空き家放置のリスクとは?固定資産税と法律上の処置・打つべき対策を解説2024.07.17
●相続した家に住む予定がなく放置したままでも問題ないのだろうか?
●空き家を放置すると固定資産税が高くなるのは本当なのだろうか?
●遠方に所有する空き家を持て余していて対処に困っている
本記事では、空き家の所有に不安を感じている方へ、そのまま放置した場合のリスクや行政の対応、空き家の売却・賃貸などでリスクを回避する方法までを解説します。
この記事でわかること
●空き家を放置した場合に起こりうるリスク
●放置空き家に対する固定資産税と行政の対応
●放置空き家の問題を解決に導く方法
空き家放置がもたらすリスク
すでにマイホームを持っている人が親の家を相続するなどして、住む予定のない空き家を持て余すケースは珍しくありません。
しかしながら、空き家をそのままにしておくと、老朽化や治安悪化・資産価値の低下・税金の支払い義務など、さまざまな角度からリスクが発生するため注意しましょう。
老朽化による倒壊・事故
人の手が入らない家は長期間閉め切った状態で放置されるため、室内にこもった湿気がカビや腐食の要因となり、どんどん老朽化が進みます。
とくに日本の家は木造が多いため、換気やメンテナンスがおろそかになれば雨漏りやシロアリが発生し、建物が傷んで倒壊や落下による事故を引き起こす原因になります。
台風の際に老朽化した空き家の瓦や外壁が飛んで近隣宅の窓ガラスを割ってしまったり、通行人にけがをさせてしまったりすると、損害賠償問題にも発展しかねません。
近隣住民からのクレーム
定期的に管理されていない家は、庭木や雑草が伸びて塀から飛び出たり、放置されたゴミから悪臭や害虫が発生したりして、近隣住民からのクレーム対象になりがちです。
雑草が生い茂った環境は野良猫・野良犬、野生動物の格好のすみかとなるうえ、不法投棄が常習化するような事態になれば、住環境が悪化して近隣に大きな迷惑がかかります。
落書きなどのいたずらや老朽化によって廃墟のような見た目になってしまうと、周囲の景観を損ない、街の人気や不動産価格にも悪影響を及ぼします。
不法侵入や盗難・放火
窓が割れ、庭がジャングルのように生い茂った状態の空き家は、不審者や犯罪者が住みつき犯罪の温床となるケースも少なくありません。
若者たちのたまり場として悪用されるケースも多く、家の中の物が勝手に使われたり、盗まれたり、無秩序な空間と化していきます。
荒らされ放題の空き家を見て近隣住民が近づかなくなれば、犯罪やいたずらが横行し、さらに無法地帯となって治安悪化を招くでしょう。
また、廃墟と化した空き家は放火のターゲットになりやすく、ゴミや枯れ草に火が燃え移った場合、被害が広範囲に及べば所有者として賠償責任を問われかねません。
空き家の資産価値の低下
資産価値とは新築時の価格や地域相場ではなく、現在の不動産にどれほどの価値があるかを示す評価額となるため、購入時よりも価格が下がるのが一般的です。
空き家を管理せずそのまま放っておくと、急激に進行する建物の劣化や土地の荒廃がマイナス要因となり、空き家の資産価値はどんどん落ちていきます。
とくに、相続した空き家は築年数が長い傾向があり、耐用年数を過ぎた中古住宅は外観・内装・構造も劣化しているため、資産としての価値はさらに落ち込むでしょう。
時間が経過するほど空き家の売却や賃貸も難しくなり、手放そうにも処分しづらくなるのが現状です。
固定資産税の支払い義務
不動産の所有者には税金が課せられますが、空き家も例外ではなく、人が住んでいようといまいと固定資産税の支払い義務が生じます。
固定資産となる土地や家屋を所有している人に課せられるため、すでにマイホームがある場合は、自宅・空き家両方の税金がかかってきます。
資産価値が低い空き家ならさほど大きな負担にはなりませんが、住んでいない家のために無駄に税金がかかり続ける点に変わりありません。
また、空き家の近隣住民から苦情が来た場合、補修や清掃など家の維持管理コストと手間が加算されるため、経済的・精神的な負担がさらに増加します。
行政からの指導
適切に管理されていない空き家は、周辺の景観を損なうばかりか、衛生面・治安の悪化にもつながるおそれがあるため、地域全体の大きな不安要素です。
不安要素を放置すると、さまざまなトラブルを引き起こすリスクが高まり、近隣の建物の資産価値を下げる要因にもなりかねません。
遠方にいるから、住む人がいないからと「知らぬ存ぜぬ」でなにも対処せずにいると、近隣住民を保護する目的で行政から連絡が来る可能性があります。
行政から指導や命令を受けるケースもあり、無視すると固定資産税の負担増や罰金などのペナルティが科されるため、リスクを避けるには相応の管理が必要です。
放置空き家の法律上の処置と固定資産税
増加する空き家問題を背景に、空き家対策特別措置法が施工され、リスクの高い空き家を放置した場合は、行政が所有者に対してさまざまな改善要請をおこないます。
固定資産税にも影響するおそれがあるため、空き家を所有する人は、どのような措置がとられるのか法律上の処置を理解しておきましょう。
年々増加する空き家問題
少子高齢化が深刻化する日本では、空き家が年々増加しており、管理の目が行き届かない空き家が近隣住民に与えるリスクが社会問題化しています。
平成30年住宅・土地統計調査(総務省統計局)では、日本の空き家の数は848万9,000戸と過去最多で、すべての住宅の13.6%を占める結果となりました。
