任意売却と競売との違いとは?
それぞれのメリットも説明!2024.04.02
●金融機関へローンを支払っていける見込みがたたない
●このまま黙っていると競売にかけられるのだろうか
●競売と任意売却との違いがわからない
●競売よりも任意売却のほうが得策なのだろうか
ここでは、さまざまな事情でローンを支払えずにいる方へ、そのまま放置して競売にかけられるよりも任意売却を選択するべき理由を説明します。
この記事でわかること
●滞納したままでいると競売にかけられる
●競売にならないよう任意売却を目指すべき
●競売と任意売却との違い
1.任意売却と競売のそれぞれの概要
任意売却と競売は、住宅ローンの滞納で生じる問題を解決する方法に挙げられ、どちらも不動産を処分して生んだ代金を債権者へ配当する点で共通しています。
任意売却は債務者が自らの意思に沿って売却するのに対し、競売は債務者の意思に関わらず債権者が裁判所へ依頼して強制的に売却される仕組みです。
ここでは、双方の概要や特徴を説明します。
1-1.任意売却の概要
任意売却は、債務者と債権者が協議したうえで売却を進める方法です。
何らかの事情で住宅ローンが返済できない際、金融機関などの債権者から抵当権の解除や承諾を得たうえで借入れの担保であるマイホームを売却します。
売却後に債務が残る方法が任意売却です。
手続きの流れは大枠で通常の不動産売却と違いがなく、市場価格にほぼ近い価格で売却できます。
このため、住宅ローンの残債を大きく圧縮でき、債権者にとってもより多く債務回収が見込めるので、債権者が任売売却に応じるケースは少なくありません。
ただし、債権者が複数の場合、債務者はすべての債権者から任意売却に応じてもらう必要があります。
また、共同所有者と連帯保証人への連絡の他、本人以外が入居している場合には入居者への説明も必要です。
債務者は、自らによってそれらの手続きを短期間のうちにおこなわなければなりません。
売却の成功には、債権者の理解と協力の他、対応する不動産会社の経験も必要です。
1-2.競売の概要
競売とは、住宅ローンなどの借入金を返済不能になったときに、債権者が裁判所に申し立てをおこない、入札形式で購入者を募って担保物件を強制的に売却する方法です。
債務者は拒否できるものではなく、売却された不動産の代金は金融機関などの債権者に配当されます。
債権者が裁判所へ申し立てをおこない、対象物件の評価決定後に実施される入札に参加した買受申出人のうち、最高額で落札した人に不動産の所有権が移転する流れです。
競売の手続きは2つに大きく分けられ、担保不動産競売と強制競売があります。
担保不動産競売は、不動産に対して抵当権や根抵当権などを設定した債権者が、その権利を行使する手続きです。
一方、強制競売は、借金などの金銭債権を保有する債権者が利用できる手続きです。
裁判所へ申し立てから不動産処分までの基本的な流れは変わりませんが、債権者への配当額は大きく異なります。
担保不動産競売の場合、担保債権者は競売によって得られた代金から優先的に配当を受けます。
強制競売を申し立てる者が無担保の債権者の場合、債権額に応じて他の無担保の債権者と一緒に配当を受けるものなので、優先的に配当されるわけではありません。
借金の返済に苦慮し資金繰りのために無担保の借金を抱えている場合には、この方法で競売をすすめられる可能性が考えられます。
なお、競売がおこなわれても、住宅ローンの残債を全額返済できるとは限りません。
残債がある場合は、返済義務が引き続き残るため注意が必要です。
競売になってしまうケースでは、その後の生活が立ちいかなくなっている可能性が高く、残債の分割払いに応じてもらえない可能性があります。
自己破産をすると残債を帳消しにできますが、5〜10年の間は新規でのローンが組めないうえ、連帯保証人に返済義務が移り多大な迷惑をかけてしまいます。
2.任意売却と競売のメリットとデメリット
任意売却と競売のどちらにもメリットやデメリットがあります。
ただし、任意売却のほうが多くのメリットがあり、競売はデメリットが多いと考えられるのが一般的です。
双方のメリットとデメリットを説明するので比較してみましょう。
2-1.任意売却のメリットとデメリット
任意売却は市場価格に近い金額での売却ができるので、住宅ローンの残債が減少し、任意売却後の返済計画も立てやすくなるのが債務者にとってのメリットです。
また、公的機関などで物件情報が一般公開されるわけではないため、知人や近隣の人に伝わる可能性が低く、プライバシーが守られやすいともいえます。
さらに、金融機関など債務者との交渉次第では、引越し費用や税金、仲介手数料などを売却代金から捻出してもらえるケースがあります。
ただし、すべての債務者が応じてくれるわけではないので注意してください。
なお、物件を購入したオーナーとの交渉によっては、賃貸契約に応じてもらえる可能性が考えられます。
これはリースバックと呼ばれるもので、家賃を支払い引き続き住み慣れた住宅に住み続けられます。
