任意売却後の残債はどうなる?
返済できない場合の対策も解説2024.04.02
任意売却でローンが完済できなかった場合、残ったローンはどうなる?
残債を少しでも減らすには、どうすればいい?
残債を支払えなくなった場合の対処法は?
この記事では、任意売却後の残債の扱いや、残債の利息と連帯保証人の扱い、残債を軽減するポイントを解説します。
残債に関する相談先や、残債が支払えない場合の対策にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
任意売却後の残債の扱い(支払い義務がある)
残債を軽減するポイント
残債が支払えない場合の対策
1.任意売却後の残債にも支払い義務がある
任意売却したもののローンが残ってしまった場合、任意売却後も残債を返済しなければなりません。
中には「任意売却後は返済不要」と宣伝している任意売却業者も存在しているようですが、基本的に支払い義務は消えないので注意してください。
具体的にどのような形で支払うのかなど、任意売却からの流れに沿って、詳細を解説します。
1-1.任意売却をしてもローンを完済できるとは限らない
そもそも任意売却に成功したからといって、必ずローンが完済できるとは限りません。
たとえばローンが2,000万円残っている状態であれば、家が2000万円以上で売れない限り、ローンは残ってしまいます。
このように残債が売却価格を上回っている状態を、オーバーローンと呼びます。
残念ながら任意売却に踏み切るケースの多くは、オーバーローン状態です。
任意売却を終えた後も、基本的には返済を続ける必要があると考えたほうが良いでしょう。
1-2.残債の支払い先は債権回収会社
任意売却後の残債の支払い先は金融機関ではなく、債権回収会社(サービサー)に支払うのが一般的です。
なぜなら多くの場合、任意売却が完了した時点で、債権が債権回収会社に移っているからです。
なぜ金融機関から債権回収会社に債権が移るのか、それを理解するには、任意売却における債権の基本的な動きを知る必要があります。
住宅ローンの滞納が一定期間続くと、金融機関は保証会社に対し、その時点でのローン残債の返済を求めます。
保証会社は求めに応じ、契約者に代わってローンを一括返済しますが、それで残債がなくなるわけではありません。
残債はそのまま残り、債権だけが金融機関から保証会社に移動します。
つまり任意売却によるローン残債の支払いは、実は保証会社に対しておこなわれているのです。
任意売却後も残債がある場合、保証会社は回収の手間を省くために、その債権を債権回収会社に売却します。
このような経緯を経て、任意売却後の残債は多くの場合、債権回収会社に対して支払う形になります。
1-3.残ったローンの支払い方法は3種類
任意売却後の残債は、以下の3パターンから可能な方法を選択して支払うケースが多いです。
一括での支払い
分割での支払い
無理なく支払える金額での分割払い
そもそも任意売却は、住宅ローンを返済が難しい場合に取られる手段です。
債権回収会社はそういった事情を十分に理解しているため、任意売却をせざるを得なかった債権者に対して、残債の一括返済のような無理な支払いは求めません。
そのため多くの場合、無理なく支払える金額で返済する方法が選ばれます。
1-4.残債をどう支払うかは話し合いで決める
3つの支払い方法のうちどれを選ぶかは、債権回収会社との話し合いのうえで決まります。
任意売却とは異なり、不動産会社や任意売却業者が代理となる交渉は認められておらず、債務者が直接話し合う必要があるので注意してください。
具体的には、生活状況確認表や生活収支報告書といった、実生活における収支が把握できる家計簿のような書類を作成したうえで、その内容を元にして返済方法や返済額について話し合います。
残債の支払いは住宅ローンとは異なり、実際の家計に合わせて柔軟に対応してもらえる可能性が高いです。
無理のなく支払い続けられる金額に設定してもらうためにも、提出する書類には正直な内容を記載して、誠実な話し合いを心がけましょう。