急速な増加が見込まれる空き家問題への対策は急務とされ、その一環として制定された法律が空き家対策特別措置法です。
出典:「平成30年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)
空き家対策特別措置法とは
以前は所有者の許可がなければ立ち入り不可でしたが、空き家対策特別措置法の施行により空き家への立ち入り調査や、戸籍・住民票などから所有者の特定が可能になりました。
空き家対策特別措置法に基づき、放置している空き家が特定空き家に認定されると、所有者は行政から管理の改善を求める指導を受けます。
特定空き家に認定される具体的な例は、倒壊などの危険性がある・悪臭や害虫など衛生上問題がある・周辺の景観や生活環境を乱すなどの状態に1つでもあてはまる場合です。
特定空き家に対する行政の対応
特定空き家に認定されると、行政から助言・指導、勧告、命令、代執行と段階的に改善要請が求められ、段階を経るごとに要請の強度が増します。
いきなり空き家の解体とはならなくても、助言や指導の要請に応じなければ勧告が下され、固定資産税の特例が適用されなくなります。
さらに命令にも従わなければ罰金が科され、最終的には行政が強制的に空き家を取り壊す代執行の対象となり、費用は所有者に請求されるため要注意です。
特定空き家に科される罰則
命令は行政から受ける要請のなかでは最終段階となる厳しい通告です。
特定空き家として命令が下されたにもかかわらず、所有者が指示を無視し続けた場合は、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
放置されたままだと空き家の崩壊や火災の原因になるなど、近隣住民の生活環境の安全が確保できないおそれがあるためです。
代執行まで進むとかかった費用は所有者から回収されるため、放置空き家の金銭的リスクは高まるばかりで多大な不利益を被る点に留意しておきましょう。
空き家の固定資産税が高くなるケース
特定空き家として勧告を受けると、固定資産税の優遇制度が適用除外となり、一定の調整措置があるものの、減税されなくなるため固定資産税の負担が大幅に増えます。
居住のみが目的の住宅は、通常200㎡以下の場合で固定資産税が6分の1に軽減される優遇制度が適用されますが、勧告を受けた空き家はその特例が無効になるためです。
特定空き家の認定前と比較すると、固定資産税が最大6倍で計算されるため、勧告より早い段階で行政の指導に従ったほうが賢明です。
放置空き家の対策
放置空き家のリスクを避けるには、特定空き家の認定条件に該当させないよう、建物の状態や所有者の事情を踏まえた対策を講じなければいけません。
状態や立地次第では収益を生み出す可能性もあるため、以下の放置空き家問題を回避する方法をチェックして、自身に合った対策を検討してみましょう。
空き家を売却する
空き家の存在に振り回されたくない、完全に空き家問題を解決したい人には、売却がおすすめです。
管理責任をともなう近隣住民とのトラブルにも悩まされずに済みます。
老朽化した空き家は古家付き土地として売買すれば、解体やリフォームの負担なく、そのままの状態で取引できます。
空き家を売却して手放してしまえば、定期的にメンテナンスをする必要も、いつ壊れるかわからない空き家のために大きなストレスを抱える心配もありません。
かかった費用を上回る価格で売れた場合は売却益が手元に残るうえに、固定資産税などの納税義務からも開放されるため、経済的・精神的負担が圧倒的に軽くなります。
空き家を賃貸物件にする
「思い出いっぱいの家を手放したくない」と空き家の売却を避けたい人は、賃貸物件として貸し出すのも1つの手段です。
家屋は人の手が入らなければ劣化が進むため、家を長持ちさせるには人が住み続ける必要がありますが、賃貸物件にすればその条件をクリアできます。
家賃収入も得られて一石二鳥の対策ながら、入居者との賃貸契約や物件の管理対応など、ある程度の手間がかかる点は理解しておく必要があるでしょう。
空き家を解体して土地活用する
老朽化がひどい空き家を所有する人や、土地活用して継続的に収益を得たい人には、空き家を解体して土地活用する方法がおすすめです。
思い切って空き家を解体して更地にすれば、特定空き家認定につながる倒壊の危険性や衛生面・環境面のリスクを解決できます。
都市部や観光地など好立地であれば、貸駐車場として収益が見込めたり、事業用用地としての利用が見込めたりするなど、さまざまな活用方法があります。
空き家に住む
空き家問題をできるだけ早く解決したいなら、所有者が空き家に住む方法が手っ取り早いでしょう。
実際に人が住めば空き家も生き返り、日常的にメンテナンスをおこなえるので、特定空き家に認定されるリスクを避けられます。
ただし、あまりに老朽化が激しい場合はリフォームが必要になったり、空き家が遠方にある場合は転居する必要があったりするなど、環境にあわせた生活の再設計が必要です。
あるいは、自宅とは別にセカンドハウスとして活用する方法も注目を浴びており、固定資産税の優遇制度が適応になるのも大きな魅力です。
まとめ
放置空き家は、老朽化による倒壊や衛生・治安の悪化、周辺環境への悪影響が生じるおそれがあります。
特定空き家に指定されると固定資産税の増加や、命令に違反した場合の罰金などのリスクも伴います。
売却・賃貸・解体などの対策を講じれば収益を見込めるケースもあるため、親族間で空き家をどうするのか話し合い、それぞれの事情にあわせて検討してみてください。