任意売却するとブラックリストに入る?信用情報への影響などを解説2024.05.07
●任意売却するとブラックリストに載ってしまう?
●ブラックリストに載らずに任意売却する方法はある?
●ブラックリストに載った場合の影響は?
この記事では、任意売却をするとブラックリストに入ってしまうのを心配している方に向けて、任意売却とブラックリストの関係や、任意売却がブラックリストに与える影響、ブラックリストからの抜け出し方を解説します。
この記事でわかること
●任意売却とブラックリストの関係
●任意売却がブラックリストに与える影響
●ブラックリストからの抜け出し方
任意売却とブラックリストの関係
ローンを組んだ金融機関の許可を得たうえで、マイホームを売却するのが任意売却です。
家を売ったお金で住宅ローンの返済ができるため、返済に困った際の最終手段として活用できます。
とはいえブラックリストに載ると聞くと、不安を感じてしまう方が多いのではないでしょうか。
まずは、任意売却によってブラックリストに載る可能性があるのか、解説します。
ブラックリストに載る理由は任意売却ではない
結論としては、任意売却そのものがブラックリストに載る原因にはなりません。
任意売却をおこなうために意図的に住宅ローンを滞納した結果、ブラックリストに載ってしまうケースが大半です。
つまり任意売却によってブラックリストに載るのではなく、基本的にはブラックリストに載った状態でなければ任意売却ができないのが実態となります。
そもそもブラックリスト(信用情報)とは?
ブラックリストとは、金融事故の情報が信用情報機関によって記録されている状態を指します。
実際にブラックリストが存在しているわけではなく、要注意人物として名前が登録されるわけでもありません。
信用情報機関とは、個人のお金の支払いに関する情報(信用情報)を取り扱っている機関です。
信用情報機関から得られる信用情報は、ローン審査やクレジットカードの審査などに活用されています。
消費者がローンの返済を一定期間以上滞納する、債務整理をおこなうなどの金融事故が発生すると、信用情報機関はその情報をデータベースに記録します。
金融機関は、記録された金融事故の情報を信用情報として確認できるため、ローンの審査などに大きな影響が出てしまうのです。
この事故情報が登録されている状態が、ブラックリストと呼ばれています。
任意売却をするにはローンの滞納が必要
任意売却は、住宅ローンを滞納した結果、金融機関から競売の申立てを受けた場合にのみ可能となる手続きです。
毎月予定通り住宅ローンを支払えているなら、金融機関としては何も問題はなく、家の売却代金で残ったローンを一括返済してもらえるなら、売却を拒む理由もありません。
しかし家を売っても一括返済できないなら、状況は異なります。
そもそも住宅ローンは、購入する家を担保として購入資金を融資する仕組みです。
そのため住宅ローンの返済が滞った場合、金融機関は担保としている家を競売にかけ、資金を回収しようとします。
しかし競売での売却価格は、通常の売却価格に対して6〜7割程度が目安で、必ずしも残っているローンを回収し切れるとは限りません。
しかし任意売却であれば、通常の売却価格の8〜9割程度が目安となるため、競売よりもローンを回収し切れる可能性が高まります。
この状態になって初めて、金融機関にとって任意売却に応じるメリットが生まれます。
これが、任意売却をするのにローンの滞納が必要な理由です。
任意売却が信用情報に与える影響
任意売却そのものは金融事故とは見なされないものの、任意売却をおこなうためにはローンを滞納しなければならず、結果としてブラックリスト入りする必要があります。
ローンの滞納でブラックリストに載った場合、信用情報にはどのような影響が出るのでしょうか?
住宅ローンの滞納2回目以降でブラックリストに載る可能性が出る
住宅ローンの滞納をしても、即座にブラックリストに載るわけではありません。
支払いを滞納した情報が登録されるタイミングは信用情報機関によって異なりますが、銀行などの金融機関が会員となっているKSC(全国銀行個人信用情報センター)では、滞納2回目から登録される可能性が出てきます。
なお任意売却をおこなうために必要なローン滞納の期間は、期限の利益(ローンを分割で支払える権利)が喪失する6か月程度が目安となっています。
任意売却後に債務整理した場合もブラックリストに載る
任意売却をしてもローンが完済できない場合や、任意売却後のローン返済が難しい場合には、同時に債務整理をおこなう必要が出てきます。
債務整理とは、ローンの支払いなどが困難な場合に、支払い額を減らしたり、支払いそのものを免除してもらったりするための法的な手続きです。
具体的には、以下の3種類があります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
これら債務整理をおこなった場合も、ローンの滞納とは別に事故情報として登録されます。
ブラックリストに載った場合の影響
任意売却をおこなう過程などでブラックリストに載った場合の主な影響(デメリット)は以下のとおりです。
- ローン審査に通りにくくなる
- クレジットカード審査に通りにくくなる
- クレジットカードが使用できなくなる
- 連帯保証人に返済が請求される
ブラックリストに掲載されるとローン審査に通りにくくなるため、新たにローンを組めなくなります。
たとえば任意売却後、新たに家を買うために住宅ローンに申し込んでも、ブラックリスト掲載中は審査が通りにくいです。
同様の理由で、クレジットカードの審査にも通りにくくなります。
また現在使用中のクレジットカードも使用できなくなるので、注意が必要です。
使用できなくなるのはカード会社が信用情報をチェックしたタイミングとなるため、即座に使用できなくなるとは限りませんが、使えなくなるのは時間の問題だと考えておいたほうが良いでしょう。
