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空き家の維持費はどのくらい?
費用の内訳や維持する際のポイント・注意点を解説
2024.03.04

空き家の維持費は、年間でどのくらいかかる?
維持費の節約は可能?
維持する以外にはどんな選択肢がある?

この記事では、空き家の維持費がどのくらいかかるのか心配している方に向けて、空き家の維持費の目安や内訳、維持する際のポイントや注意点、維持以外の選択肢を解説します。

この記事でわかること
空き家の年間維持費の目安と内訳
空き家を維持する際のポイントや注意点
空き家を維持する以外の選択肢

1.空き家の維持費はどのくらい?内訳を解説

1年間にかかる空き家の維持費は、空き家の広さや掃除などのメンテナンスの頻度、建物の状態などによって変化します。
ですが、年間で10万円以上かかってしまうケースも決して珍しくありません。

まずは例として、以下の条件の庭付き一戸建ての空き家を想定し、具体的な年間維持費をまとめてみましょう。

建物の評価額:1,000万円
土地の評価額:1,000万円
建物の床面積:200㎡
庭の広さ  :50㎡

維持費内訳 費用(年) 備考
固定資産税 約16万円 住宅用地の特例を適用
都市計画税 約4万円 住宅用地の特例を適用
水道光熱費 2.2万円 電気15A、水道20mmで、いずれも最低料金の場合
火災保険料 4万円 概算
修繕費用 10万円 概算
管理サービス利用料 9万円 月額7,500円の場合
庭の維持費用 6万円 庭の草刈り、庭木2本の剪定を年2回おこなう場合
ゴミの処分費用 3万円 1.5トントラック1台分の場合
交通費・宿泊費 3.6万円 月1回3,000円の場合
総額 約57.8万円  

ご覧の通り、年間で総額60万円に近い金額になりました。
イレギュラーな費用も含んだ金額なので、あくまでも参考程度に考えてください。
とはいえ、維持するだけでもかなりの費用がかかってしまう可能性があるのが、おわかりいただけたのではないでしょうか。

ここからは維持費用の内訳について、1つずつ解説していきます。

1-1.固定資産税・都市計画税

所有している土地や建物には固定資産税がかかりますが、空き家も例外ではありません。
都市計画税とは、特定の地域(都市計画区域)内に課税対象の不動産を所有している場合に課される税金です。

納税額は以下の通り、市町村が算出した課税標準額(固定資産税評価額)に税率を掛けて求めます。
固定資産税の税率は1.4%で全国一律ですが、都市計画税は自治体によって異なる場合があるので、詳しくは自治体のホームページなどで確認してください(0.3%が上限)。

税金の種類 納税額
固定資産税 課税標準額 × 税率(1.4%)
都市計画税 課税標準額 × 税率(最大0.3%)

なお住宅用の土地に家が建っている場合、土地に対する固定資産税と都市計画税が軽減される特例措置(固定資産税の住宅用地の特例)が適用されます。
もちろん、空き家も対象です。
敷地のうち200㎡までの固定資産税が6分の1に、200㎡を超える部分は3分の1に軽減されるため、課税額が大幅に低下します。

たとえば広さが200㎡で課税標準額が1,000万円の土地の場合、通常は14万円の固定資産税が、特別措置によって2万円程度にまで減額される計算です。

区分 土地の利用状況と面積区分 固定資産税課税標準額 都市計画税課税標準額
小規模住宅用地 住宅やアパート等の敷地の200㎡以下の部分 6分の1 3分の1
一般住宅用地 住宅やアパート等の敷地の200㎡を超える部分 3分の1 3分の2

ただし、この特例は土地に対する固定資産税と都市計画税のみを対象としています。
建物に対する税金は通常通り課税されるため、注意してください。
また空き家を解体してしまうと、特例の適用要件を満たさなくなってしまいます。
その場合は一切減額されなくなるので、こちらも注意が必要です。

1-2.水道光熱費

空き家は定期的に換気や掃除をする必要があるため、電気と水道は契約し続けるのが基本です。
いずれも使用量は多くなりませんが、基本料金は支払い続ける必要が出てくるでしょう。
ガスは、特に必要なければ解約してしまって大丈夫です。

