が財産を売り払ったときは、否認権で売買契約を取り消しすれば、財産が返ってくるでしょう。
また、破産財団の財産の一部が、第三者の財産であった際は取戻権を行使すると財産が戻ってきます。

債務者への配当

債権者へ返済ができないときは、所有している財産を売却あるいは解約して現金化し、債権者へ分配します。
破産管財人は、債権者の名称と連絡先、債権額、配当率、配当額が記載されている配当表を作成します。
配当書の内容が正当なものかを裁判所が確認し、許可が出たあとに各債権者へ配当がおこなわれる流れです。
債権には優先的に弁済が必要なものと、公平に配当を受けるものの2つに分けられますが、破産財団のうち弁済の優先順位が高いのは財団債権です。
なお、債務者の手元に残せる自由財産は破産管財人には売却されませんが、不動産で自由財産として手元に残せるケースはほとんどありません。
もし換価可能な財産や配当に回せる財産を所有していないときは、破産手続きは終了となります。

免責関係の調査

破産手続きを終えたら、免責手続きの調査をしますが、その際に免責を許可するのか否かを調べるのも破産管財人の仕事です。
一部の債権者への弁済やギャンブルなど何らかの事情があり、破産者の免責を認めない事由を免責不許可事由と呼びます。
免責不許可事由に該当しても、裁判所の判断での免責は可能です。
裁量免責がふさわしいかの意見を裁判所へ提出するのも、破産管財人の役割となります。
破産者と面談して免責不許可事由があるのか、負債の増加でどのくらい影響を及ぼしたのか、破産者が破産手続きでの協力姿勢が見られます。

債権者の集会にて報告

破産管財人は、裁判所でおこなわれる債権者集会にて破産者の財産の調査状況と破産に至る経緯、配当を報告しなければなりません。
集会には裁判官や破産管財人、破産者、債権者、破産申立代理人が参加します。
また、破産者に残す財産の拡張の申立があったときは、中立的な立場で意見を述べる役割もあります。
なお、財産の調査状況と換価処分で時間を要する場合は、債権者集会までに管財人の業務が終わらない可能性が高くなります。
もし業務が終了していないときは、進捗状況と、今後の予定を報告し、2回目の集会が開かれるでしょう。

破産管財人による任意売却とは

破産者が不動産を所有している場合で、破産手続きを始めると、破産者から破産管財人へ不動産の処分権が移転されます。
破産後の不動産売却は任意売却か競売のどちらかとなります。
任意売却とは、抵当権をはじめとして担保権を持つ債権者と話し合いし、債権者の同意を得て、買い主を探して売却する方法です。
競売とは、債権者が裁判所へ申し立てて、不動産を差し押さえ、強制的に売却して債務を回収する方法です。
破産管財人による不動産売却では、破産法にて任意売却を選ぶケースが多くなります。
なぜ任意売却が選ばれるのか、破産管財人が任意売却できないケースや売却を放棄したあとどうなるのか知っておきましょう。

任意売却が選ばれる理由

破産管財人は、破産者の不動産を少しでも高い価格で売り、債権者へ少しでも多く金銭を配当する役割があります。
任意売却は競売と比べると高額で不動産売却できるため、任意売却がおこなわれるのがほとんどです。
不動産の競売が任意売却よりも安い理由には、通常の売買と異なり制約が多くあります。
内覧ができない、検討する時間が短いなどで不動産の中の状態が見えないまま売られる点から、実際に落札するまで建物の状態がわかりません。
通常の不動産売却では購入前に内覧できるため、購入者側にとって競売物件はリスクが大きいといえます。
したがって、競売は市場価格の3割から5割の価格で落札されるでしょう。
一方で、任意売却は相場の8割から10割の価格で売却でき、通常の不動産売却と同様の相場で物件を手放せます。

破産管財人が不動産売却できないケース

破産管財人は、財産の換価処分が原則ですが、破産者に意見を聴き、裁判所の許可を得られれば権利の放棄ができます。
権利の放棄には、処分される予定だった財産の管理処分権も含まれます。
管理処分権を放棄する事例で多いのが、買い手が見つからず破産手続きが進められないケースです。
たとえば、僻地にある山林、工場敷地、ガソリンスタンドの跡地には有害物質が含まれている可能性が高く、一般の方に売却するのは難しくなります。
また、天井や外壁からの浸水、シロアリによる侵食など性能も含めて建物の状態に問題があると、マイナスの印象を与えるため買い主候補者が少なくなります。
このような不動産でも破産管財人は手を尽くして任意売却を試みますが、売却に時間がかかると管理処分権を放棄するでしょう。
それ以外に、売却価格よりも管理費が高く、破産財団が減ってしまうときも権利を放棄する可能性が高くなります。

