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空き家を相続放棄しても管理義務は消えない?
相続放棄の注意点も解説
2024.03.04

●空き家を相続放棄しても管理義務が消えないというのは本当?
●管理義務が残った状態で空き家を放置したらどうなる?
●空き家を相続放棄する際の注意点は?

相続する空き家が遠隔地にあるなどの理由で、管理や維持が困難なケースもあるでしょう。
相続放棄を活用すれば相続せずに済みますが、空き家の管理義務だけ残ってしまうケースがあるのをご存知でしょうか?

この記事では、空き家を相続放棄した際の管理義務についてや、管理義務が残ったまま空き家を放置した場合のリスク、相続放棄をする際の注意点を解説します。

また、相続放棄以外の空き家の対処法についてもご説明しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事でわかること

●空き家の相続放棄と管理義務の関係
●空き家を相続放棄する際の注意点
●相続放棄以外の空き家の対処法

1.空き家を相続放棄しても管理義務が消えない可能性がある

結論からお伝えすると、空き家を相続放棄すれば所有権を放棄できますが、場合によっては空き家の管理義務は消えず、残ってしまう可能性があるので注意が必要です。

一体なぜ、相続放棄をしたにも関わらず管理義務が残ってしまうのでしょう?
仮に管理義務が残ったとして、いつまで空き家を管理し続けなければならないのでしょうか?

まずは相続放棄の基本や、管理義務との関係、管理義務はいつまで残り続けるのか、などを解説します。

そもそも相続放棄とは?

相続放棄とは、自分に与えられた被相続人の財産や権利、義務などの相続権を一切を放棄し、他の相続人へ譲渡するための法的な手段です。
相続放棄には期限があり、希望する際は遺産相続が開始された時点から3ヶ月以内に手続きしなければなりません。

そもそも遺産とは、金銭的な価値のあるプラスの資産だけでなく、借金などの負債(マイナスの資産)も含まれています。
仮にプラスの資産よりもマイナスの資産のほうが多かった場合、相続によって大きな不利益を被ってしまいます。
このような場合、相続放棄によって相続権を放棄すれば、マイナスの資産を受け継ぐ必要がなくなります。

ただし、プラスの資産も受け継げなくなるので注意してください。
相続によって不要な空き家を受け継ぐにしても、すでに住む家がある、遠方にあるなどの理由で管理・維持が難しい、相続を拒否したい、とお悩みの方が増えています。
そのような場合に相続放棄を活用すれば、空き家の相続権を合法的に放棄でき、管理・維持をする義務もなくなり、負担から免れられる、というわけです。

空き家の相続放棄と管理義務の関係

残念ながら、相続放棄をすれば絶対に空き家の管理義務もなくなる、とは限りません。
なぜなら民法によって、相続放棄した時点でその財産を占有していた場合、その財産を引き渡すまで管理し続けなければならない、と定められているからです。

たとえば実家で両親と同居していた方が、相続放棄によって実家の相続権を放棄した場合は、実家の管理義務が残ってしまいます。
その家に実際に住んでいる状況が、占有とみなされるためです。
このように、相続放棄によって空き家の所有権を放棄したとしても、状況によっては管理義務だけが残り続けてしまうケースがあります。
管理義務が残っている間は、その空き家に関する責任は管理者が負わなければなりません。

もしも空き家の壁の一部が崩れて通行人に怪我を負わせてしまったら、責任を問われてしまうでしょう。
その空き家に固定資産税が発生した場合、管理者が納税しなければなりません。
このような責任やリスクだけが残ってしまわないよう、相続放棄する場合には、管理義務が残らないかを確認しておく必要があるでしょう。

空き家の相続放棄によって管理義務が残ってしまうパターンの例

すでにお伝えした通り、相続放棄の時点でその財産を占有している状態にあるかがポイントです。

実際に空き家に住んでいる場合や、空き家をなにかに活用している場合、あるいは管理していると見なされる場合に、管理義務が発生してしまいます。
具体的には、相続放棄時点でその家に住んでいた場合や、その空き家を物置代わりとして活用していた場合は、管理義務が発生すると考えてよいでしょう。

実際に住んでいなくとも、体の自由が効かなくなった親に代わって家の管理をしていた、というような場合も占有と見なされ、管理義務が発生してしまう可能性があるので注意してください。

なお、占有の解釈については明確化されておらず、必ずしも断言はできません。
実際に相続放棄を検討する際は、弁護士などの法律の専門家に相談してみたほうが良いでしょう。

空き家の管理義務はいつまで残り続ける?

