リースバックと任意売却の違いは?メリット・デメリット・併用ケースも解説2024.06.03
●リースバックを検討中だけど任意売却との違いがわからない
●家を売ったあともそのまま住み続ける方法があるって本当?
●リースバックと任意売却はどちらか1つしか選べないの?
ここでは住宅ローンの返済に悩み、家の売却を検討中の方に役立つ情報として、リースバックと任意売却の基礎知識とメリット・デメリット・併用できるケースを解説します。
この記事でわかること
●リースバックと任意売却の仕組みと違い
●リースバックと任意売却のメリット・デメリット
●リースバックと任意売却を併用できるケース
リースバックの基礎知識
リースバックは、住宅ローンの返済が困難もしくはすでに滞納しているなど、なんらかの事情で家を売る必要があっても家を出ていきたくない方にとって有益な売却方法です。
上手に活用するためにも、まずは基礎知識から理解しておきましょう。
リースバックとは
リースバックとは、不動産売却の手段の1つで、自宅を売却したあとも退居せず住み続けたい方向けの取引形態です。
もとは「セール&リースバック」と呼ばれ、所有している機械や設備などを売って資金を得て、そのままオフィスなどの利用を継続するために用いられた方法です。
その形態を不動産に活用したのがリースバックで、取引相手に住んでいる自宅を一度売却したあと、賃貸借契約をおこなえば家を出る必要がなくなります。
リースバックの仕組み
リースバックでは、リースバック会社が取引相手となるのが一般的で、家の売買契約と賃貸借契約を同時におこないます。
リースバック会社が家の買主兼貸主になるため、たとえ不動産を引き渡しても、家賃を払いながらそのまま空白期間なく家に住み続けられます。
住宅ローンを滞納、または税金滞納で差し押さえられている状況でも利用できるため、住宅ローンや税金に悩む方にとって大きな魅力です。
将来的に家を買い戻すオプションもあるため、収入が安定してから買い戻すケースもあります。
任意売却の基礎知識
任意売却とは住宅ローンの返済に困ったときに、不動産を売って残債にあてる方法です。
リースバックとは形態が根本的に異なるため、任意売却を理解するためにもまず競売を知っておく必要があります。
競売と任意売却
競売とは、住宅ローンの返済が困難になったとき、債権者が債権を回収するために裁判所に申し立てをおこない、家などの不動産を売却する法的な手続きです。
一方同様のケースであっても、競売ではなく任意に家を売却して債務整理をおこなう方法を任意売却と言います。
競売では裁判所が介入し強制売却されるため債務者に不利な点も多いですが、任意売却なら第三者の力を得て利害調整がおこなわれるため、より良い条件で債務整理ができます。
任意売却の仕組み
任意売却の場合、競売の代わりとして、金融機関などの債権者(借入先)と話し合いのうえ、合意を得て家を売却します。
任意売却は競売の入札通知より前におこなわれ、法的手段である競売のような厳密な取り決めはなく、売却方法は問われません。
入札形式と違い買主を事前に指定できるため、任意売却の買主としてリースバック会社を利用すれば、家を任意売却したあとも継続して住めるようになります。
リースバックと任意売却の構造による違い
リースバックと任意売却はどちらも住宅ローンが支払えない場合の家の売却方法ですが、その構造は大きく異なります。
リースバックと任意売却の仕組みを理解したうえで、それぞれの違いを確認しておきましょう。
リースバック | 任意売却 | |
利用する目的 | 家を売却後も住み続ける | 住宅ローンの返済 |
売却後の居住 | そのまま住める | 退居 |
債権者の同意 | 不要 | 必要 |
家の売却先 | リースバック会社 | 誰でも可 |
売却価格の相場 | 市場価格の70~80% | 市場価格の80~90% |
ブラックリストの状態 | 住宅ローンの滞納がなければ載らない | 住宅ローン3ヵ月以上の滞納で載る |
周囲への影響 | 周囲に家を売った事実を知られにくい | 周囲に家を売った事実が知られる可能性がある |
利用する目的
リースバックを利用する目的は、家を売却したあともそのまま住み続ける点にあり、必ずしも返済が困難だからとは限りません。
一方、任意売却の場合は債権者に対して滞っている住宅ローンの返済がおもな目的です。
任意売却によって得た資金を返済に充てられれば、家が競売で買い叩かれるのを防げるため、売却条件にある程度自分の意思を反映できます。
売却後の居住
リースバックは家を売却しても賃貸として住み続けられますが、任意売却の場合は売買契約成立後に買主に家を明け渡さなければならず、退居する必要があります。
ただし、任意売却とリースバックを併用した場合はそのまま住み続けられるため、売却した後も家を出る必要はありません。
債権者の同意
任意売却をおこなうには、債権者が保有する抵当権の抹消が必要となるため債権者の同意を得なければならず、同意がなければ売買契約そのものが成立しません。
一方、リースバックの場合は、債権者の同意がなくても手続きを進められるため、任意売却に比べると利用しやすいのが特徴です。
家の売却先
リースバックを利用する場合、リースバックを専門に取り扱うリースバック会社が買主になるケースがほとんどです。
対して任意売却をおこなう場合は、一般市場で広く買主を募るため取引対象は誰でも構いません。
自ら選んだ相手に売却が可能で、マイホームの購入を考える一般の個人や法人などが買主になります。
売却価格の相場
リースバックを利用した場合、家の売却価格は市場価格の70~80%程度で、一般的な相場に比べて低く査定されがちです。