破産管財人が売却できないときはどうするか

管理処分権を放棄された不動産は、個人が破産なのか、会社や法人が破産したかで、少し異なります。
個人での破産であれば、管理処分権が破産管財人から破産者に戻り、放棄された財産は自由破産になります。
会社や法人の破産で権利を放棄すると、放棄された財産の受取先がいなくなるため、万が一のときに責任を負う方がいない状態です。
したがって、権利を放棄した際は取締役に代わって、不動産を管理する清算人と呼ばれる役職を新たに選任します。
清算人は弁護士から選ばれるケースが多く、清算人が決まったら、引き続き任意売却あるいは競売を試みる流れとなります。

破産管財人による任意売却の流れ

破産管財人による任意売却の流れがわからないと質問されます。
基本的には破産管財人が一通りおこないますが、必要書類の用意や決済が必要になるため、流れを理解しておくべきです。

破産者と破産管財人の面会をおこなう

自己破産を申し立てて管財事件と認められると、破産管財人に選ばれた弁護士の事務所にて破産者と破産管財人の面会がおこなわれます。
面会では、不動産に関する証明書と登記識別情報、ローンの返済計画書、売買契約書などが必要です。
面談前に破産管財人に連絡してどのような書類が必要なのかを連絡しておくと、スムーズに用意できます。
面談では、破産管財人から債務の経緯や現在の状況、保有資産、法人であれば未払いの賃金と契約の処理状況のヒアリングをしながら情報収集します。

不動産の査定を依頼して抵当権を外す

破産者から必要書類を受け取ったあと、破産管財人は不動産会社に連絡して、不動産の査定依頼をする流れです。
どの不動産会社へ査定依頼するかは破産管財人が決めるため、破産者は査定依頼先を決める権利はありません。
住宅ローンの債権者から任意売却への許可をもらわなければ、不動産売却できません。
査定の結果がわかったら、債権者から任意売却してもよいかの許可が必要です。
債権者が任意売却の許可がもらえるかどうかは融資額がどのくらい回収できたかで異なり、回収額が少なければ断られる可能性が高くなるでしょう。
しかし、任意売却ができなければいずれは競売になり、回収額が少なくなる点から、同意してもらえるケースがほとんどです。
任意売却の許可が出たら、任意売却する物件に設定されている抵当権を外す手続きをして、抵当権を抹消すれば売却できます。

不動産売買契約の締結

査定依頼先の不動産会社と媒介契約を締結したあとは売却活動です。
買い主の募集には、通常の売却と同じく広告や顧客へ営業する方法やオークションで決める方法があります。
オークション形式とは、期日までに落札された方が買い主となって契約を結ぶため、短期間で売却できる可能性が高い方法です。
買い主が決まったら売買契約を締結しますが、名義人に関して通常の売却と異なる点があります。
通常は所有者と買い主の名義で契約しますが、管財事件の売却物件は破産管財人に託されているため、破産管財人の名義で契約締結となります。

決済と不動産の受け渡し

契約成立後に買い主のローン審査をして問題がなければ決済と物件の引き渡しです。
決済と物件の引き渡しでは、原則破産者も立ち合うため、予定を空けておく必要があります。
決済後、不動産は買い主の所有物となり、代金は破産管財人に渡されて債権者への配当金になります。
仲介手数料や印紙税などの諸費用は売却価格から引かれるため、破産管財人による任意売却にかかる費用や譲渡所得税はかかりません。
しかし、破産管財人を選んだ時点で、最低でも20万円の予納金を裁判所へ納める必要があるでしょう。

まとめ

不動産を所有している方が破産して管財事件になると、裁判所は破産管財人を任命します。
破産管財人は、破産者の代わりに債務額の調査や資産管理、債務者の配当をします。
破産管財人の不動産売却は基本的に破産管財人が一通りおこないますが、必要書類の用意や決済が必要になるため、流れを理解しておくべきです。



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