空き家の固定資産税が6倍に?
仕組みや対策をわかりやすく解説2024.03.04
●空き家の固定資産税が6倍になると聞いたが、本当だろうか?
●空き家の固定資産税が6倍になるのはいつ?
●空き家の固定資産税が6倍になるのを避ける方法は?
空き家を管理せずに放置し続けていると、固定資産税が6倍になってしまう可能性があるのをご存知でしょうか?
この記事では、空き家の固定資産税が6倍になる話に不安を感じている方に向けて、空き家の固定資産税が6倍になる仕組みや条件を、わかりやすく解説します。
また、固定資産税が6倍になるのを避ける方法についてもご説明しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
●空き家の固定資産税が6倍になる仕組み
●空き家の固定資産税が6倍になる条件とタイミング
●空き家の固定資産税6倍を避ける方法
1. なぜ空き家の固定資産税が6倍に?固定資産税の基本と経緯を解説
相続した空き家の扱いに困ってしまい、放置してしまってはいないでしょうか?
じつは空き家のまま放置し続けてしまうと、固定資産税が6倍になってしまう可能性があります。
なぜ空き家の固定資産税が6倍になってしまうのか、まずは空き家の固定資産税に関する基本と、経緯を解説します。
空き家を持っているだけでも税金がかかる
所有している家や土地には、例外なく固定資産税が課せられます。
それは無人の空き家でも変わりません。
また、その家や土地がある地域によっては、固定資産税に加えて都市計画税も課されます。
都市計画税とは、地域の都市化を進めるために必要な事業の費用として集められる税金です。
その年の1月1日の時点で、市街化区域と呼ばれる地域内の土地・建物を所有している全ての人が課税対象となります。
それぞれの納税額の計算方法は、以下のとおりです。
税金の種類 | 納税額 |
固定資産税 | 課税標準額(固定資産税評価額)の1.4% |
都市計画税 | 課税標準額(固定資産税評価額)の最大0.3%(自治体による) |
この2種類の税金は、土地と建物それぞれ別にかかるので注意してください。
たとえ空き家であっても建物があれば、土地と建物に対して税金が課せられますし、何も建っていなければ土地にだけ税金が課せられます。
課税標準額とは、市町村が算出する不動産の価値です。
総務省によって3年に1回のペースで更新されている固定資産評価基準に基づいて算出され、固定資産税の計算に使用されます。
あくまでも計算に使用される金額であるため、実際の販売価格とは異なる可能性がある点に注意してください。
住宅用地は固定資産税が軽減される
それぞれの土地には利用目的ごとに、土地の種類が設定されています。
そのうち住宅用の土地(住宅用地)に関しては、固定資産税を減額する特例措置(住宅用地の特例)が適用されています。
つまり私たちが納めている固定資産税は、この住宅用地の特例によって最大で6分の1に、都市計画税は最大で3分の1にまで減額されているのです。
区分 | 土地の利用状況と 面積区分 |
固定資産税 課税標準額 |
都市計画税 課税標準額 |
小規模住宅用地 | 住宅やアパート等の敷地の 200㎡以下の部分 |
6分の1 | 3分の1 |
一般住宅用地 | 住宅やアパート等の敷地の200㎡を超える部分 | 3分の1 | 3分の2 |
なお住宅用地の特例は、実際に家が建っている住宅用地にのみ適用されます。
つまり、空き家になったからといって家を取り壊してしまうと特例の対象外となってしまい、最大で通常の6倍の固定資産税と、3倍の都市計画税が課せられてしまうのです。
増え続ける空き家が社会問題に
住宅用地の特例により、空き家になっても取り壊さずに放置していたほうが固定資産税が増えないため、節税対策になります。
そのため、空き家がそのまま残されるケースが多くなってしまいました。
また、空き家の管理は時間とお金がかかるため、手入れされず放置されるがままの空き家が増えており、社会問題にまで発展してしまっています。
このような深刻な事態を受け、2015年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。
周囲に悪影響を与える危険な空き家は「特定空き家」に指定され、自治体の行政代執行によって取り壊せるようになったのです。
またそれにともない、特定空き家に指定されて自治体からの勧告を受けた場合には、住宅用地の特例の対象から外れる(固定資産税が6倍になる)、と定められました。
固定資産税が6倍になる空き家の条件が拡大
さらに2023年12月13日、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が施行されました。
この法改正では、新たに「管理不全空き家」の区分が追加されています。
管理不全空き家とは、このまま放置され続けると、やがて特定空き家になってしまう可能性が高いと判断できる空き家を指します。
具体的には、建物の一部が壊れている、雑草が生い茂った状態、などの空き家が該当します。
また、住宅用地の特例の対象から外れてしまう空き家の条件が拡大し、管理不全空き家に指定されて勧告を受けた場合も、固定資産税が6倍になってしまうようになりました。
つまりこの法改正により、朽ちた空き家を放置する意味がなくなったのです。
2. 空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?仕組みを解説
ここまでお伝えした通り、空き家を管理せずに放置し続けてしまうと、固定資産税はやがて6倍になってしまいます。
では具体的に、固定資産税はいつから増額されてしまうのでしょうか?