住宅ローンを組む際に連帯保証人を立てていた場合は、連帯保証人にも金融機関からの支払いの請求がなされます。
任意整理をおこなう際には連帯保証人の同意も必要になるので、連帯保証人を驚かせないためにも事前に説明をしておきましょう。
任意売却にともなうブラックリスト入りは競売を回避するのに必要
ネガティブな影響が大きいブラックリスト入りですが、任意売却をおこなううえでは、基本的に避けるのは難しいです。
ブラックリスト入りを避けるために任意売却をせずにいても、そもそも住宅ローンの支払いが難しい状態であれば、いずれは滞納によってブラックリストに載ってしまうでしょう。
またローンを滞納したまま任意売却をおこなわないでいると、やがて自宅は競売にかけられます。
一般的に競売は、任意売却よりも売却価格が低くなる傾向があるため、ローンの残債を支払い切れないかもしれません。
このように、ブラックリスト入りを回避するために任意売却そのものを避けても、任意売却をおこなう必要性が出てきている時点で、より悪い状況に陥ってしまう可能性が高いです。
最悪のケースである競売を避けるためにも、ブラックリスト入りは必要最低限のダメージとして受け入れ、できるだけ早く任意売却に着手するのがおすすめです。
ブラックリストから抜け出す方法
任意売却を進めるためにブラックリスト入りを受け入れても、できるだけ早くブラックリストから抜け出したいと思う方が多いのではないでしょうか。
ここからは、ブラックリストから抜け出す方法を解説します。
抜け出す方法は登録期間が過ぎるのを待つだけ
一度登録された事故情報は、登録された理由が解消されたうえで、一定期間が経過すれば自動で削除されます。
たとえばローンの滞納によって登録された場合、ローンそのものを完済してから5年間が削除までの目安です。
残念ながら、ローンを完済せずにブラックリストから抜け出す手段はなく、完済から削除されるまでの期間を意図的に短くする方法もありません。
できるだけ早くブラックリストから抜け出すためには、できるだけ早くローンを完済したうえで、登録期間が過ぎるのを待つしかないのです。
登録期間は事故の種類と信用情報機関によって異なる
日本には以下の通り、3種類の信用情報機関が存在し、それぞれ扱っている信用情報を利用している企業の種類が異なります。
信用情報機関名 | 利用している企業の業種 |
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | 信販会社、クレジットカード会社など |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 銀行、信用金庫など |
株式会社日本信用情報機構(JICC) | 消費者金融、クレジットカード会社、保証会社など |
ブラックリストに登録されている期間は事故の種類と、どの信用情報機関に登録されたかによって微妙に変化します。
以下の表は、事故の種類と信用情報機関による登録機関の違いをまとめたものです。
事故の種類 | CIC | KSC | JICC(契約日が令和元年9月30日以前) | JICC(契約日が令和元年10月1日以降) |
延滞 | 契約期間中、および契約終了後5年以内 | 契約期間中、および契約終了日から5年を超えない期間 | 滞納が続いている期間 | 契約期間中、および契約終了後5年以内 |
任意整理 | 契約期間中、および契約終了後5年以内 | 登録されない | 任意整理発生日から5年以内 | 契約期間中、および契約終了後5年以内 |
個人再生 | 登録されない | 個人再生手続開始決定日から10年を超えない期間 | 個人再生申立日から5年以内 | 契約期間中、および契約終了後5年以内 |
自己破産 | 契約期間中、および契約終了後5年以内 | 破産手続開始決定日から10年を超えない期間 | 破産申立日から5年以内 | 契約期間中、および契約終了後5年以内 |
信用情報機関のうちJICCは、住宅ローンの契約日が令和元年9月30日以前と、それ以降の場合とで期間が異なります。
たとえば延滞の場合、令和元年9月30日以前では延滞している期間のみがブラックリスト登録期間です。
任意整理ではKSCのみ登録されず、個人再生はCICでは登録されません。
ただし任意整理や個人再生にともなって延滞や代位弁済が発生した場合は、自己情報として登録されるため注意してください。
ブラックリストの情報を確認する方法
ブラックリストに情報が登録されているかを確認するには、信用情報機関に情報の開示を申請する必要があります。
具体的な申請方法は、窓口、郵送、インターネットの3種類です。
申請方法 | CIC | KSC | JICC |
窓口 | ー | ー | 2024年4月現在、休止中 |
郵送 | 手数料1,500円 | 手数料1,679~1,800円 | 手数料1,000円 |
インターネット | 手数料500円 | 手数料1,000円 | 手数料1,000円、専用のスマートフォンアプリで申請 |
CICとKSCでは窓口での申請を受け付けておらず、JICCでは休止中となっています。
KSCに郵送で申請する場合、コンビニのマルチコピー機から手数料を支払ったうえで、申込書をプリントする必要があります。
手数料はコンビニによって異なるので、注意してください。
JICCにインターネットで申請する場合は、専用のスマートフォンアプリを使用する必要があります。
まとめ
ブラックリストに載る理由は任意売却ではなく、任意売却をするためのローン滞納が原因です。
ブラックリスト入りによってローン審査に通りにくくなるなどの影響が発生しますが、住宅ローンを完済してから一定期間が経過すれば、自動でブラックリストから抜け出せます。