空き家は3年放置で罰則?
空き家放置の問題点やリスクなどを解説2025.02.13
●空き家を3年以上放置したら、罰則があると聞いて不安だ
●相続で空き家を取得したが、住む予定もなくどうすればいいのか困っている
●空き家を放置すると、どのようなリスクがあるのか知りたい
空き家を所有していると、管理や維持まで手が回らず、手つかずのまま置いている方はいませんか?
2015年に空家等対策特別措置法が施行され、空き家に対する取り締まりが厳しくなりました。
所有者としては、3年放置している空き家への罰則がどういったものなのか気になるところでしょう。
ここでは、空き家に関する問題点を解説していきます。
この記事でわかること
●3年以上放置している空き家の問題点
●空き家を放置するリスク
●空き家を3年以上放置しないための対策
3年放置の空き家問題とは
全国的に空き家は増加の一途をたどっており、社会的な問題にまで発展しています。
ではまず空き家とは何か、そして空き家問題の現状や3年放置に対する規制とはどういったものかをみていきましょう。
全国の総住宅数と空き家の数の現状
総務省統計局の住宅・土地統計調査によると、2023年10月1日現在での全国の総住宅数は6,502万戸で、前回の調査とくらべ261万戸増加し、過去最多となりました。
ただ総住宅数には誰も住んでいない住宅の数も含まれており、住宅数が増えたからといって、そこに住んでいる人も増えたわけではありません。
つまり総住宅数の増加の陰には空き家数の増加が隠れており、ここが現在社会問題となっているのです。
空き家の数は一貫して増え続けており、特にここ30年間では約2倍と急速な増加傾向にあります。
2023年の調査では、前回の2018年よりも51万戸も増加しており、空き家率も13.8%とこちらも過去最高の数値です。
なかでも目立つのが、賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家の増加で、利用目的や予定のない長期にわたって不在が続く家屋の数と割合が増えています。
なお空き家とみなされるのは、1年をとおしての人の出入りや物件の状態、水光熱の使用がないなど、総合的にみて明らかに人が住んでいないと判断される場合です。
空き家がもたらす問題
では空き家がなぜ問題視されるのか、おもに以下の問題があります。
・治安の悪化
不審者や犯罪者が住みつき、犯罪活動の拠点となりやすい点、また窃盗などが起こりやすい状況にあり、地域の治安の悪化につながります。
・火災のリスク
管理されていない家屋は、放火の対象にされやすくなり、さらに電気関連設備の劣化やガス漏れなど火災のリスクが高いのも問題点です。
・衛生面・景観の問題
空き家は管理されない物件が多く、庭には雑草が生え放題となり、害虫の発生やゴミの不法投棄など衛生面でも問題があります。
また街としての景観を損ねるケースもあり、街のイメージが低下し、居住希望者の減少にもつながるなど街に活気がなくなるおそれもあるのです。
他にも不動産としての価値の低下や、倒壊による周辺家屋の被害、土地活用の機会ロスなどのリスクや損失も空き家問題に含まれます。
空き家の3年放置問題
空き家の放置はさまざまなリスクを抱えるうえ、今後も増え続けるのは確実です。
そこで政府は増え続ける空き家の抑止策として、2015年に空家等対策特別措置法を施行しました。
この法律では3年以上放置してはいけないなど、じつは期間に関しての決まりはありません。
ただし、3年以上放置した状態であれば、その後も放置状態が続く確率は高く、3年は目安の1つととらえてください。
法律では期間に関わらず罰則が課せられる可能性を示唆しており、放置空き家には適切な管理が求められます。
空き家を放置しているとみなされるまでの期間と判断基準
先述のとおり、空き家の定義は1年以上使用されていない状態の住宅となり、未使用状態を証明するためにいくつかの判断基準が用いられます。
人の出入りや水光熱の使用状況以外の判断基準
そこに住んでいなくても、住民が定期的に出入りしていれば空き家とはいえず、水光熱などのライフラインも使用の形跡があれば問題ありません。
上記の他にも庭の雑草の伸び具合や物件の劣化の具合などの管理状況も判断材料になります。
また登記記録や住民票、住民の主張なども判断基準となり、これらを総合的にチェックして空き家かどうかがジャッジされます。
空き家の種類別でみる判断基準
空き家には一般的にいわれている空き家の他に、別荘や賃貸物件、投資物件なども含まれるため、ここではそれぞれの判断基準をみていきましょう。
・賃貸物件
アパートなど賃貸経営目的の集合住宅は、全室が空室となった状態で空き家と判断されます。
つまりたとえ築年数が古く、景観や衛生上の問題があっても、1人でも住んでいれば空き家ではありません。
・投資用の住宅
投資用に購入した物件でも、通常の住宅と空き家の判断基準は同じです。
新築であっても、中古物件であっても1年を区切りに未使用と判断された場合は空き家となります。
