田舎にある空き家の処分方法とは?
放置するリスクやスムーズに処分するポイントを解説2025.06.11
● 田舎にある空き家って売れるの?
● 自分に適した空き家の処分方法ってどれになる?
● 空き家をスムーズに処分する方法ってある?
相続などで田舎にある空き家を引き取ったものの、負担に感じる方は多いです。
築年数が古くて立地条件が悪いと売却や活用チャンスが少ないものの、放置していると納税義務や管理責任が問われます。
空き家の悩みを解消するためにも、まずは課題を正しく理解したうえで、ご自身にあった処分方法を探しましょう。
この記事でわかること
● 田舎の空き家を処分する前に知っておくべきこと
● 空き家を処分する方法
● 田舎の空き家処分を成功させるポイント
田舎の空き家を処分する前に知っておくべきこと
田舎にある空き家は「もう必要ないから」といってすぐに処分できるとは限りませんので、後悔のない選択をするためにも基本情報や準備を理解しておきましょう。
ここでは、田舎の空き家を処分する前に確認するべきポイントを解説します。
田舎の空き家は需要が低い
田舎の空き家は、都市部と比べて「売れにくい」のが現状です。
日本不動産学会誌のデータによると、日本国内における都市部と田舎の空き家の割合は、次のとおりです。
● 三大都市圏:30.9%
● 三大都市圏以外:46.3%
都道府県別でみると、九州地方や四国地方、中国地方など過疎化が進む地域が目立ちます。
空き家が所在する場所によっては、すでに売り出されている空き家の数が多く、何かしらの条件が優れていなければ購入希望者がみつかりにくいでしょう。
処分するためには費用と手間がかかる
空き家を処分するためには、次のようなコストが発生します。
● 仲介手数料
● 測量費
● 不動産登記費用
● 解体費用
● 修繕費 など
空き家の状態や処分方法によってコストの内訳は異なりますが、数十万〜数百万円単位になるケースも珍しくありません。
また、空き家が遠方にある場合、不動産会社との打ち合わせをするために、処分が完了するまで何度も現地には足を運ぶ必要が出てきます。
空き家を売却したあとの手間はかかりませんが、それまでには一定の費用と手間がかかる点は理解しておきましょう。
共有名義の不動産の場合は共有者の合意が必要になる
空き家が共有名義(複数人で不動産の所有権を共有している状態)の場合、売却・譲渡・解体には共有者全員の合意が必要です。
共有者の一人でも音信不通、意見の相違があれば、処分の手続きが長期化します。
とくに相続した空き家には、幼少期の記憶や親族との思い出が残っているので、感情面の整理ができずに合意形成に至らないケースも多いです。
共有名義の不動産を放置すると、共有者が亡くなった際に相続権が細分化されて将来的な手続きの手間につながるため、早期解決を目指すのが望ましいです。
田舎にある空き家を処分せずに所有し続けるリスク
田舎にある空き家を処分せずに放置していると、金銭面や法律、社会的なリスクが高まります。
ここでは、田舎にある空き家を処分せずに所有し続けるリスクを解説します。
建物の老朽化
空き家を放置すると、建物の老朽化が進行します。
日本の住宅の多くは木材が使用されており、定期的に換気をしないと湿気が溜まり構造材の強度が低下します。
木材の劣化は静かに進行するため、日常的に使用していなければ、修復が困難な状態になるまで気付けないケースも珍しくありません。
建物の老朽化は、台風や地震などの自然災害が起きたとき、倒壊リスクを招きます。
隣家や道路、通行人に被害が出た場合、空き家の所有者に損害賠償責任が発生する可能性もあるため、適切な管理ができないのであれば処分を検討するべきです。
特定空家の指定
空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)にて、倒壊の危険性が高いなど周囲に著しく悪影響を及ぼす空き家を「特定空家」に指定する法律が発足されました。
特定空家の指導・勧告を無視すると、住宅用地特例の軽減措置が適用されなくなるため、固定資産税が最大6倍に膨れ上がります。