空き家の管理義務は、その空き家を別の相続人が相続するか、相続財産清算人(相続財産管理人)に引き渡されるまで続きます。
たとえば相続放棄したものの、その1ヶ月後に別の相続人が空き家を相続した場合、管理義務が残り続ける期間は1ヶ月です。

自分以外に誰も相続する人がいなかった場合は、相続財産清算人が決まるまで管理し続ける必要があります。

相続財産清算人とは、相続人が1人もいなかった場合や、相続人全員が相続放棄をした場合に、代わって遺産を処理し、国の財産として精算する役割を担う人です。
関係者の申立てを受けて、家庭裁判所によって選ばれます。
相続財産清算人が決まるまでの期間は、申立てから最低でも6ヶ月かかるので注意してください。

2.管理義務が残った空き家を放置したらどうなる?

家を相続しても管理が難しいからこそ相続放棄したにも関わらず、一時的とはいえ管理義務が残ってしまったら、どうすればいいか困ってしまう方が多いのではないでしょうか。

そうなってしまった場合、もし管理義務を無視して空き家を放置し続けたとしたら、どうなってしまうのでしょう?

ここからは、管理義務が残った状態で空き家を放置してしまった場合のリスクを解説します。

近隣住民に迷惑がかかる可能性がある

空き家は手入れせず放置したままでいると、非常に速い速度で劣化が進んでしまいがちです。
締め切ったままなので風通しがなく、湿気が抜けないために壁や床、屋根が痛みやすくなり、カビも発生しやすくなります。
屋根の痛みが進めば雨漏りが発生してしまい、家の中に水たまりができ、さらに痛みが進んでしまうでしょう。
シロアリなど害虫も発生しやすく、場合によっては大量発生してしまうかもしれません。
手入れされない庭も害虫の発生源になりやすく、周辺の家にまで虫の被害が広がってしまう可能性があります。
壁がもろくなれば、崩れてしまう可能性も出てくるでしょう。
崩れた壁で通行人が怪我をしてしまえば、責任問題に発展してしまいます。

このように放置された空き家は、近隣住民にさまざまな迷惑を掛けてしまうだけでなく、場合によっては大きなトラブルにまで発展してしまいかねません。

犯罪に利用されてしまう可能性がある

放置された空き家は、犯罪に利用されてしまうなど、周辺地域の治安に悪影響を与えてしまう可能性があり、非常にリスクが大きいです。

放置され、人の出入りがないと人目でわかる空き家には人の目が届きにくいため、ホームレスが無断で住み着いてしまうケースがあるほか、違法薬物などの不法な取引の現場として使われてしまう、犯罪者の隠れ家として利用されてしまう、といったケースも実際に起っています。
荒れ放題で、ゴミなどの可燃物が多い空き家は、放火のターゲットにされてしまう可能性も高いです。
誰も住んでいないため発見が遅れやすく、その分だけ燃え広がってしまいやすいでしょう。
場合によっては、隣家にまで延焼してしまうかもしれません。

罰金や罰則が課せられる

近年は人口減少にともない空き家も急激に増え続けており、空き家対策が行政の大きな課題の1つとなっています。

その関係で2015年に空き家対策特別措置法が施行され、放置されて危険な状態になっている空き家に対する罰則が強化されました。
空き家の放置を続けた結果、庭の木々や雑草が生い茂る、家の外壁にひび割れが見られる、敷地がゴミだらけになっているなど、管理に問題があると認められる場合、特定空き家に指定される可能性があります。

特定空き家の持ち主には自治体から助言・指導が入り、6倍の固定資産税が課せられてしまう可能性があり、リスクが大きいです。
それでも放置を続けてしまうと、最悪は行政によって強制的に家が解体されてしまいます。

なお、その際の解体費用は所有者に請求されるうえ、支払えない場合は財産を差し押さえられてしまうので、大変危険です。

3.空き家の相続放棄をする際の注意点

空き家の相続放棄をおこなう際は、いくつか注意していただきたい点があります。
相続放棄をスムーズに進めるためにも、ぜひ事前に確認しておいてください。

相続放棄には期限がある

先ほども軽くお伝えしましたが、相続放棄には期限が設けられており、相続開始を知った時点から3ヶ月以内に申請しなければなりません。

相続開始には以下の通り、複数の意味があります。
ご自身の状況によって相続開始と見なされる日が異なる場合があるので、注意してください。

●被相続人が亡くなった日
●被相続人が亡くなったと知った日
●自分よりも相続順位が高い相続人が相続放棄をしたと知った日

期限を過ぎてしまったら、相続放棄ができなくなります。
理由があって期限に間に合わない場合には期間延長の申請も可能ですが、必ず認められるとは限りません。
相続放棄を希望する際は、できるだけ早めに手続きを進めるよう心がけましょう。