電気に関しては、人が住む戸建てであれば40〜50Aでの契約が一般的ですが、空き家の場合は15〜20Aあれば十分であるケースが多いでしょう。

以下は、東京電力(従量電灯B)の基本料金(2024年12月現在)です。

アンペア数 基本料金
15A 約467円
20A 約623円
30A 約935円

水道料金は、メーターの口径と使用量に応じて料金が変化します。
月に1回程度の掃除で使うだけであれば、基本料金で収まるケースが多いでしょう。

以下は、東京23区の水道料金(2024年12月現在)をまとめた表です。

メータ口径 水道基本料金 下水道料金(0〜8m³) 合計
13mm 860円 560円 1,420円
20mm 1,170円 560円 1,730円

東京23区内の空き家で電気(15A)、水道(20mm)共に基本料金のみを支払う場合、月の負担は合計で約1890円、年額だと2万2,000円程度となります。

なお、電気は電力会社、水道は自治体によって値段が変わるため注意してください。

1-3.火災保険料

火事や災害のリスクがあるのは、空き家も同じです。
空き家には自然発火する可能性があるほか、劣化が進んでもろくなっている場合には、自然災害によって損壊してしまう可能性が高まるでしょう。

また、空き家は人の目が届きにくいため、放火の標的にされやすい傾向があります。
火災による解体費用も補償対象となっている、火災保険に加入しておくのがおすすめです。

具体的な火災保険料は、契約する会社や補償内容、建物の築年数、床面積などによって異なりますが、年間で1〜6万円程度が相場とされています。
空き家になってから加入できる火災保険は少ないので、注意してください。

人が住んでいたときから契約を続けている火災保険であっても、空き家になった場合は補償対象外になっている可能性があります。
その場合は、たとえ補償対象の損害が発生したとしても、保険金が支払われない可能性が高いです。
空き家になった時点で、保険会社に確認しておきましょう。

保険料についても、実際に人が住んでいる家よりも高くなってしまう可能性があるため、必要に応じて補償範囲を抑えるなど、工夫が必要です。

1-4.修繕費用

人が住まない空き家は傷みが早く、修繕が必要になる頻度が増えます。
修繕せず放置し続けてしまうと、外壁塗装の剥がれや雨漏りなど目に見える不具合はもちろん、床や屋根裏の腐食といった見えない部分の欠陥も多くなります。
それらは倒壊などにつながってしまいかねず、大変危険です。
空き家の住居としての環境だけでなく、安全性を確保するためにも、不具合には随時対応する必要があります。

修繕費用は内容にもよりますが、簡易なものなら数万円、大掛かりなリフォーム工事であれば数百万円が必要です。

1-5.その他の管理・維持費用

今まで紹介してきた費用以外にも、空き家の状況に応じて以下のような費用がかかります。

空き家管理サービス利用費
草刈りなどの庭の維持費用
ゴミの処分費用
交通費や宿泊費

どんな場合に必要になるのか、どの程度の費用が見込まれるのか、それぞれ解説します。

1-5-1.空き家管理サービス利用費

空き家管理サービスとは、空き家の換気や清掃、見回りなど、空き家の定期的な管理を代行してもらえるサービスです。
単に空き家を訪問するだけでなく、修繕が必要な不具合や欠陥を見つけた場合には、写真に撮って報告してもらえる場合もあるなど、空き家の状態や資産価値の維持に貢献してくれます。

空き家が遠方にあり、管理のために定期的に通うのが難しい場合や、管理の手間や時間を省きたい場合に有効な手段です。

空き家管理サービスの費用は、作業内容や月の訪問回数に比例します。
おおよその相場は、月1回の場合で5,000円〜1万円程度、月2回の場合で1.4〜1.8万円程度です。

1-5-2.草刈りなどの庭の維持費用

空き家に庭がある場合は、草木が荒れ放題にならないよう手入れが必要です。
あまりにも長い間放置してしまうと、ハエや蚊などの害虫が発生してしまうだけでなく、ネズミなどの害獣の住処になってしまうおそれもあります。
年に2、3回を目処に、定期的に草刈りや剪定をおこなうのが良いでしょう。

自分で作業すれば費用はかかりませんが、手間と時間がかかります。
難しい場合は、専門業者に依頼するのがおすすめです。
費用は庭の広さや庭木の高さ、作業内容などによって変化しますが、15坪(約50㎡)の草刈りや除草が2~3万円程度、庭木の剪定が1本あたり5,000円~6,000円程度が相場となります。

