不動産売却時にかかる税金とは?税金を軽くする特例も紹介2023.08.28
●不動産を売却した際、どのような税金が課せられる?
●どのくらいの税額になる?
●税金の負担を軽減する方法は?
この記事では、不動産売却時の税負担を心配している方に向けて、不動産を売却した際にかかる税金の種類や、税金の計算方法について解説します。
また、不動産売却時の税負担を軽減できる特例についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
●不動産売却時にかかる税金の種類
●不動産売却時にかかる税金の計算方法
●不動産売却時に利用できる特例
不動産売却時にかかる税金は大きく分けて2種類
不動産を売却した際にかかる税金にはいくつか種類がありますが、必ず支払う必要がある税金と、利益が出た場合にのみ課せられる税金の、2種類に大別できます。
それぞれどのような税金が含まれるのか、詳しく見ていきましょう。
必ず支払う必要がある税金
不動産を売却した場合、利益が出ても出なくても、必ず支払わなければならないのが、以下の3種類の税金です。
●印紙税
●登録免許税
●(仲介手数料などに対する)消費税
それぞれ解説していきます。
印紙税
印紙税とは、特定の書類(課税文書)に対して課せられる税金です。
不動産売却においては、売買契約書をはじめとする各種契約書が課税の対象となります。
課せられる税額は、契約金額によって変化します。
記載された契約金額 | 課税額 |
---|---|
契約金額の記載がない | 200円 |
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円超、50万円以下 | 400円 |
50万円超、100万円以下 | 1000円 |
100万円超、500万円以下 | 2000円 |
500万円超、1000万円以下 | 1万円 |
1000万円超、5000万円以下 | 2万円 |
5000万円超、1億円以下 | 6万円 |
1億円超、5億円以下 | 10万円 |
5億円超、10億円以下 | 20万円 |
10億円超、50億円以下 | 40万円 |
50億円超 | 60万円 |
印紙税は所得税や住民税などとは異なり、必要な金額分の収入印紙を購入し、書類に貼り付け、消印を押す形で納める必要があります。
収入印紙は法務局や市役所、郵便局のほか、コンビニなどでも購入が可能です。
ただしコンビニの場合、200円分の収入印紙しか取り扱われていないため、注意してください。
なお、令和9(2027)年3月31日までに作られた不動産の譲渡に関する、契約金額が10万円を超える契約書については、以下のとおり軽減措置が適用されます。
記載された契約金額 | 通常の税額 | 軽減後の税額 |
---|---|---|
10万円超、50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超、100万円以下 | 1000円 | 500円 |
100万円超、500万円以下 | 2000円 | 1000円 |
500万円超、1000万円以下 | 1万円 | 5000円 |
1000万円超、5000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5000万円超、1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超、5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超、10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超、50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
登録免許税
登録免許税とは、不動産の登記手続きをおこなう際に納める税金です。
不動産を売却した場合、所有権移転登記や抵当権抹消登記が必要になるので、それぞれの申請時に支払う必要があります。
このうち、抵当権抹消登記については売主が負担するのが一般的ですが、所有権移転登記については買主が支払うケースが多いです。
ただし、話し合いの結果として売主が負担するケースも見受けられますので、注意してください。
登録免許税の税額は、抵当権抹消登記で不動産1件につき1,000円です。
土地と建物を同時に売却する際は、2件となります。
登録免許税の支払いは、登記を依頼した司法書士が、申請時に納める形が一般的です。
