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空き家の3,000万円控除特例とは?
適用条件や売却時の注意点を解説
2024.01.16

●相続した空き家を売却した際に節税できないか?
●空き家の3,000万円控除制度特例とはどの物件にも適用されるのか?
●空き家を売却する時の注意点とは?

今回は相続した空き家を売却すべきか検討している方に向けて、空き家の3,000万円控除の特例制度とは何か、要件を解説します。
また、控除制度を利用するにあたって、空き家を売却する際の注意点もあわせて解説します。

この記事でわかること

●空き家の3,000万円控除制度特例の概要と要件
●控除制度を利用する際や空き家を売却する際の注意点
●ほかの特例と併用可否

1.空き家売却の3,000万円控除制度特例とはどのような制度か

両親から相続した空き家を売却して得た利益は譲渡所得と呼ばれ、譲渡所得があった場合は、所得に応じて算出された譲渡所得税を支払わなければなりません。
空き家にかかる3,000万円控除の特例制度とは、要件を満たし、一定期間内に空き家を売却すると譲渡所得に対して最大3,000万円まで控除される制度です。
譲渡所得は、空き家の売却価格から取得費用と仲介手数料を含む譲渡費用を差し引いた価格で求められますから、特別控除があれば節税につながります。
空き家を所持する方の多くは、離れて暮らす両親から相続されたケースとなります。
平成30年に総務省が実施した住宅・土地統計調査によれば、すべての住宅の13.6%が空き家を占めており、昭和38年以降増加傾向です。
空き家が増えると、建物の倒壊のおそれや治安が悪化するなどさまざまなリスクがあるでしょう。
このように空き家問題を解決するための政策として控除制度ができました。

2.売却時に3,000万円控除特例に該当する空き家の要件4つ

両親から相続した空き家はすべて3,000万円控除の特例を利用できるわけではありません。
控除制度を利用するには4つの要件を満たしていなければならないため、相続した空き家が該当しているかどうかの確認が必要です。

2-1.被相続人が居住用とした物件

相続開始の直前まで、被相続人が居住用として利用していた建物と土地が控除制度特例の対象となる要件です。
たとえば別荘や控除制度を受けるために入居していた物件など、ご自宅以外の不動産は控除制度の対象外となります。

2-2.昭和56年5月31日以前に建築された物件

空き家の3,000万円控除制度特例の要件には築年数が定められています。
耐震基準が改定された日の昭和56年5月31日以前に建築された一戸建てが適用の対象です。
なお、マンションをはじめとした区分所有登記されていた物件は控除制度が適用されません。

2-3.相続開始までに被相続人以外に居住者がいない

空き家をなくすのを目的とした特例のため、相続した時点で被相続人以外に居住者がいないのが要件となります。
また、相続から売却まで賃貸物件や事業用として活用していた際も適用とならないため注意しましょう。

2-4.譲渡した時点で現在の耐震基準をクリアしている点

売却した空き家が旧耐震基準ではなく、新耐震基準を満たしていなければなりません。
空き家にかかる3,000万円控除制度特例の目的は、耐震性が低い空き家数の増加を抑えるのが目的です。
そのため、修繕工事をして耐震基準を満たすようにするか、耐震性の低い建物を解体して更地にした状態で売却しなければ適用となりません。

3.3,000万円控除の適用期間

空き家にかかる3,000万円の控除制度特例を受ける際は、売却期間と譲渡期間の両方を満たしている必要があります。
売却期間は平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間です。
譲渡期間は、相続が発生した日から、3年を経過する日に属する年の12月31日までに譲渡しなければなりません。
令和6年1月1日が相続開始日とした場合の適用期間と譲渡期間を下記の表にてまとめました。

令和6年 令和7年 令和8年 令和9年 令和10年
売却期間 〇(適用) 〇(適用) 〇(適用) 〇(適用) 〇(適用)
譲渡期間 〇(適用) 〇(適用) 〇(適用) 〇(適用) ✕(不可)
控除適用の可否 〇(適用) 〇(適用) 〇(適用) 〇(適用) ✕(不可)

令和9年12月31日までに売却と譲渡を終えていれば、売却期間と譲渡期間の両項目を満たしており、控除制度の適用となります。
一方で、令和10年1月1日以降の場合、譲渡期間を満たさないため、3,000万円控除制度の対象外です。

4.控除制度の手続きと必要な書類

空き家にかかる3000万円控除制度特例を申請するにあたって、市町村にて被相続人居住用家屋等確認書の申請が必要です
被相続人居住用家屋等確認書を申請するときに、市町村に提出する必要書類とそれぞれの書類がどこで取得できるかを下記の表にてまとめました。

必要書類 取得先
被相続人の除票住民票・相続人の住民票のコピー 市区町村窓口
売買契約書 不動産会社
下記のいずれかの書類
1.公共料金のいずれかの使用中止日がわかる書類
2.宅建業者が「現況空き家」と示した広告
1.使用していた電気・ガス会社、役場の水道局
2.不動産会社
※更地にして売却する場合
1.家屋取壊し後の閉鎖事項証明書(更地にして売却する場合のみ)
2.更地とわかる写真
1.法務局
2.お客様が撮影するか、除却工事施工業者

確認書の申請には、被相続人の除票住民票と相続人の住民票、売買契約書それぞれのコピーを用意しましょう。
さらに、事業用や貸付、居住用目的で使用されていないと示すのに、公共料金の使用中止日がわかる書類か宅建業者が「現況空き家」と示した広告のどちらかが必要です。
その後、売却した翌年に税務署で空き家の3,000万円控除特例を申請する流れです。