空き家管理サービスを利用している場合は、サービス内容の一部に庭の手入れが含まれているケースもあります。
節約したい場合は、活用してみましょう。

1-5-3.ゴミの処分費用

空き家の敷地が荒れていたり、ゴミが溜まっていたりすると、不法投棄の対象にされやすくなります。

万が一ゴミが不法投棄されてしまった場合、多くの場合は不法投棄された側である土地の所有者が費用を負担して、ゴミを処分しなければなりません。
不法投棄の犯人は見つからないケースが多く、かといって自治体などが費用を負担する理由もないためです。

粗大ゴミが大量に捨てられるケースも見受けられるので、定期的に庭の手入れや掃除をおこない、できるだけ不法投棄をさせないようにしましょう。

ゴミ処理費用は、回収に使うトラックの種類(ゴミを積み込める量)や作業員の数によって変化します。
軽トラックの場合で1.5万円、1.5トントラックで3万円程度が相場です。

1-5-4.交通費や宿泊費

空き家が自宅から離れた場所にある場合、交通費が必要になります。
日帰りが難しい場合は、宿泊費も必要になるでしょう。

移動手段や距離によって費用は変化します。
あまりにも移動の負担や交通費が大きい場合は、無理せず空き家管理サービスの利用も検討してみましょう。

2.空き家の維持費を節約する方法

空き家の維持には手間がかかり、費用もかかります。
だからこそできるだけ無理なく、少ない負担で空き家を維持するのが大切です。

ここからは、空き家を維持する際のポイントや注意点を解説します。

2-1.定期的にメンテナンスする

維持費を抑えるには、空き家の掃除や換気をおこないながら、建物の状態を定期的にチェックし、大きな問題に発展する前に対処するのが効果的です。

人が住まない空き家はホコリや湿気が溜まりやすく、カビや害虫が増えやすいため、劣化が早まります。
月に1、2回程度を目処に換気と掃除をして、湿気やホコリを取り除くだけでも劣化が抑えられ、修繕頻度も下がりやすくなるでしょう。

空き家が遠方にあるなど、定期的な管理が難しい場合は、代わりに換気や点検などをおこなってくれる空き家管理サービスの利用がおすすめです。

2-2.不要な水道光熱費が発生しないようにする

維持費の節約には、不要な水道光熱費を発生させないようにするのも効果的です。

たとえば、家電製品の電源がコンセントに刺さったままの状態だと、待機電力と呼ばれる僅かな電力消費が発生してしまいます。
電源は抜いておくか、必要のない部分のブレーカーを落としておくとよいでしょう。

契約している電気のアンペア数も確認しておきましょう。
電気の基本料金は、アンペア数に比例して高くなります。
掃除の際に電気を使う程度であれば、10〜15Aでも十分です。
人が住んでいた状態(40〜50A)のままにするのは避け、空き家になった時点で電気の契約内容を見直してみましょう。

水道は蛇口を締めたままの期間が長くなると、水道管が錆びて破損しやすくなります。
水漏れが発生してしまうと、高額な水道代が請求されてしまうので注意してください。
水道代は減免してもらえるケースもありますが、敷地内の水道管の修理費用は、家の所有者の負担です。
余計な費用を発生させないよう、定期的な換気や掃除のタイミングで、掃除に使わなかった蛇口からもある程度の水を出し、通水しておきましょう。

2-3.突発的に修繕が必要になる可能性がある

劣化が進むほど、さまざまな部分に不具合や欠陥が生じやすくなります。
発生した欠陥の内容によっては空き家を安全な状態に保つために、速やかな修繕が必要になるケースも出てくるでしょう。

修繕には費用がかかりますが、内容によっては大掛かりな工事が必要になるかもしれません。
思わぬ出費につながる可能性があるので、空き家を維持する場合には修繕費用の備えとして、ある程度のまとまった資金を用意しておいたほうが良いでしょう。

2-4.劣化が進むほど資産価値が下がる

空き家の資産価値は劣化が進むほど下がってしまうため、将来的に売却を検討している場合には注意が必要です。

特に空き家のまま放置をするのは、資産価値を大きく損ねる原因になりかねません。
建物の資産価値は売却価格に大きく影響するため、資産価値が下がるほど売値が下がる可能性が高まります。