一方、任意売却は一般市場で物件の取引がおこなわれるため、市場価格の80~90%程度とやや高値で取引できる可能性があります。
ブラックリストの状態
住宅ローンの返済を3ヵ月滞納すると信用情報に登録され、いわゆるブラックリストに載る状態となり、その後のローンやクレジットカードの利用が制限されます。
そうなる前にリースバックを利用すれば、ブラックリストに載らずに済むため、信用情報に傷が付く心配はありません。
一方任意売却の場合、競売されるのを防ぐ目的で利用する時点で事故情報が記録されているケースが多く、結果としてブラックリストに載る可能性があります。
周囲への影響
リースバックの場合、一般市場では売り出さずにリースバック会社と直接売買契約をおこなうため、周囲の人々に家を売ったと知られる可能性は低いです。
一方、任意売却を利用すると不動産サイトに掲載されたり、内覧なども可能になったりして一般市場に広く周知されるため、周囲の人々にも知られる可能性が高くなります。
よって、近所の人に知られたくない場合にはリースバックの利用がおすすめです。
リースバックと任意売却それぞれのメリット・デメリット
リースバックと任意売却のどちらを選ぶかによって、退居の必要性や売却価格、周囲への影響などが左右されます。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の目的や条件、優先事項をふまえて適切な方法を選びましょう。
リースバックのメリット
リースバックの大きな魅力は、住み慣れた家にそのまま住める点にあります。
引越しても構わない、あるいはできるだけ高く売れる方法で売りたい場合は、リースバックにこだわる必要はありません。
住み続けるにしても、リースバックなら隣近所に知られる心配がなく、周りを気にせず以前同様の生活ができるうえに、希望すれば将来的に買い戻しできる可能性もあります。
さらに融資を受けずにまとまった資金を得られるため、住宅ローンの返済にあてるだけではなく、生活費や教育費にあてるなど、さまざまな目的に活用できます。
リースバックのデメリット
リースバックを利用して家を売却した場合、一般的な売却価格よりも安い査定額になる傾向があります。
リースバック会社による買い取りの形態となるため、再販売の際のコストやリスクをふまえて市場の相場よりも低く抑えられてしまうからです。
また、住み続けられるとはいっても家を売るのに変わりないため、家の所有権が移り資産ではなくなるうえに、家の買い戻しも必ずできる保証はありません。
売却後は賃貸契約となり毎月の家賃が発生するため、住宅ローンを完済できなかった場合は、住宅ローンの残債と家賃の両方を支払う必要が出てきます。
任意売却のメリット
競売やリースバックに比べると売却価格が高くなる傾向があります。
特に競売にかかると市場価格の50〜60%程度になるケースも多く、少しでも高く家を売りたい人には大きなメリットです。
また、競売は情報が全国公開され住宅ローンの滞納の件が周りに知られるリスクがありますが、任意売却なら一般市場に出回るだけなので、売却の理由まではわかりません。
さらに競売では引越し費用は出ませんが、任意売却なら交渉次第で売却金から10~30万円程度の引越し費用が捻出できる可能性があります。
任意売却のデメリット
任意売却は住宅ローンを借りている金融機関の同意が不可欠です。
査定額や交渉内容で双方の折り合いがつかない場合、同意が得られず売却が成立しなくなります。
また、住宅ローンの滞納が3ヵ月以上になると事故情報としてブラックリストに載る状態となり、新しくクレジットカードを作成する、ローンを組むなどが難しくなります。
さらに任意売却は期間制限がありスピード勝負になりやすく、タイムリミットが来て買主が見つからないケースや、売るために悪条件を飲まざるを得ないケースも多いです。
リースバックと任意売却が併用できるケースとは
リースバックと任意売却はどちらか一方のみではなく、両方を組み合わせても利用できます。
併用なら任意売却でも家に住み続けられるため、どのようなケースに併用できるのかをしっかりとチェックしておきましょう。
リースバック会社を買主として任意売却をおこなう
任意売却を選択したうえで、リースバック会社を買主に指定するケースです。
ただし、任意売却では債権者に合意を得るのが大前提のため、債権者が納得する価格を提示できるリースバック会社を探し出さなければいけません。
債権者の合意を得たら、通常のリースバック利用と同様、家の売却と賃貸借契約を同時におこないます。
併用しても住宅ローンの完済ができない場合は任意売却したあとも返済が続くため、リースバックによる家賃と住宅ローン返済の二重払いになる点に留意しておきましょう。
併用はこんな人におすすめ
リースバックと任意売却の併用は、住宅ローンの返済に困っていて、家に住み続けたい方におすすめの方法です。
住宅ローンの滞納が長く続くと、競売となって家を強制退去させられる可能性があります。
そこでリースバックと任意売却をうまく利用すれば、住宅ローンの問題も解決しつつ、家に住み続ける願望も叶えられます。
また、リースバック会社が買い取る形となるため隣近所に知られる可能性は低く、家を売って返済に充てたいけれど、周りにばれたくない方にも併用がおすすめです。
まとめ
リースバックと任意売却では、利用目的や売却価格の相場、債権者の同意の有無などが違いますが、どちらも住宅ローンに悩む方にとって魅力的な解決方法です。
家の売却を考えている場合は、リースバックと任意売却のメリット・デメリットを理解したうえで、併用も視野に入れながら検討してみてはいかがでしょうか。