・別荘などの二次的住宅
もともと二次的住宅は所有者が頻繁に出入りする物件ではなく、年に数回程度の利用が多いでしょう。
水光熱の契約があり使用履歴があれば空き家とはみなされません。
たとえば、空き家とみなされる1年の期間内に水道や電気が使用されない場合も管理会社によるメンテナンスがおこなわれていれば問題ありません。
空き家が罰則の対象となる理由
空き家の増加による問題は、犯罪者の隠れ場・放火リスク・衛生面などがあり、罰則を設けなければ増加傾向に歯止めがきかないほど社会に与える影響は大きくなっています。
空き家が罰則の対象となってしまうほど増え続ける理由はおもに以下の3つです。
人口の減少と高齢化社会
日本は住宅ストック数が総世帯数を上回る現象を引き起こし、これが空き家を増やしている一因です。
さらに人口が減れば、買い手や借り手の数も少なくなるため、所有者が売りたい・貸したいと思っていても、それが実現するのは難しいでしょう。
立地や土地の形状などが原因で、更地にしても需要がなく、税金面での負担と合わせ仕方なく現状のまま放置している所有者も多いのです。
また高齢者も増え続けており、老人ホームや介護施設への入所などでそれまで暮らしていた家を離れるケースが目立っています。
そのため空き家が増え、子どもが遠方にいる場合は管理もできないため、放置状態が続いてしまいます。
相続問題
親が亡くなり、その家を子が親の家を相続した場合も空き家となるケースは少なくありません。
ほとんどの場合、子は離れた場所に住んでいて、相続したからといって、わざわざ仕事場や学校に近い今の住まいから遠い実家へ移り住むケースは考えにくいでしょう。
もちろん、管理に関しても同じで、車や電車で数時間かけて定期的に実家へ赴き、管理や維持をするのは大きな負担となります。
劣化や老朽化
人が住まなくなった住宅は劣化や老朽化の進み具合が早いとされます。
また新耐震基準以前の築古物件は、そのままの状態では売却も賃貸利用も見込めないとされ、倒壊のおそれも含んだ危険な空き家としてとくに問題となっている物件です。
3年以上放置している空き家対策と注意点
空き家等対策特別措置法の施行により、これまで立ち入りできなかった部分に行政が介入できるようになりました。
以前は不法侵入になるため立ち入りができませんでしたが、実地調査の他にも住民票や戸籍などでの個人情報の確認ができるようになったのです。
これにより、管理や維持ができていない、倒壊のおそれがあるなどと判断された場合、その空き家を行政が特定空家と指定できるようになりました。
特定空家に指定された場合の罰則
3年以上放置状態の空き家が行政により特定空家に指定された場合、まず指導がおこなわれます。
指導を受けても改善が認められない場合は勧告処分が下され、固定資産税が今よりも最大で6倍、都市計画税は3倍となってしまいます。
勧告後も対策や改善がみられず、放置状態が続けば50万円以下の罰金や強制的な解体がおこなわれる可能性があり、その際の解体費は所有者負担です。
空き家の3年放置を防ぐための対策
所有者が近隣に住んでいて、仕事や生活面で支障がなければ、そこに戻って住めば建物が維持でき、放置対策となります。
ただ、家族の反対や生活スタイルの変化によるストレスなどで少しでも無理が生じる場合は、やめておくほうがよいでしょう。
次の対策には、賃貸物件やシェアハウス向けに貸し出す方法があります。
しかし、リフォームに多額の費用がかかり、入居率によっては赤字となる可能性がある点には注意が必要です。
他にも不動産会社に依頼する方法があり、1つは仲介による売却、もう1つが不動産会社による買取です。
空き家バンクへの登録など、行政の空き家対策制度を活用もできますが、購入・賃貸希望者とのやり取りを所有者がおこなうのが条件になっています。
遠方にお住まいの場合や仕事などで忙しい方は、不動産会社に依頼するほうが、負担を軽減できるでしょう。
最終的には解体して更地にして売りに出す方法もあり、ただ兄弟や親戚などと話し合って合意のうえで進めてください。
合意を得られないときは、物件近くの不動産会社に空き家の維持管理を依頼しましょう。
費用は掛かりますが、所有者責任を果たしているとみなされ、特定空家への指定を回避できます。
空き家対策での注意点
不動産会社を利用する場合は、いくつかの不動産会社を比較して検討するのがおすすめです。
解体をする場合は、騒音や振動、粉塵などの問題がありトラブルとなるケースも少なくありません。
そのため近隣住民へのあいさつは必須で、手土産を持っていくのもいいでしょう。
まとめ
空き家の数は一貫して増え続けており、この先も増加していくのは確実とみられています。
空き家が増える原因は少子高齢化や、相続、また老朽化などがあり、倒壊のおそれがあるものなど危険性が高い家屋は、特定空家の指定を受けるかもしれません。
3年以上空き家を放置しないためには、引越しや売却などの対策があり、特定空家に指定されないよう、早めの対処が必要です。