1-5.基本的に月々の返済額は少なくなる
月々の返済額は経済状況に応じて設定されるため、住宅ローンの支払いよりも大幅に少なくなる傾向があります。
具体的には月々5,000円〜1万円程度、多くても3万円程度の返済でまとまるケースが多いです。
その代わり返済が長期に渡る可能性が高くなるので、注意してください。
たとえば残債が500万円ある状態で、月々の返済額が1万円に設定された場合、単純計算で500ヶ月払い続けなければならなくなります。
年に直すと40年以上となるため、場合によっては一生涯返済が続く形にもなりかねません。
残債が多い場合は、あらかじめ覚悟しておいたほうが良いでしょう。
1-6.時効を期待するのは非現実的
一般的な借金と同じく、任意売却後の残債も5年または10年で時効となります。
具体的には、返済が一切されない状態が5年、もしくは10年続けば時効が成立し、支払い義務そのものがなくなります。
ですが実際のところ、任意売却後の残債に時効を期待するのは現実的とはいえません。
債権者が債務者に対して支払いの督促や催告、裁判の法的手続きをおこなえば、時効までの時間が停止、もしくはリセットされてしまうためです。
よほどの理由がない限り、債権回収会社が5年や10年も無反応でいるとは考えられません。
変に時効を期待するよりも、無理のない返済を続けていけるよう、債権回収会社と誠実に話し合いを進めるよう心がけましょう。
2.任意売却後の残債の利息や連帯保証人はどうなるのか?
任意売却後の残債には、基本的に利息がかかります。
ただし住宅ローンのように明確に決まっているわけではなく、債権者が自由に設定できるため、交渉が可能です。
中には利息をなくしてもらえるケースもあるので、月々の返済額と同様にしっかり話し合いましょう。
住宅ローンを組む際に連帯保証人を設定していた場合、その連帯保証人は残債に対しても支払い義務を負います。
そのため住宅ローンと同じく、残債の支払いが滞ってしまうと連帯保証人に請求されてしまうため、迷惑をかけないよう注意してください。
3.任意売却後の残債の支払いはいつまで続く?
任意売却後の残債の支払いは、基本的に完済するまで続きます。
残債の額が大きい場合や、月々の返済を1万円程度の少額に抑える場合などは、一生涯に渡って返済が続いてしまう可能性もあるので、あらかじめ覚悟しておいたほうがよいでしょう。
ただし中には、債権譲渡が繰り返されるうちに返済額が圧縮された結果、100万円や50万円程度を一括納付を条件に、残債が免除されたケースも見受けられます。
もちろん、そのような免除が起こるとは断言できないものの、可能性はゼロではありません。
訪れた幸運を確実に掴めるよう、普段からしっかりと支払いを続けていきましょう。
4.任意売却後の残債を軽減するポイント
任意売却後の支払い負担を減らすには、できるだけ残債を少なくする必要があります。
具体的にどういった点に注意すればいいのか、確認してみましょう。
4-1.なるべく高い価格で任意売却する
残債を少なくするには、少しでも高い価格で家を売る以外に方法がありません。
そのため任意売却を検討し始めた時点で、できるだけ高い金額で売れるように意識して行動するのが理想です。
具体的には、任意売却を得意としている不動産会社に依頼する、できるだけ早く売却活動を始める、などの方法があります。
任意売却は通常の不動産売却とは異なるため、任意売却に関する実績やノウハウの有無が、スムーズな売却活動につながりやすいです。
できるだけ高い価格で売却するためにも、任意売却を得意としている会社を選ぶようにしましょう。
できるだけ早く売却活動を始めて、より条件の良い買主を探す時間を確保するのも重要です。
時間に余裕があれば、物件をより魅力的に見せるために工夫する時間も作りやすくなります。
滞納を始める前に仲介を依頼する不動産会社を探すようにするなど、早め早めの行動を心がけましょう。
4-2.債権者と交渉して元金を減額してもらう