また、倒壊リスクが極めて高いと判断されれば、自治体が強制的に取り壊してもよいとされています。
令和5年以降、倒壊リスクがなくても適切な管理がされていないとされる「特定空家予備軍」も指導対象となり、空き家管理の基準は厳しくなりました。
害虫・害獣の増殖
誰も住んでいない空き家は、害虫や害獣の住み家になりやすいです。
● ゴキブリ
● ハエ
● シロアリ
● スズメバチ
● ネズミ
● ハクビシン
● アライグマ
● 野良猫 など
これらの害虫・害獣は、建物の内部腐食や生き物の死骸などに群がるため、人気のない空き家ほど増殖しやすい条件が揃います。
繁殖力の高い生き物が住み着くと、近隣住民の住環境に悪影響を及ぼします。
2023年はハチ刺傷による死亡者は21名となっており、大多数がスズメバチが原因とされているため、非常に凶暴で危険です。
また、ハクビシンやアライグマ、野良猫などの糞尿は、悪臭や建材の腐食など複数の問題を引き起こすため、適切な管理が求められます。
放火・漏電などの火災
管理されていない空き家は、誰でも侵入できて人目に付きにくいなどの理由で、放火の標的になるリスクが懸念されます。
とくに、雑草が伸びきっていたり、家の中に可燃性の残置物がたくさんあったりすると、燃えやすいため被害の拡大につながるため要注意です。
また、電気配線の老朽化やネズミなどの害虫による咬害などで、導線が露出したまま放置されると、漏電による火災リスクがあります。
管理不足による自然発生した火災は、所有者に損害賠償請求を課せられる可能性があるため、火災対策は欠かせません。
空き家を処分する方法
田舎にある空き家処分を検討する際、「何をすればいいのかわからない」「できれば高く売りたい」「価値がつかなくてもいいから手放したい」など、要望はさまざまです。
ここでは、空き家を処分する方法を解説します。
売却
空き家の処分で真っ先に検討するべきなのが売却です。
売却方法には「仲介」と「買い取り」の2種類あり、メリットとデメリットが異なります。
特徴 | メリット | デメリット | |
仲介 | 不動産会社と媒介契約を締結して、第三者の購入希望者と売買取引する | ● 相場価格で取引できる | ● 売却までに時間がかかる
● 契約不適合責任が免責されない |
買い取り | 再販目的の買取業者と直接的に売買取引する | ● 現金化までのスピードが速い
● 広告掲載がないので近所に知られない |
● 買取価格は相場の6〜8割程度 になる
● 条件を満たさなければ取引できない |
一般的に建物部分は築年数に応じて資産価値が下がります。
空き家の状態が良好であれば「中古住宅」として資産価値がつく場合がありますが、老朽化が進行していれば「古家付き土地」として販売するのが一般的です。
近年では、「土地を安く購入して自分好みにリフォームしたい」と考える層も増えているため、空き家の状態が悪いからといって大規模修繕・リフォームする必要はありません。
信頼できる不動産会社や買取業者を探して、売買取引を成立させましょう。
譲渡
仲介や買い取りで売却が難しい場合、第三者への譲渡を検討してもよいでしょう。
売却のようにまとまった資金を得られるわけではありませんが、所有権を第三者に移転できれば、納税負担や管理責任から解放されます。
まずは、空き家に住みたい親族や知り合い、近隣住民に相談してみましょう。
個人間の譲渡は、譲渡する側は非課税、譲渡される側に贈与税が発生する場合があります。
ただし、個人から法人への譲渡では、譲渡する側に「みなし譲渡所得」に対する所得税が発生する場合があるため、事前にご確認ください。
相続放棄
これから田舎の空き家を相続する予定がある場合、相続放棄をする選択があります。
ただし、相続放棄の手続きをしたのであれば、空き家だけではなく、すべての財産を放棄しなければなりません。
さらに、相続放棄をする時点で、空き家の所有者(両親や祖父母など)と同居していた相続人には、保存義務が課せられるケースもあります。