相続放棄自体にも費用がかかってしまう可能性がある

相続放棄によって空き家の管理コストを節約できる可能性はありますが、場合によっては相続放棄自体に大きな費用がかかってしまう可能性があるので、注意してください。
相続放棄は法的な手続きですので、弁護士などの専門家に依頼するのが基本となります。
弁護士への依頼費用はさまざまですが、5万円以上かかるケースが多いでしょう。

また、相続人のすべてが相続放棄してしまった場合や、相続人が自分1人しかいない場合には、相続財産清算人を選任しなければならなくなります。
相続財産清算人の選任にかかる費用は家庭裁判所の判断にもよりますが、合計で100万円以上になるケースもあるので、注意してください。

単純承認に注意

相続放棄をしたにも関わらず、相続する予定だった財産の一部を無断で処分してしまうと単純承認したとみなされ、相続放棄できなくなってしまう可能性があります。

相続の単純承認とは、遺産相続の承認です。
単純承認したと認められれば、特別な手続きなしにプラスの資産もマイナスの資産も、すべて相続されてしまいます。
空き家も自動的に相続されてしまうので、注意してください。

たとえば、空き家の中にあった貴金属類の一部を売却してしまうと、遺産を自分のものとする意思があると捉えられるため、単純承認したと見なされてしまいます。
相続放棄が成立するまでは、遺産には一切手を付けないようにしましょう。

4.相続放棄以外の空き家の対処法

空き家の管理が難しいからといって、必ずしも相続放棄が最善の選択とは限りません。
特に遺産にプラスの資産が多い場合は、空き家のためだけに相続を諦めなければならなくなります。

そこでここからは、相続放棄以外の空き家の対処法について解説します。
選択肢を広げるためにも、ぜひ参考にしてみてください。

寄付する

とにかく処分したい場合や、必要としている方に有効活用してもらいたい場合には、自治体や法人に寄付する方法があります。

自治体への寄付は役所で、法人へは各団体の窓口から相談が可能です。

ただし、全ての自治体が空き家の寄付を受け付けているわけではありません。
空き家の寄付制度が設けられている自治体でも、基本的には利用価値があると認められる物件の寄付のみを受け付けているため、さまざまな条件が設けられており、ハードルが高いので注意してください。

法人に寄付する場合は、譲渡所得税が発生する可能性があります。
所有権移転にともなう登記費用も必要になるので、どの程度の負担が発生するのか、あらかじめ確認してから決めたほうが良いでしょう。

希望する近隣住民に譲り渡すのも、選択肢の1つです。
隣家であれば土地を広げられるため、特に増築や建て替えを検討しているような場合には、話をしてみる価値があるでしょう。
受け渡しの際には贈与税が発生するので、注意してください。

国に引き取ってもらう

2023年4月から施行された相続土地国庫帰属制度は、相続した土地が一定の要件を満たしている場合に、国がその土地を引き取ってくれる制度です。
その土地を管轄する法務局や地方法務局に申請し、書面審査や実地調査を経て、国庫帰属が承認されれば引き取ってもらえます。

ただし、引き取ってくれるのはあくまで土地のみであるため、建物は事前に解体しておかなければならないほか、負担金(宅地の場合で原則20万円)を納める必要があるなど、金銭的な負担は決して小さくありません。
申請しても必ず引き取ってもらえるとは限らない点も含め、利用の際は注意してください。

売却する

いったん空き家を相続したうえで、土地ごと売却するのも有効な処分方法の1つです。

空き家のまま売却できれば余計な手間も費用もかかりませんが、築年数が古く価値が低いほど買い手が見つかりにくく、解体費用が必要になる分だけ価格も低くなってしまう可能性があるので、注意してください。
立地条件が良いなど、土地そのものの需要が見込める場合は、建物を解体して更地にした状態のほうが売却しやすくなる可能性があります。

どうしても買い手が見つからない場合は、不動産会社に直接買い取ってもらう方法もありますので、まずは相談してみましょう。

賃貸などに活用する

駅近など立地条件が良く賃貸需要が高い場合は、賃貸物件として活用するのも良い方法です。
リフォームやリノベーションをおこなえば、一戸建ての賃貸物件として貸し出し、定期的な収入源として活用できるかもしれません。

一戸建ての賃貸物件はファミリー層に需要があり、比較的長く住んでもらいやすいです。
賃貸にするのが難しければ、家を取り壊して駐車場にするのも良いでしょう。

収入にはなりませんが、リフォームや建て替えをして自分で住んでしまうのも、立派な活用法の1つです。

5.まとめ

空き家の相続放棄をしても、一時的に管理義務が残ってしまう可能性があります。
管理義務が発生した状態のまま空き家を放置してしまうと、さまざまなリスクが発生する可能性があるので注意してください。
空き家の対処法は売却や寄付など、相続放棄以外にもいくつかありますので、他の選択肢も含めてベストな空き家の扱いを検討してみるのがおすすめです。



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