任意売却後もローンが残ってしまった場合は、元金を減らしてもらえるよう債権者に交渉してみましょう。
意外に思われるかもしれませんが、残債に関しては元金の一部を免除してもらえる可能性があります。
特に債権者が債権回収会社の場合は、残債の1〜10%程度の価格で債権を購入しているケースも、決して珍しくありません。
たとえば500万円の債権を債権回収会社が10%で購入していた場合だと、50万円以上回収できれば利益が得られる計算となります。
元金の一部を免除しても確実に回収したほうがよいと判断されれば、交渉に応じてもらえる可能性が高まるでしょう。
実際債権回収会社のほうから、元金の大幅な減額を提案してくるケースも見受けられます。
最初から無理だと諦めるのではなく、ダメで元々の気持ちで交渉してみるのがおすすめです。
4-3.債権者と交渉して利息を低くしてもらう
元金の減額だけでなく、利息の軽減や免除についても交渉してみましょう。
残債の軽減とは異なりますが、返済負担を減らす効果が期待できます。
利息が高くなるほど返済総額が増しますし、その分だけ完済までの期間も長くなってしまいます。
特に月々の返済額を少なくする場合は、生涯に渡って返済が続いてしまいかねません。
できるだけ負担を減らすために、利息についてもしっかり話し合いましょう。
5.任意売却後の残債に関する相談はどこにすべき?
任意売却後の残債に関して相談したい場合は、任意売却を依頼した不動産会社に連絡し、相談したい旨を伝えてみましょう。
任意売却を依頼していない不動産会社に相談しても、受けてもらえない可能性が高いので注意してください。
特に債権者と交渉については、専門家に相談しながら進めたいと考える方も多いのではないでしょうか。
任意売却を専門としている不動産会社であれば、売却後の残債に関する相談も無料で受けてくれる可能性が高いです。
交渉の進め方や書類の書き方など、アドバイスを求めてみましょう。
債権者との交渉の代理は非弁行為と見なされてしまうため、不動産会社には依頼できません。
どうしても専門家に交渉を依頼したい場合は、任意売却に強い弁護士に相談してみましょう。
6.任意売却後の残債が支払えない場合の対策
債権者との交渉の結果、無理のない返済額にできたとしても、生活に大きな変化が起こるなどして、一時的に収入が途絶えてしまう可能性もゼロではありません。
残債の支払いが滞ってしまうと、連帯保証人に迷惑がかかるだけでなく、回収のために預貯金や給与が差し押さえられてしまうおそれもあります。
もしものときのために、支払えない場合の対策を確認しておきましょう。
6-1.個人再生
個人再生とは、裁判所に借金返済が困難である事実を認めてもらったうえで残債の減額を申請する、債務整理の方法の1つです。
具体的には借金を5分の1に減額したうえで、3年もしくは5年での完済を目指します。
個人再生を利用するには、安定した収入がある、減額によって返済の見込みが立てられるなど、いくつかの条件を満たす必要がありますが、自己破産のように財産を手放す必要はありません。
6-2.自己破産
自己破産とは、借金の支払い免除を裁判所に申請する、債務整理の方法の1つです。
支払い不能であると認められた場合、ローンを含むすべての借金が免除されますが、生活に必要となる最低限の分を除いて、すべての財産が没収されてしまいます。
ほかにも、自己破産後5〜10年はクレジットカードやローンの利用ができなくなる、住所や氏名が官報に掲載される、一部の職業に就けなくなるなど、非常にデメリットが大きいです。
そのため自己破産は、最後の手段と考えたほうがよいでしょう。
7.まとめ
任意売却後の残債も、支払わなければなりません。
家計の状態を確認しつつ、どのような方法で返済を進めるのか、どの程度の金額であれば無理なく返済できるのか、債権者と話し合い、決めていく必要があります。
残債を軽減するには、なるべく高い価格で任意売却する、債権者に元金を減額してもらうよう交渉する、などの方法があります。
返済が難しくなった場合は、個人再生か自己破産で対応しましょう。