ここからは、空き家の固定資産税が6倍になる具体的なタイミングと、条件を解説します。
管理不全空き家と判定された翌年から6倍に
空き家の固定資産税が6倍になるのは、その空き家が管理不全空き家と判定され、勧告を受けた翌年の1月1日です。
固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点での固定資産税評価額を基準として、自治体によって算出されます。
このうち条件を満たした住宅用地と建物について、固定資産税評価額を最大で6分の1に減額するのが住宅用地の特例です。
土地と建物が管理不全空き家に指定されたうえ、勧告を受けていた場合は、この住宅用地の特例が適用されません。
したがって固定資産税が6倍になるのは、年内に管理不全空き家と判定され、勧告を受けた状態のまま翌年の1月1日を迎えたタイミング、となります。
つまり管理不全空き家に指定されて勧告を受けても、その年のうちに状況を改善し、管理不全空き家の指定が解除されれば固定資産税は6倍にならない、というわけです。
空き家の固定資産税が6倍になるまでの流れ
続いて、空き家の固定資産税が6倍になってしまうまでの具体的な流れを確認してみましょう。
①空き家が放置され、劣化が進む
②空き家の状態が管理不全空き家の判定基準を満たす
③自治体の調査により、管理不全空き家と判定される
④状況改善に向けて、自治体が指導をおこなう
⑤状況の改善が見られない場合、自治体は勧告をおこなう
⑥勧告により、住宅用地の特例から除外される
⑦状況が改善されないまま1月1日を迎える
空き家が放置され劣化が進み、やがて基準を満たしてしまうと、空き家は管理不全空き家と判定されてしまいます。
自治体は空き家の所有者に対し、状況を改善するための指導をおこないます。
管理不全空き家に指定されても、指導を受けただけでは固定資産税は変わりません。
したがってこのまま1月1日を迎えれば、固定資産税は通常通りです。
ですが指導の結果改善が見られなかった場合、続いて自治体は所有者に対して勧告をおこないます。
この勧告が、住宅用地の特例から除外されるタイミングです。
住宅用地の特例から除外されている状態で1月1日を迎えてしまった場合、6倍の固定資産税が課せられます。
もちろん年内に状況を改善し、管理不全空き家の指定が解除されれば、通常通りの固定資産税です。
管理不全空き家と判定される基準
管理不全空き家の判定は各市区町村に委ねられていますが、各自治体で共通した基準はまだ設けられていません。
したがって一概に、管理不全空き家と見なされる条件を示すのは難しいです。
そこで今回は判定基準の一例として、和歌山県橋本市の判断基準の一部をご紹介します。
①屋根の変形や外装材の剥落、脱落が見られる
②雨漏りなど、雨水が浸入した痕跡が見られる
③バルコニー庇(ひさし)のような、突出物分の支柱が破損している、または腐食している
④清掃されておらず、敷地内にたまったゴミが周囲に飛散してしまう可能性がある
⑤害虫や害獣の発生源になっている
⑥腐敗したゴミがたまっている
参考元:橋本市『計画0-5.管理不全空家等の定義』
明らかに空き家の状態が悪くなっており、このまま放置が続けば間違いなく特定空き家になるだろうと予想できる場合や、明らかに景観を損なっていると判断できる場合に判定される、と考えて良いでしょう。
管理不全空き家に判定された後はどうなる?
管理不全空き家と判定された場合、自治体は空き家の所有者に対して、これ以上放置を続けて特定空き家にならないよう、改善に必要な助言や指導、勧告をおこないます。
自治体の指導に従って空き家の状態を改善し、自治体によって安全な空き家であると確認されれば、管理不全空き家の指定は無事解除となり、問題ありません。
しかし勧告に従わず状況が悪化してしまうと、特定空き家と判定されてしまいます。
特定空き家判定後、自治体は再び所有者に対して助言・指導をおこないます。
この段階で指導に従い、空き家の状態を改善できれば、やはり問題ありません。
ですが改善がみられない場合は勧告、それでも改善されなければ命令と、段階的に強制力の高い措置が取られ、最終的には行政代執行(強制執行)が実施されてしまいます。
行政代執行とは、自治体による強制的な空き家の解体です。
解体するのは行政ですが、本来解体をおこなうべきは所有者であるべきなので、解体費用はすべて所有者に請求されます。
無料で解体してもらえるわけではないので、万が一の際は行政代執行がおこなわれる前に、必ず対処するよう心がけましょう。
3. 空き家の固定資産税6倍を避ける方法
管理不全空き家に判定されても勧告さえ受けなければ、固定資産税は6倍にはなりません。
とはいえ勧告を避けようとするよりも、管理不全空き家の判定自体を避けられれば、より確実に回避できます。
ですが具体的に、どのようにして判定を避ければよいのでしょうか?