その場合は司法書士に対し、事前に登録免許税を支払います。
消費税
不動産会社に仲介を依頼した場合は、不動産会社に支払う仲介手数料に対して消費税が課せられます。
登記を司法書士に依頼した場合も、司法書士に支払う報酬に消費税がかかります。
また、一定の条件を満たした個人事業主や法人(課税事業者)が事業用の不動産を売却した場合については、売却代金に対しても消費税が課せられるので注意してください。
たとえば、投資目的で購入したアパートは事業用の不動産と見なされますので、売却代金に消費税がかかります。
売却で利益が出た場合にかかる税金(譲渡所得税)
不動産を売却した際に得られた利益を、譲渡所得と呼びます。
この譲渡所得が発生した場合に課せられるのが、以下の3種類の税金です。
●所得税
●住民税
●復興特別所得税
これら譲渡所得に課せられる3種類の税金をまとめて、譲渡所得税と呼ぶケースもあります。
譲渡所得税は、通常の所得に課せられる所得税や住民税とは別物である点に注意してください。
したがって譲渡所得が発生した場合は、通常の所得税や住民税とは別に、譲渡所得税を納めなければなりません。
譲渡所得税の税率は、売却した不動産の所有期間によって税率が変化する特徴があります。
詳しくは計算方法と一緒に、のちほど詳しく解説します。
なお復興特別所得税とは、2011年に発生した東日本大震災からの復興のために、2037年までの期間限定で徴収されている税金です。
こちらについては不動産の所有期間による税率の変化はなく、譲渡所得に対して2.1%が課せられます。
不動産売却時にかかる譲渡所得税の計算方法
お伝えしたとおり、不動産売却時にはさまざまな税金を支払う必要があります。
そのうち譲渡所得税については計算方法が複雑なため、どの程度の金額を納めなければならないのか、具体的な金額が把握しづらいため注意が必要です。
そこでここからは、譲渡所得税の計算方法について詳しく解説していきます。
譲渡所得金額の計算
譲渡所得税は譲渡所得に対して課せられるため、まずは譲渡所得金額を明らかにしなければなりません。
譲渡所得金額は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得金額 = 売却価格 -(取得費用 + 売却費用)
売却費用とは、売却する際にかかった費用です。
具体的には、売却の際に必ず支払う税金や、不動産会社に支払う仲介手数料などが対象となります。
取得費用とは、売却した不動産を購入する際にかかった費用です。
以下の2種類の計算式で求められる金額のうち、大きいほうを採用します。
1.取得費用 =(不動産の購入金額 + 経費)- 減価償却費(建物のみ)
2.取得費用 = 不動産の売却価格 × 5%
減価償却費とは、建物や設備の経年劣化によって軽減した価値を金額にしたものです。
建物にのみ適用される経費ですので、注意してください。
具体的な金額は、以下の計算式によって求められます。
減価償却費 = 建物の購入価格 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
税率は不動産の所有期間で変化する
譲渡所得税の税率は以下のとおり、売却した不動産の所有期間によって変化します。
税金の種類 | 所有期間5年以下(短期譲渡所得)の税率 | 所有期間5年超(長期譲渡所得)の税率 |
---|---|---|
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
短期譲渡所得の税率は合計で39%であるのに対し、長期譲渡所得の税率は合計で20%です。
たとえば譲渡所得金額が1,000万円の場合、短期譲渡所得で390万円、長期譲渡所得で200万円が課される計算となります。
非常に大きな違いとなりますので、不動産売却を検討する際は所有期間についても確認しておくとよいでしょう。
なお所有期間については、購入日から売却した年の1月1日までの期間で計算します。
たとえば2019年4月に購入し、24年10月に売却した場合であれば、所有期間は4年となるので注意してください。
不動産売却時にかかる税金を軽くする特例
売却した不動産がマイホームであるなど、一定の要件を満たしている場合、譲渡所得税を軽減できる各種特例が利用できます。
ここからは不動産売却時に利用できる、代表的な特例について解説します。
3,000万円の特別控除
譲渡所得が発生した場合、譲渡所得金額に対して3,000万円の特別控除が受けられる特例です。
譲渡所得が3000万円以下の場合は譲渡所得税を非課税にできますので、積極的に活用しましょう。