相続放棄を検討する際には、空き家以外の財産や保存義務の有無を確認し、本当に最適な選択かどうかを慎重に判断しましょう。
田舎の空き家処分を成功させるためのポイント
田舎の空き家は需要が少なく、購入希望者や譲渡先を見つけるのに苦労する方も多いです。
短期間でスムーズに処分を済ませるためにも、効率よく手続きを進められる方法を把握しておきましょう。
ここでは、田舎の空き家処分を成功させるためのポイントを解説します。
値下げを検討する
空き家が売れ残る原因の1つとして、売り出し価格が挙げられます。
売り出し価格とは、不動産会社の査定結果をもとに設定する販売価格です。
売主としては「できるだけ高く売りたい」と考えるのが当然ですが、田舎のように空き家が余っているエリアにおいては、購入希望者の目に止まりにくくなります。
販売活動をはじめてしばらく経っても購入希望者がみつからない場合、売り出し価格が高すぎる可能性があるため、値下げを検討してもよいでしょう。
極端に安くすると手元に入る利益が減ってしまうため、不動産会社の担当者と相談しながら適正範囲で決めると、スムーズな売却につながります。
解体してから売却する
築年数が古くて老朽化が進んでいる空き家は、解体してから売却するのがおすすめです。
住めない状態になっている空き家は「古家付き土地」になりますが、リフォームや修繕が必要なため、立地条件などが優れていない限りは敬遠されやすいです。
そこで、空き家を解体して更地にすれば、注文住宅を建てたい人や駐車場・倉庫などで活用したい人からの需要が増加して、成約が期待できます。
解体費用の相場(木造の戸建て住宅)は、坪4万〜5万円ですので、一般的な戸建住宅(30坪)であれば解体にかかる費用は120万〜150万円ほどです。
なお、更地にすると住宅用地特例の軽減措置が適用されなくなるため、計画的に売却しないと固定資産税が高くなる点に注意しましょう。
空き家バンクに登録する
空き家バンクとは、各地域の自治体が運営・管理する不動産情報サイトです。
一般的な不動産会社が取り扱っていない物件も多数掲載されているため、より幅広い選択肢から不動産選びをしたいと考える人たちから注目されています。
空き家バンクに掲載しただけで購入希望者が見つかる可能性は高くないため、不動産会社との媒介契約に加えて登録しておくと、売却の可能性が広がります。
自治体に寄付する
売却先・譲渡先がないときの対処法として、自治体や公益法人への寄付があります。
希望すればすべての不動産を引き取ってもらえるわけではありませんが、自治体が求めているエリアや面積などの条件が一致すれば、譲渡が成立するケースが報告されています。
ただし、不動産の寄付が成立するケースは非常に珍しいため、あまり期待できません。
不動産の寄付は「更地」を前提条件にしているのが大半なので、まずは役所やホームページでご確認ください。
相続土地国庫帰属制度を利用する
相続土地国庫帰属制度とは「遠方にある空き家を利用する予定がない」「管理負担が大きくて困っている」などの理由で土地を手放したい人のために発足された制度です。
令和5年4月27日から開始された比較的新しい制度ですが、一定要件を満たすと、土地の所有権を国庫に帰属できるため、納税負担や管理責任から解放されます。
帰属できるのは「土地」のみですので、空き家は解体する必要があり、さらに10年分の土地管理相当額の支払いが求められます。
そのほか、土壌汚染や崖などマイナスな要件がないかどうか厳しい要件をすべて満たす必要があるので、制度を活用するハードルは高めです。
要件を満たして適切な手続きをおこなえば売却先・譲渡先がなくても所有権を手放せますので、最終手段の1つとしてご検討ください。
まとめ
田舎にある空き家を利活用せずに放置していると、さまざまなリスクが発生します。
リスクを後回しにするほど事態は深刻化するため、使う予定がない空き家は、早めに処分を検討するのが得策です。
田舎にある空き家は需要が低いとされていますが、実績豊富な不動産会社や買取業者に相談して、ご自身にとって最適な処分方法をみつけましょう。