親族間売買で任意売却する方法!メリット・デメリットや注意点を解説2024.06.03
●住宅ローンの支払いが困難になった親族の家を買い取りたい
●親子間で不動産を売買するにはどうしたらいいのか?
●親族同士で売買するときに、気を付けるべき点は何なのか?
この記事では、住宅ローンの支払いができずに、親子などの親族の間で家を売買したいと検討している方へ、親族間売買の方法と流れを解説します。
この記事でわかること
●住宅ローンの残債がある物件を親族間で売買する方法
●親族間売買のメリットとデメリット
●親族間で任意売却するときの注意点
親族間売買とは
親族間売買とは、第三者間でおこなわれるのが一般的な不動産売買を、親族間でおこなう特殊なケースの不動産売買です。
親族間売買がおこなわれるおもなケースや、一般的な不動産売買との違いを解説します。
親族間売買がおこなわれるおもなケース
親族間売買で多いのは、親の家を子どもが購入するケースです。
高齢の親が住宅ローンを支払えなくなったときに、子どもが親の家を買い取るケースなどがあります。
その逆で、住宅ローンの返済に困っている子どもの家を親が購入し、購入した家を子どもに貸し出すパターンもあります。
どちらの場合も、困っている親族のローンを肩代わりするのが目的です。
相続や贈与以外の方法で、自宅を子どもに譲りたいとの理由で売買がおこなわれるケースもあります。
売買で家を取得した場合には、原則的に相続税や贈与税はかからないためです。
相続した家が複数の子どもの共有になっている場合には、将来的なトラブルを避けるために、共有者の1人が本人以外の持分を買い取るケースもあります。
一般的な不動産売買との違い
一般的な不動産売買との違いは、親族間売買では買い手がすでに決まっているため、不動産会社に仲介の依頼をしなくても直接取引が可能な点です。
とはいえ、不動産取引には複雑な手続きがともなうため、不動産会社や司法書士などの専門家に依頼するケースも少なくありません。
親族間では一般市場よりも安価で取引される傾向にあり、相場より低額で売買された場合は、みなし贈与と判断されて贈与税がかかる場合があります。
税制上の特別控除や軽減税率の特例が使えなかったり、住宅ローンの審査が厳しかったりする場合がある点も、一般の取引との大きな違いです。
親族間売買で任意売却するには
家を売っても住宅ローンを全額返済できず、不足分を自己資金で補えない場合に、借入先の金融機関に許可を得ておこなう売却を任意売却といいます。
任意売却は一般市場でおこなわれるのが一般的ですが、親族間での売却も可能です。
任意売却で家が売れない場合は、競売にかけられてしまう可能性が高いため、親族が買い取りたいと希望するケースもあるでしょう。
親族間で取引する場合は、損得を考えずに価格を決めてしまいがちですが、借入先の金融機関が納得する価格設定にしなくてはなりません。
買う側の親族が手持ちの資金で購入できないときは、融資を受ける必要があるでしょう。
しかし、親族間売買では新たにローンを組めない場合がほとんどです。
親族間で任意売却を検討する際には、親族間売買に実績のある不動産会社に相談しましょう。
親族間売買で任意売却する流れ
親族間売買をおこなう際の、おおまかな流れは以下のとおりです。
- 物件の調査をする
- 売買の条件を決める
- 売買契約を結び決済する
- 登記申請する
- 確定申告する
一般的な親族間売買の流れに合わせて、抵当権が設定されている場合に必要な手続きも解説します。
(1)物件の調査をする
売却を始める前の準備として、売却する不動産の正確な情報が必要です。
法務局で登記簿謄本を取り、正確な物件情報や権利関係を把握しましょう。
登記簿には、土地の広さや築年数、建物の延床面積などの情報が記載されています。
所有権者が他にいたり、抵当権が残っていたりすると、その問題を解決してからでないと売却はできません。
抵当権が設定されている場合は、抵当権者である金融機関から売却の許可を得る必要があります。
(2)売買の条件を決める
物件価格や引き渡し時期などの、売買に関する条件を決めていきます。
近隣の類似物件を物件検索サイトなどで検索して、おおよその市場価格を調べましょう。
価格設定に市場価格との大きな相違があると、みなし贈与と判断されて課税されるリスクがあるため、適正な価格に設定する必要があります。
価格だけでなく契約不適合責任をどうするか、契約日や引き渡し日の決定や支払い方法など、細かな条件も決めておかなくてはなりません。
(3)売買契約を結び決済する
一般的な売買では、契約の締結から決済まで1ヵ月ほどの時間がかかりますが、親族間売買では同日におこなわれるケースがほとんどです。
契約を結んだあとに、銀行への送金や現金の受け渡しなどをおこなって決済します。
親族間であれば契約日の前後でも可能ですが、当日に決済をおこなうのが理想です。
抵当権が設定されている場合は、住宅ローンの残債の一括返済をおこないます。
決済日の2週間以上前に、借入先の金融機関に連絡しておきましょう。
(4)登記申請する
売却する家の所在地を管轄する法務局で登記申請をおこないます。
登記の手続きは、不動産登記の専門家である司法書士に代行を依頼するのが一般的です。
抵当権が設定されている場合は、所有権移転登記と合わせて、抵当権抹消登記の手続きもおこないます。
(5)確定申告する
不動産売買では譲渡所得税や不動産取得税など、売り主と買い主の両方にさまざまな税金が発生します。