具体的には、以下の計算式が適用されます。
譲渡所得金額 = 売却価格 ー(取得費用 + 売却費用)ー 3,000万円
自身が実際に住んでいたマイホームを売却した場合にのみ、利用が可能です。
ただし、相続によって取得したマイホームについては対象外となるほか、住宅ローン控除や買換えの特例との併用はできないので、注意してください。
相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除
遺産相続した空き家を2023年12月31日までに売却している場合は、こちらの特例を利用できる可能性があります。
あくまでも空き家を売却した場合の特例であるため、相続した家を自宅として利用していた場合は適用されません。
そのほかさまざまな適用要件があるので、利用を検討する際は注意してください。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
マイホームを売却して譲渡所得を得た際の、長期譲渡所得の税率を通常よりも低くする特例です。
所有期間が10年超のマイホームを売却した場合、譲渡所得税率が以下のとおり軽減されます。
税金の種類 | 譲渡所得金額のうち6000万円までの税率 | 譲渡所得金額のうち6000万円を超える部分の税率 |
---|---|---|
所得税 | 10% | 15% (長期譲渡所得と同じ) |
住民税 | 4% | 5% (長期譲渡所得と同じ) |
たとえば譲渡所得金額が8,000万円だった場合、そのうち6,000万円分に関してのみ、軽減税率が適用されます。
残りの2000万円については、通常どおり長期譲渡所得の税率が適用されるので、注意してください。
なお、3,000万円の特別控除との併用が可能です。
この2つの特例を利用すればかなりの節税となるので、ぜひ積極的に活用してください。
特定のマイホームを買換えたときの特例
2023年12月31日までに所有期間が10年を超えるマイホームを売却していて、2024年の12月31日までに新しいマイホームを購入した場合に利用できる特例です。
売却価格よりも高い価格のマイホームを購入した場合、譲渡所得に対する課税を将来に繰り延べられます。
3,000万円の特別控除との同時利用は認められておらず、どちらか片方しか利用できないので注意してください。
少しわかりにくいと思いますので、3000万円で購入した旧居を4,000万円で売却し、5,000万円の新居を購入した場合を例に、具体的に考えてみましょう。
この例の場合、3,000万円の家を4,000万円で売却しているため、譲渡所得は1,000万円です。
ですので通常であれば、1,000万円に対して譲渡所得税が課せられます。
ですが買換え特例を利用すると、譲渡所得1,000万円に対する課税が、5,000万円で購入した新居を売却するまで先延ばしされます。
もし将来、新居を6,000万円で売却したとすると、譲渡所得1,000万円に対して先延ばした譲渡所得1,000万円を加算した、2,000万円を譲渡所得として、譲渡所得税が求められるわけです。
一見すると単に納税を先延ばしにしているだけに見えるかもしれませんが、例の場合、新居を売却するタイミングで3000万円の特別控除を利用すれば非課税となります。
このように買換え特例は、長期的な節税の手段として非常に有効です。
なお、売却価格よりも低い金額の新居を購入した場合については、新居の購入価格までは繰り延べされますが、差額については通常どおり課税されます。
譲渡損失が出た場合の特例
2023年12月31日までに所有期間が5年超のマイホームを売却し、譲渡損失が出てしまった場合、特例により損益通算が利用できます。
損益通算とは、その年に生じた他の利益(株式の譲渡所得など)から、不動産の譲渡損失分を差し引いて、所得を減らせる制度です。
また譲渡損失が大きく差し引き切れなかった場合は、翌年以降3年に渡り繰り越して差し引ける、繰越控除が利用できます。
また、2023年12月31日までに所有期間が5年超のマイホームを売却し、新居を買い替えた際に譲渡損失が出てしまった場合も同様に、損益通算と繰越控除が利用できます。
まとめ
不動産を売却した際は、印紙税や登録免許税、消費税などがかかるほか、売却で利益が出た場合に限り譲渡所得税が課せられます。
譲渡所得税額を求めるには、売却した不動産の所有期間によって税率を求めるなど、複雑な計算が必要です。
3,000万円の特別控除など、譲渡所得税の負担を軽減する特例がいくつか用意されていますので、上手に活用しましょう。