こまめな管理を心がけ、必要以上に劣化させないようにしましょう。

3.空き家を維持する以外の選択肢

今までお伝えした通り、空き家の維持には少なくない費用がかかります。
維持費用を節約する手段も乏しいため、負担を大幅に軽減するのは難しいでしょう。

空き家の期間が長くなるほど資産価値も失われてしまうため、できるだけ早い段階で維持以外の選択肢も視野に入れて、対処法を検討するのがおすすめです。

そこでここからは、空き家を維持する以外の選択肢をいくつかご紹介します。

3-1.売却する

維持以外の選択肢はいくつかありますが、もっとも代表的でわかりやすいのが売却ではないでしょうか。

人が住まない期間が長くなるほど、空き家の資産価値は下がってしまいます。
資産価値が低下すれば売却価格が下がるだけでなく、建物自体の魅力も失われ、買手を探すのが難しくなってしまうでしょう。
できるだけ早く売却するのがおすすめです。

空き家の売却は、基本的には一般的な不動産売却と変わりません。
不動産会社に仲介を依頼し、買主を探してもらう方法が一般的です。

買手を探すのが難しい場合は、空き家の買取をしている不動産会社に依頼して、買い取って貰う方法もあります。
時間を掛けずに売却できるなどのメリットがありますが、一般的に空き家の買取相場は市場価格の5〜8割程度である点に注意してください。

3-2.賃貸物件として貸し出す

賃貸物件といえば、マンションやアパートを連想する方が多いかと思いますが、近年では戸建ての賃貸物件(戸建賃貸)の需要も高まっています。
賃貸需要の高い地域に空き家がある場合は、戸建賃貸として貸し出すのも1つの方法でしょう。

基本的に初期費用として、リフォームやリノベーションなどの大規模な修繕が必要にはなるものの、借り手さえ見つかれば安定した収入源になるのは大きな魅力です。
とはいえ実際に賃貸物件にするかは、不動産会社とも相談したうえで決めるようにしましょう。

3-3.解体する

空き家を解体してしまえば、管理・維持する手間も負担もなくなります。
空き家の解体に利用できる補助金を用意している自治体も多いので、積極的に確認してみましょう。

解体後は更地として売却する以外にも、駐車場などに変えて土地活用する方法もあります。
土地の価値や需要、立地条件なども十分に考慮したうえで、どうするかを考えましょう。

ただし家を壊してしまうと、固定資産税の住宅用地の特例の要件を満たさなくなってしまうため、納税額が増加してしまいます。
土地だけの状態で維持するのは、基本的に避けたほうが良いでしょう。

3-4.マイホーム借り上げ制度を利用する

マイホーム借り上げ制度とは、50歳以上の方が所有する家を借り上げ、安定的な賃料収入を保証する公的な制度で、一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)がおこなっています。
家を借り上げたJTIが、その家を転貸(サブリース)する仕組みのため、賃料収入自体は少なめです。
しかし1度でも入居者が決まれば、そのあとに空室となっても毎月の賃料が保証されるのが最大の特徴です。
国がサポートしている事業のため、民間のサブリース会社と比較した際、長期間の安定した収入が期待できます。
年齢や耐震性などの条件を満たしていれば空き家であっても利用可能です。

3-5.相続土地国庫帰属制度を利用する

相続土地国庫帰属制度を利用して、空き家を処分する方法もあります。
相続土地国庫帰属制度とは、相続した不要な土地を国に引き渡せる制度です。
要件を満たしている土地であれば、一定の負担金を支払えば国に引き取ってもらえます。

ただし、国が引き取ってくれるのは土地だけです。
建物は事前に解体しておく必要があります。

4.まとめ

空き家の維持費は、管理の頻度や建物の状態などによって変化しますが、年間で10万円以上かかってしまうケースも珍しくありません。
空き家を維持する際は、定期的に掃除や換気をおこない、不要な水道光熱費を発生させないように注意して、維持費用の節約を心がけましょう。

空き家の維持が難しい場合は、売却や解体など、他の選択肢も視野に入れて、対処法を検討するのがおすすめです。



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