手続きをしなくても請求されるものもありますが、それ以外のものには申告が必要です。
翌年に確定申告をおこなうのを忘れないようにしましょう。
適切に確定申告をおこない、納税するまでが親族間売買の流れです。
親族間売買で任意売却するメリット
親族間売買で任意売却するメリットには、自宅が他人の手に渡らずに済む点や売却後も済み続けられる点があります。
競売にかけられるリスクがなくなり、プライバシーが保たれる点もメリットです。
自宅が他人の手に渡らずに済む
経済的な事情で、住み慣れた愛着のある家を手放すのは、つらい決断になるでしょう。
親族間売買なら、自分の子どもや親・良く知る親族に買ってもらえるので、他人の手に渡らずに済みます。
買い主の実家であったり、すでに同居していたりする場合は、大切に住んでもらえるでしょう。
買い主にとっても、何かあったときに、すぐ親身に相談にのってもらえるので安心です。
売却後も住み続けられる
売却したあとにも、マイホームに住み続けられる場合があります。
子どもが親の住む実家を買い取った場合や、ローンの返済に苦しむ子どもを見かねて、親が買い取った場合などです。
マイホームに住み続けられるのであれば、引越しをする必要もありません。
売却の事実を近所に知られずに済むため、プライバシーも守れます。
競売のリスクがなくなる
買い手が決まっている親族間売買なら、競売にかけられるリスクをなくせる点がメリットです。
任意売却の許可を金融機関から得られたとしても、競売を回避できたわけではありません。
一般市場に売りに出す場合には、買い主が決まるまで内覧などの対応もしなくてはならず、そうまでしても買い主がみつからない場合もあり得ます。
決められた期限までに売却できない場合は、競売にかけられ物件情報が公開されるため、周囲にも知られてしまうでしょう。
親族に買ってもらえれば、買い主を探す手間が省けるうえに、経済的な負担や精神的な不安を減らせます。
親族間売買で任意売却するデメリット
親族間売買は、住宅ローンを組みにくい点がデメリットです。
価格設定によっては、みなし贈与と判断されて贈与税が課税され、税制上の特例が適用されない可能性があります。
住宅ローンを組みにくい
親族間売買では不動産会社に仲介を依頼せず、直接取引するケースが多いため、金融機関が不動産の適切な価値を判断するのが困難な場合があります。
それに加えて、融資したお金が住宅取得以外の用途に使用される可能性を警戒されて、審査を通らない場合がほとんどです。
親族間売買には融資しないと、最初から決めている金融機関もあります。
みなし贈与と判断される可能性がある
親しい間柄であれば、安い価格で売っても構わないと思う方も多いでしょう。
相場よりも大幅に安い金額で売却した場合、売買ではなく実質的な贈与とみなされるリスクがある点はデメリットです。
みなし贈与と税務署に判断されると、市場価格との差額に贈与税が課税されてしまいます。
この場合に贈与税を支払うのは、家を購入した側です。
特例が適用されない可能性がある
親族間売買は、マイホームを売ったときに受けられる3,000万円の特別控除や軽減税率などの特例が適用されないケースがあります。
これらの特例は、売り主と買い主が親子や夫婦などの特別な関係の場合は、対象にならないためです。
売り主側のデメリットとして、特例の適用が受けられないと、税金の負担が大きくなります。
買い主側のデメリットは、住宅ローンが組めたとしても、住宅ローン控除が使えない可能性がある点です。
生計を同じくする親族から中古住宅を購入すると、対象外になってしまい、控除は適用されません。
親族間売買の注意点
不動産の親族間売買を成功させるための注意点を解説します。
取引に不正や不備がないようにして、トラブルを未然に防ぐのがポイントです。
適正価格で売買する
相場より低い価格で売買すると、税務署からみなし贈与と判断されて、高額の贈与税を支払わなくてはなりません。
そのリスクを避けるためには、適正価格で取引する必要があります。
時価の明確な判断基準は公開されていませんが、適正価格は時価の8割程度といわれています。
適正価格の設定には時価の他に路線価などの把握も必要になるため、不動産会社に依頼して算出してもらうのがおすすめです。
売買契約書を作成する
信頼の厚い親族同士なら、手間や時間をかけて売買契約書をつくる必要はないと思う方もいるでしょう。
売買の証拠として売買契約書を作成していないと、贈与とみなされるおそれがあります。
本人同士は納得していても、他の親族を巻き込んでトラブルが生じる可能性がある点にも注意が必要です。
当事者以外にも取引の内容を証明するために、契約書は正式な形式に基づいて作成しておきましょう。
相続人の同意を得る
親族間売買をする際には、当事者以外の他の親族から同意を得ておくのが重要なポイントです。
相続人が複数いるうちの1人に売却する場合には、トラブルになる可能性が高いでしょう
事前に相談を受けていれば納得できたケースでも、無断で売買されてあとから知った場合には、悪意があったと判断されかねません。
相続人になる親族全員から、同意を得ておきましょう。
まとめ
親族間売買で任意売却する前に、全体の流れや、メリット・デメリットを把握しておく必要があります。
親族から同意を得たうえで、適正価格を把握して契約書を作成するのがポイントです。
専門的な知識が必要になる場面が多いため、安心して取引をおこなうには、不動産会社や専門家へ依頼しましょう。