購入者が親や兄弟、親戚の他投資家などの場合には、リースバックの可能性が期待できます。
しかし、任意売却をおこなっても住宅ローンの残債を全額返済できない場合には、その後の返済を続ける点が残される大きな問題です。
任意売却は、債権者との協議次第では売却後の残債の分割による支払いに応じてもらえる可能性があります。
債権者との間で分割和解の契約を締結できたときは、そのあとは生活に支障のない範囲で分割返済してください。
任意売却を進めるためには、金融機関など債務者の許可とともに、連帯保証人や共有名義人の同意が必要です。
同意を得るために時間をかけていると、競売の期限に間に合わなくなってしまいます。
このため、連帯保証人や共有名義人が複数存在する場合には、事前に十分に話し合っておきましょう。
他にも、任意売却をおこなえる期間が短い点もデメリットの1つです。
競売開札日の前日までに任意売却ができなければ競売になってしまうので、短い期間で買い手をみつけて売買契約を結ぶ必要があるため早めに取り組みましょう。
2-2.競売のメリットとデメリット
競売は法的な手続きであり、裁判所が売却を進めるため、債務者は面倒な売却手続きをする必要がありません。
マイホームは競売にかけられて自動的に売却されるので、ほとんど手間がかからないでしょう。
また、任意売却は競売が実行される前までに急いで売却しなければならないのに対し、競売は滞納から所有権移転までに約9ヵ月から1年数ヵ月程の時間がかかり、時間を確保したいケースではメリットです。
しかし、競売になると一般的な相場より3〜5割程安い価格で落札されるのが一般的です。
売却価格の安さは、その後の残債の返済に大きな影響を与えます。
さらに、競売にかけられている物件情報は広く公開されるとともに、裁判所の執行官や不動産鑑定士が調査のために訪問します。
競売物件の購入を考えた不動産会社などが、詳細な情報を収集する目的で近隣住民に聞き込みする可能性も考えられます。
これらの結果、知人や近隣の人に競売にかけられているのを知られてしまい、社会的な信頼を失いかねません。
この他、明渡すよう催告により言い渡された退去日に強制執行されるため、任意売却のように交渉の余地は残されていない点もデメリットの1つです。
なお、強制執行は拒否できないので注意してください。
3.任意売却と競売の違い
ここまでは、任意売却と競売双方の概要やメリットなどを説明してきました。
ここでは、おもな点を比較してみるとともに、どちらが向いているかタイプを考えてみましょう。
3-1.売却価格
任意売却の場合には市場価格と同程度の価格で売却できるケースが多いのに対し、競売では市場価格の3〜5割程安い価格で落札になるのが一般的です。
このため、売却後に残債が残ると、その後の生活設計に大きな差が生まれます。
3-2.プライバシー
任意売却の手続きの流れは通常の不動産売却と大差なく、知人や近所の人に事情を知られずに売却できます。
しかし、競売は新聞やインターネットにより公開されるため、知り合いや職場に知られる可能性が高くなってしまいます。
3-3.引越し
親や兄弟、親戚に任意売却によって購入してもらうと、リースバックによって引き続き住み慣れた住宅で暮らせる可能性があります。
一方、競売は催告された退去日に退去しなければ不法侵入に問われてしまうため、必ず退去しなければなりません。
3-4.手続きの手間
競売は裁判所により売却が進められるので、ほとんど手間がかかりません。
しかし、任意売却は競売開札日の前日までに自らで買い手をみつける必要があります。
手続きを進めるためには金融機関など債務者の許可だけではなく、連帯保証人や共有名義人の同意が必要になり、短期間で売却するのに苦労します。
3-5.どちらが向いているか
競売により不動産を売却しても債務は残ってしまうため、その後、自己破産を選択する予定があるなら競売が向いているといえます。
自己破産しても最低限生活に必要な財産は残るので、生活環境を変えて、生活の再建を考えるとよいでしょう。
しかし、一般的には競売にならないよう任意売却を選択すべきです。
住宅ローンを滞納すると金融機関など債権者から催促を受け、電話や書面などがあっても支払わない場合には、催告書や督促状が送付されてきます。
ここまでの段階で債権者に対して任意売却の意思を伝えると、競売を避けられる可能性があります。
病気で働けなくなり無収入の場合でも、早めに金融機関などへ連絡して任意売却に応じてもらうのが得策です。
なお、任意売却の場合には仲介業者へ依頼して手続きを進めるのが一般的ですが、持ち出し費用は発生しません。
したがって、無収入の状態でも支障なく、任意売却の手続きを進められます。
4.まとめ
何らかの事情によって住宅ローンを支払えなくなった場合には、任意売却か競売で担保物件を売却しなければなりません。
どちらにもメリットやデメリットがありますが、競売を避けて任意売却を選択するのが一般的です。
支払いが厳しくなった場合には、金融機関などから催告書などが届く前に、早めに相談しましょう。