ここからは、管理不全空き家にならないための方法を紹介します。
売却する
空き家となっている土地・建物を手放してしまえば、管理責任はなくなります。
もちろん空き家の管理費用も、固定資産税を納める必要もなくなるため、経済的な負担も軽くなります。
活用する予定がなければ、思い切って売却を検討したほうが良いでしょう。
相続した空き家を売却する際は、3,000万円の特別控除が利用できます。
売却益が出ても3,000万円までは非課税になりますので、ぜひ積極的に活用してください。
空き家はできるだけ状態が良いうちに売り出すのがおすすめです。
基本的に建物は、築年数が古いほど資産としての価値が少なくなります。
状態の悪い空き家、特に管理不全空き家や特定空き家に指定されかねないほど状態が悪い場合、建物の価値はゼロに等しいです。
土地そのものに需要がない限り、そのままの状態で買い手を見つけるのは困難でしょう。
建物に価値がなければ解体せざるを得ません。
売主が解体しなければ、買主は解体の手間と負担を強いられます。
あらかじめ解体した状態で土地だけを売却するか、解体する負担分だけ売却価格を下げるなどの対応をしない限り、買い手から敬遠されてしまうでしょう。
仲介による売却が難しい場合は、不動産会社に買取を依頼する方法もあります。
市場価格より売却価格は低くなってしまいますが、買い取ってもらえるまでの期間が短く済むため、手早く売却したい場合におすすめの選択肢です。
空き家にせず活用する
空き家を手放すのに抵抗がある場合や、後々住む予定がある場合などは、空き家にせずに活用する方向で検討したほうが良いでしょう。
以下は、空き家の主な活用方法です。
●自分で住む
●賃貸物件として活用する
●駐車場など別の形で活用する
●自治体に貸し出す
それぞれ詳しく解説します。
自分で住む
すでにマイホームを所有している場合には難しいですが、賃貸物件に住んでいる状態で、引っ越しが容易であるなら、思い切って空き家に住んでしまうのも方法の1つです。
築年数が古い場合でも、必要に応じて修繕やリフォームを施せば、住心地も改善できます。
ただし工事費用が高額になってしまう可能性もあるので、売却などの他の選択肢と比較しつつ、判断したほうが良いでしょう。
すぐに移り住むのが難しい場合は、一時的に賃貸に出す、管理を委託する、などの方法もあります。
賃貸物件として活用する
空き家を修繕し、賃貸物件として貸し出すのも良い方法です。
近年は一戸建て賃貸物件も増えてきており、ファミリー層に人気があります。
借り手が見つかれば、安定的に家賃収入を得続けられるでしょう。
一戸建てのまま、シェアハウスとして複数人に貸し出す方法もあります。
1人あたりの家賃は安めになりますが、貸し出せる人数が多いほど家賃収入も安定しやすい点がメリットです。
賃貸物件として活用する場合も管理が必要になりますが、空き家が遠方にあり難しい場合は、不動産会社への管理委託の依頼を検討してみてください。
費用はかかりますが物件管理を一括で任せられるため、ほったらかしのまま家賃収入が得られます。
自主管理をした場合にかかる費用(移動費など)をシミュレーションしたうえで、どちらが得か比較検討してみるのがおすすめです。
駐車場など別の形で活用する
空き家を解体したうえで、駐車場やコインパーキングなどの別の形に変えて活用する方法もあります。
特に駐車場は新たに建物を建てる必要がなく、空き家を解体してしまえば少ない費用で始められるため、一定の需要が見込まれる場合には有効な活用方法です。
駐車場運営会社に土地を貸す形にしてしまえば管理の手間はかからないうえ、設備の費用も運営会社に負担してもらえます。
住宅用地ではなくなってしまうため、固定資産税の特例措置が受けられなくなるデメリットがあるので、利益を出せる見込みがあるのか調査したうえで、慎重に判断したほうが良いでしょう。
自治体などに寄付して活用してもらう
自分で活用するのが難しい場合には、自治体に寄付して活用してもらう方法もあります。
自治体によっては、空き家の寄付を受け付ける制度を設けている場合があるので、寄付を希望する場合は相談をしてみましょう。
ただし基本的に自治体は、利用価値があると判断できる土地の寄付しか受け付けていないため、非常にさまざまな条件が課せられています。
土地や建物から得られる固定資産税や都市計画税は、地方自治体にとって非常に重要な財源です。
安易に寄付を受け付けてしまうと、自治体はこの重要な財源を失ってしまいかねません。
