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相続した空き家を売却したら確定申告は必要?
申告手順や税金の控除も解説
2024.02.02

● 相続した空き家を売却したあとはどのような手続きが必要?
● 売却した空き家の確定申告の方法がわからない
● 空き家を売却したら税金が控除されると聞いたけど本当だろうか?

ここでは空き家を売却して確定申告に悩んでいる方へ、申告しなかった場合どうなるかを含め、確定申告の必要書類や手続きの方法、税金の特別控除までを解説します。

この記事でわかること
● 空き家売却後の譲渡所得の計算方法
● 空き家売却後の確定申告に必要な書類と手続きの流れ
● 空き家を売却した際に適用される税金の特別控除と改正されたポイント

1.空き家売却と確定申告の基礎知識

相続した空き家の売却を考えている方のなかには、売却後の手続きや確定申告に関して不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確定申告は、税金の特例を適用するためにも必要な手続きです。
空き家を売却して利益が出た場合、確定申告をおこないましょう。

1-1.空き家を売却して確定申告しなかったら?

利益(所得)が生じた場合、税金を支払わなければなりません。
確定申告とは、1年間の収入から経費などを差し引いて所得を算出し、納める税金の額を計算して、その情報を国(税務署)に報告する手続きです。
空き家の売却による譲渡所得(利益)は、給与所得や事業所得とは別に計算し、通常の給与などと異なる確定申告が必要です。
空き家を売却して利益が出た場合に確定申告を怠ると、税金の未申告にともなう追加税や延滞税が発生します。
最悪の場合は、脱税の疑いで法的な処罰を受ける可能性があるため、ご留意ください。

1-2.空き家を売却すれば譲渡所得税が課税される

空き家を売却して譲渡所得(利益)が発生すると、利益に対して「譲渡所得税」と「住民税」が課税されます。
売却価格から取得費と売却費用を差し引いた金額が譲渡所得です。
取得費用には、空き家の購入金額や仲介手数料などが含まれます。
取得費用を計算する際は、建物の減価償却費を差し引かなければなりません。
建物の減価償却費は、経年にともなう劣化により建物の価値が減少するのを考慮して、取得時の費用から耐用年数に基づく価値の減少分を、経費として計上します。
減価償却費の計算方法には「定額法」と「定率法」の2つがあり、非事業用の空き家の場合は通常「定額法」が用いられます。
定額法での減価償却費の計算は「建物の購入代金×経過年数×0.9×償却率」です。
償却率は、1年間で価値が低下する割合で、建物の構造によって異なるため、構造ごとの償却率については、国税庁のホームページで確認しておきましょう。
一方、売却費用には、売却時の仲介手数料や売買契約書に貼る印紙代などが含まれます。
譲渡所得に税率をかけたものが、課税される金額です。
所有期間が5年を超える空き家の場合は約20%、所有期間が5年以下の空き家の場合約40%の税率となっています。

1-3.特例を適用するためには確定申告が必要

空き家を売却して利益が出た場合、特例を利用して税金対策をおこなえます。
「3,000万特別控除」「所有期間10年超の軽減税率特例」「相続した空き家に対する特例」と、3つの特例があります。
この特例を活用する場合には、確定申告が必要です。

1-4.損失が出た場合確定申告する必要はない

空き家を売却して確定申告が必要になるのは、売却益が取得費用を上回った場合です。
取得費用が900万円の物件が400万円で売れた場合など、売却によって損失が発生するケースでは、通常確定申告の必要はありません。
ただし、この損失を確定申告すれば、他の所得との損益通算が可能となり、節税できるケースもあります。

2.空き家売却での確定申告の手順

空き家を売却して利益が出た場合の、確定申告の手順や必要書類を紹介します。
申告前に、書類を揃えておきましょう。

2-1.確定申告の手続き

空き家売却による譲渡所得を計算して、確定申告が必要であれば、その後国税庁のホームページから申告書類を取得します。
次に申告書類に記入し、必要な書類を準備しましょう。
最後に書類一式を整え、管轄の税務署に提出するという流れになります。
税務署への提出は、郵送や直接窓口への提出以外に、e-Tax(イータックス)によるオンラインでの提出も可能です。

2-2.確定申告に必要な書類

確定申告に必要な一般的な書類「確定申告書B様式(第一表)」「確定申告書第三表(分離課税用)」「譲渡所得の内訳書」は、国税庁のホームページからダウンロードできます。
空き家を売却した利益を確定申告する場合は、以下の書類も揃えておきましょう。
● 空き家の登記事項証明書
● 空き家の取得時と売却時の売買契約書のコピー
● 取得費や取得時の経費が分かる資料や領収証
● 仲介手数料などの譲渡費用が分かる領収証のコピー
● 本人確認書類(マイナンバー等)
なお、相続空き家の特別控除の特例を受ける場合は、以下の書類も必要になります。
● 被相続人居住用家屋等確認書
● 被相続人居住用家屋の耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
● 相続により取得したと証明できる書類
● 家屋が1981年5月31日以前に建築されたこと及び区分所有建物登記がされている建物ではないとわかる書類
必要書類は変更されている可能性があるため、税務署などであらかじめ確認し、揃えておきましょう。