被相続人居住用家屋等確認書以外に、税務署での手続きに必要な書類と取得先は下記の表となります。

必要書類 取得先
譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書) 国土交通省のホームページ
登記事項証明書等 法務局
売買契約書のコピー 不動産会社
耐震基準適合証明書あるいは建設住宅性能評価書のコピー 指定確認検査機関・評価機関

控除制度の申請には必要な書類が多く、すべて取り揃えるのに時間がかかります。
スケジュールに余裕をもって行動するのが大事です。

5.空き家の売却前と売却後で注意すべき3つのポイント

空き家にかかる3,000万円の控除制度特例を受けるにあたって、空き家を売却する前と後それぞれで注意すべき項目があるでしょう。
他の記事でも詳しく述べておりますが、控除制度を利用する方へ、とくに注意すべき3つのポイントを解説します。

5-1.売却前は相続人全員の了承が必要

相続人が1人であれば、所有者本人の判断で不動産を売却するかどうかを決定できますか、相続人が複数いるときは注意が必要となります。
相続人が複数いる場合で、1つの不動産を複数人が所有する共有名義で相続登記するケースがあるでしょう。
共有名義の不動産はすべて相続人全員の了承がなければ売却ができないと民法で定められているからです。
売却する際は相続人全員と話し合いをして、同意を得てから売りましょう。

5-2.売却前は空き家の管理不十分に注意

空き家の管理をおこたると、建物の劣化が急速に進み、資産価値が下がってしまいます。
また、倒壊や衛生上有害となる可能性や、景観を大きく損なわれているとして国土交通省から特定空き家に指定される可能性が高いです。
特定空き家に指定されると、固定資産税の減免がなくなるため固定資産税が上がったり、売却が難しくなったりとデメリットが多いです。
定期的に清掃と修繕をしていれば、特定空き家に指定されにくくなります。

5-3.売却後の引き渡し日を過ぎないように注意

売買契約が締結してから、約1.5〜3か月後に物件を引き渡すのがほとんどとなります。
売買契約書にもいつ頃引き渡すのかが記載されており、法的な影響力を持つ事項です。
もし、何らかの事情により期限内に物件の引き渡しができないと契約違反とみなされて違約金が発生する可能性があります。
売却価格の1割程度支払わなければならず、無駄な出費になります。

6.空き家売却の3,000万円控除制度利用時の 注意すべき3つのポイント

空き家の3,000万円の控除制度を検討するには、手続きするタイミングが決まっていますから、納税による金銭的負担を軽減するためにも知っておきましょう。
お客様から、被相続人が老人ホームへ入所していたケースに関しても控除制度が適用となるかどうかの質問が多いです。
また、法改正後に控除制度の内容がどのように変わったのかがわからないとの声もあるため、内容は知っておくべきでしょう。

6-1.確定申告時に控除制度の手続きをおこなう

売却で空き家を譲渡して譲渡所得を得た際に、譲渡所得税に関する確定申告が必要となります。
確定申告できる期間は、物件を譲渡した年の翌年の2月16日から3月15日までとなります。
空き家にかかる3,000万円の控除制度特例を受ける場合、確定申告とあわせて手続きしてください。
万が一、期間内に控除制度利用の申請と確定申告のどちらもしていなければ、控除が受けられないのはもちろん、無申告加算税や延滞税を納税しなければなりません。

6-2.被相続人が老人ホームへ入所していた場合は控除対象

一人暮らししていた被相続人が要介護・要支援認定を受けて老人ホームへ入所していたときは、いくつかの要件を満たしていれば控除制度の適用となります。
1つ目の要件は、老人ホームへ入所したときから相続直前まで、家屋を被相続人の物品の保管場所や一時滞在目的で利用していた場合となります。
2つ目に、平成31年4月1日以降に売却されているのが条件です。
控除制度の申請をする際は、介護保険の被保険者証のコピーと老人ホームへの入所証明書が必要です。

6-3.法改正があった際は内容を要確認

令和5年の法改正で控除制度の内容が一部変更になりました。
これまでは控除の適用とするには譲渡日までに耐震工事する必要がありました。
令和6年1月1日以降の売却時の取り決めで、購入後に耐震基準を満たすための解体工事や耐震工事をした場合も特例の適用です。
相続人が3名以上いるときは、最大2,000万円の控除が受けられるようになるでしょう。
法改正で内容が変わる場合があるため、定期的に控除制度の内容を確認しましょう。

7.空き家売却の3,000万円控除制度とほかの特例との適用

空き家売却時の3,000万円控除制度とほかの特例制度とあわせて利用できるのか、お客様から相談されるケースがあります。
居住用財産の3,000万円や居住用財産の買換え特例、住宅ローン控除は併用可能なため、上手に活用すべきです。

7-1.居住用財産の3,000万円特別控除と買換え特例との併用は可能

マイホームを売却した際の譲渡所得から3,000万円が控除される特例と、空き家にかかる3,000万円の特別控除を併用可能ですが、控除額に注意です。
同一年度で併用するときは、2つの特例をあわせた3,000万円が最大控除額となります。
マイホームの買換え特例と空き家にかかる3,000万円の特別控除との併用もできます。

7-2.空き家売却の3,000万円控除と住宅ローン控除は併用可能

両親から空き家を相続し、新しくマイホームを購入するために空き家を売却したケースが多いです。
住宅を購入した際に、一定の要件を満たすと住宅ローンの年末残高1%が控除される住宅ローン控除が利用できれば金銭的負担が軽減されるでしょう。
これまでは住宅ローンの控除期間は10年でしたが、現在は13年に延長しました。
空き家にかかる3,000万円の控除制度と、住宅ローンの控除はあわせて利用できます。

8.まとめ

相続した空き家が3,000万円控除制度の要件を満たしていた場合、節税につながるでしょう。
控除制度に関する手続きや必要書類の用意、空き家を売却に関してご不明な点がありましたら、不動産会社へ相談してください。



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