そのため基本的に利用価値が認められない土地に関しては、寄付を申し出ても断られてしまう可能性が高い、と考えておいたほうが良いでしょう。
相続した空き家であれば、2023年から開始された相続土地国庫帰属制度を利用して、国に引き取ってもらう方法もあります。
あらかじめ建物を解体したうえで、一定の負担金を支払う必要がありますが、一定の要件を満たしている土地であれば引き渡しが可能です。
空き家のまま管理する
売却したくない場合や活用が難しい場合は、管理不全空き家に判定されないよう管理・維持していく必要があります。
管理するうえでポイントになるのは、以下の点です。
建物が倒壊する危険がない
周囲の景観に悪影響を与えない
害虫の発生源や、害獣の住処にならない
犯罪や放火に利用されない
どのような方法で管理するにしても、屋内外の清掃や点検が定期的に必要になるので、手間や時間、費用をかける必要があります。
近隣との無用なトラブルを防ぐためにも、近所への挨拶も必要になるでしょう。
具体的な方法はいくつか考えられますが、自分で管理するか、自分以外に管理を依頼するか、が基本となります。
空き家管理を代行してくれるサービスもあるので、空き家が遠隔地にある場合や、管理する時間が取れない場合には、積極的に利用を検討してみましょう。
自分で管理する
自分で管理する場合、管理にかかる手間や時間、移動などの費用に注意してください。
費用については、空き家が自宅に近い場所にあるほど負担が小さくなりますが、遠方にある場合には無視できない負担になってしまう可能性があります。
遠すぎる場合には別途宿泊費用が必要になるため、業者に依頼したほうが安く済むかもしれません。
空き家の管理は月に1回程度は必要なので、最低でも年間で12回通う必要があります。
どの程度の費用が必要になりそうか、比較のためにも計算しておくと良いでしょう。
建物の管理は清掃や換気だけでなく、異常や破損が見られないか一通り確認する必要があります。
水道は定期的に水を流さないと排水トラップ内の水が乾いてしまい、悪臭の原因になるので、忘れずに通水しておきましょう。
身内に管理を依頼する
空き家の近くに親戚などが住んでいる場合、管理を依頼するのも方法の1つです。
ただし空き家の管理は決して簡単な作業とは言えないので、長期間任せたい場合には身内とはいえ、報酬を用意しておいたほうが良いでしょう。
専門家に任せるわけではないので、必ずしも的確に管理できるとは限らない点に注意してください。
管理してほしい内容をあらかじめリスト化して伝えておくなど、必要に応じて柔軟に対応しましょう。
空き家に関する問題の責任は、あくまでも所有者であるご自身にある点を、忘れないようにしてください。
業者に管理を依頼する
毎月一定の費用が発生しますが、手間も時間もかからない管理方法です。
専門の業者に依頼をすれば、自分や親戚が管理するよりも的確に対応してもらえるでしょう。
具体的なサービス内容や料金は、業者やプランによって違いがあるものの、月に1万円前後がおおよその費用相場となっています。
比較的手頃な料金で経験豊富なプロに空き家の管理を任せられるのは、それだけでも大きなメリットと言えるでしょう。
業者を決める際は料金やサービス内容を比較検討し、納得できる業者を選ぶのが大切です。
あらかじめ絶対に利用したいサービスを絞り込んでおくと、比較ポイントが明確になりやすいのでおすすめです。
自治体の指導に従う
管理不全空き家と判定され、勧告を受けてしまった場合でも、固定資産税の課税額が決定される1月1日までに改善できれば、固定資産税は増えません。
ただし、空き家を安全な状態にまで回復する必要があるため、多額の費用がかかる点に注意が必要です。
改善にもある程度の時間がかかるため、管理不全空き家になってしまったタイミングによっては、年内の改善が難しいケースもあります。
そのため繰り返しになりますが、管理不全空き家と判定されないよう、できるだけ早い段階から適切な管理・維持を心がけておくのが理想です。
4. まとめ
空き家にも固定資産税が課せられますが、放置され劣化が進み危険な状態になってしまった場合、固定資産税が最大で6倍になってしまう可能性があります。
これを避けるには周囲の迷惑にならないよう、普段から適切に空き家を管理・維持しなければなりません。
管理が難しい場合は、空き家を売却を始め、賃貸物件や駐車場などの形で活用する、専門業者に管理を依頼する、などの対応が必要です。