3.空き家売却での特別控除を活用する方法

老朽化した空き家は、外壁の崩壊や景観の悪化、犯罪リスクの増加など、周辺地域に対して深刻な影響を及ぼす可能性が高いです。
空き家問題の税務上の対策として、相続後に空き家となった不動産を売却した際の「利益」に対して、税負担を軽減するため特別な優遇措置が設けられています。
これは、空き家の増加を抑制し、効果的な対策を推進するための取り組みの一環です。

3-1.マイホームだった空き家を売却した場合の3,000万円特別控除

この特例を利用する際は、譲渡所得が3,000万円に満たない場合、控除額は「控除額 = 譲渡所得額」として計算されます。
この特例を適用するためには、空き家になってから3年以内での売却や、売却が親子や親族間の取引でない、などが条件となります。
さらに、引き渡し前の2年間に同様の特例を利用していない、他の特例を同時に受けていないなどの条件もあります。

3-2.空き家の所有期間が10年を超えた場合の軽減税率特例

空き家を売却した年の1月1日時点での所有期間が10年を超えている場合、3,000万円の特別控除を受けた後の所得税金額に対して、軽減税率が適用できます。
この軽減税率の適用条件は、マイホームだった空家を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と同様です。
しかし、売却した不動産の所有期間が、売却した年の1月1日現在において、10年を超えていなければなりません。
また、売却金額は1億円以下である、などの条件もあります。

3-3.相談した空き家の売却でも3,000万円の特別控除は適用可能

相続によって取得した住居用の空き家を売却した場合でも、譲渡所得から最大で3,000万円まで、控除可能です。
この特例が適用されると、譲渡所得が3,000万円以下の場合は非課税となります。
昭和56年5月31日以前に建築された建物であり、区分所有建物登記がない建物、相続開始の直前に亡くなった人以外は居住していない、などが条件となります。
ただし、相続日から起算して3年が経過する年の12月31日までに売却しておかなければなりません。
また、売却金額は1億円以下である、なども適用条件となります。
特例を申請する際には、譲渡所得の内訳書が必要です。
空き家の登記事項証明書や売買契約書のコピー、さらに、被相続人居住用家屋等確認書や耐震基準適合証明書なども申請に際して必要です。
なお、必要書類は変更されている場合があるため、事前に税務署などに問い合わせておきましょう。

4.令和5年度税制改正で見直された相続空き家の特例

空き家問題がいまだに解決していない点を踏まえて、相続した空き家の特例が適用される期間が延長されています。
改正された内容を見ていきましょう。

4-1.見直された内容

改正前 改正後
適用期限 令和5年12月31日まで 令和9年12月31日まで
特別控除額 3,000万円
(相続人が複数いる場合、控除額はそれぞれ3,000万円)
3,000万円
(相続人が3人以上いる場合、1人あたりの控除額は2,000万円)
除却要件(敷地のみの譲渡) 譲渡までに家屋を除却している 譲渡日、もしくは譲渡日から譲渡年の翌年2月15日までに家屋を除却している
耐震リフォーム要件(家屋を含んだ譲渡) 譲渡日までに、その家屋が耐震基準に適合している 譲渡日、もしくは譲渡日から譲渡年の翌年2月15日までに、その家屋が耐震基準に適合している

令和5年度税制改正前の譲渡特例を適用できる期間は、平成28年4月1日から令和5年12月31日まででした。
令和5年度税制改正により、適用期限が4年延長されて、令和9年12月31日までとなっています。

4-2.除却要件や耐震リフォーム要件が緩和された

税制改正により、除却要件や耐震リフォーム要件が緩和され、さらに特例が適用されやすくなっています。
改正前の空き家の譲渡特例は、相続人など譲渡側に必要な条件として、特定の耐震リフォームや、除却要件が設けられていました。
しかし「相続人による耐震リフォームや除却などの工事が必要で、これが空き家の取引に支障をきたす場合もある」として、国土交通省が要件の緩和を求めていました。
そのため、譲渡がおこなわれた年の翌年2月15日までに、除却要件や耐震リフォームの要件を満たせばよい、と変更されています。
改正によって、引き渡し前の取壊しや耐震リフォームの実施が必須ではなくなったため、特例が適用されやすくなりました。

4-3.相続人が3人以上いる場合は特別控除額が減額する

令和5年度税制改正前の空き家特例では、相続人が複数人いた場合は、各相続人に対して3,000万円ずつの控除が認められていました。
しかし、今回の改正により、相続人が3人以上いる場合、各相続人に対する控除額は1人あたり、2,000万円に引き下げられています。
3人が共同で所有している空き家を令和6年以降に売却するケースでは、控除額は1人あたり2,000万円の3人分になるため、最大でも6,000万円となります。
相続する人数によって控除額が変わる可能性があるため、ご留意ください。

4-4.相続した空き家を売却した場合の特例チェックシート

相続した空き家を売却した場合に特例が適用されるのか、他にも書類は必要ではないのかと、不安な方も多いのではないでしょうか。
国税庁の特例チェックシートでは、必要な添付書類も掲載されています。
適用されるか悩んでいる方は、参考にしてください。
「相続した空き家を売却した場合の特例チェックシート」

5.まとめ

空き家を売却して利益が出た場合の譲渡所得は、給与所得や事業所得とは別に計算し、通常の給与などと異なる確定申告が必要です。
相続した空き家を売却した際に受けられる3,000万円の特別控除も、確定申告しなければ適用されません。
空き家を売却した際の譲渡所得の確定申告を怠ると、税金の未申告にともなう追加税や延滞税が発生するため、必ず確定申告しましょう。



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