空き家を売却する際の注意点とは?
売却の流れや必要な費用も解説2023.12.25
●相続した空き家の売却を検討しているが、注意点があれば確認したい
●どういう流れで空き家を売ればいいのかわからない
●空き家の売却にはどのくらいの費用がかかるのだろうか?
この記事では、所有する空き家の売却を検討している方に向けて、売却前後での注意すべきポイントや、売却する際の流れを解説します。
売却に必要な費用や、売却タイミングについても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
●空き家を売却する前後で注意すべきポイント
●空き家を売却する際の流れ
●空き家の売却に必要な費用
空き家を売却する前に注意すべきポイント
空き家の売却には、自宅の売却とは異なる部分があります。
通常の不動産取引と同じ感覚で取引を進めてしまうと、思わぬトラブルを招いてしまうおそれがあるため、注意が必要です。
できるだけスムーズに売却を進めるためにも、まずは売却前の注意すべきポイントを確認していきましょう。
空き家の名義を確認・変更しておく
不動産を売却する場合、登記簿上の名義人が売買契約を結ばなければなりません。
たとえば相続した空き家の名義が変更されておらず、元の所有者のままだった場合は売却ができないため、先に名義変更を済ませる必要があります。
空き家の名義人は、権利証や登記識別情報、登記事項証明書などで確認可能です。
名義人が自分になっていなかった場合は司法書士などに相談して、売却前に名義を変更しておきましょう。
隣家との境界線を確定させておく
古い家の場合、隣地との境界が曖昧になっている可能性があります。
土地を売却する場合、売主は買主に対して土地の境界を明確に示す義務があるため、境界が曖昧のままでは売却ができません。
買主としても境界が曖昧な土地は、購入後トラブルに発展するリスクが高いため、避ける傾向があります。
売却をスムーズに進めるためにも、必ず事前に土地の境界を確認しておきましょう。
境界線の確認は、法務局で地積測量図などを取得して確かめる方法や、土地家屋調査士に依頼して調査する方法などがあります。
境界が明確でなかった場合は土地家屋調査士に依頼して、境界線を確定させましょう。
1〜3ヵ月程度の期間が必要となる場合もあるため、注意してください。
抵当権を抹消しておく
元の所有者が住宅ローンを利用して空き家を購入していた場合、抵当権が設定されたままの可能性があります。
抵当権が設定されたままでは売却ができないため、必ず事前に確認しておきましょう。
抵当権が残っていた場合は司法書士に依頼して、速やかに抹消の手続きを進めてください。
自己判断での解体・リフォームは避ける
築年数が古く劣化が進んでいる空き家の場合、解体やリフォームをしたほうが売れやすいのではないか、と思われるかもしれません。
ですが、自己判断だけで進めるのは避けましょう。
解体やリフォームをしても、必ず売れるとは限りません。
工事には少なくない費用が必要なうえ、解体した場合には固定資産税が最大で6倍にまで増えてしまうリスクがあります。
うまく売却できたとしても、工事費用が売却価格を上回ってしまったら意味がありません。
自己判断での工事はリスクが大きいため、不動産会社に相談してから決めるようにしましょう。
売却に必要な費用を把握しておく
空き家の売却には、仲介手数料などの費用がかかります。
どんな費用がどの程度必要になるのかを事前に確認しておくと、どの程度の現金を用意しておく必要があるのか、判断しやすくなるでしょう。
売却によって得られる利益を正確に見積もりやすくなるため、特に売却代金をなにかに利用する計画がある場合は、事前に費用を確認しておきましょう。
空き家の取得費を証明できる書類を探しておく
空き家を売却して利益(譲渡所得)が得られた場合、譲渡所得に対して所得税と住民税が課されます。
この際、空き家の購入価格や、購入時に発生した仲介手数料などを証明できる書類を用意できれば、それら取得費用を経費として、譲渡所得から差し引けます。
取得費用を証明する書類を用意できない場合でも、空き家の売却価格の5%が取得費として差し引けますが、実際の取得費よりも少なくなってしまう可能性が高いでしょう。
売却によって得られる利益を少しでも多くするためにも、取得費を確かめられる売買契約書や領収書が残っていないか、探しておきましょう。
売却スケジュールには余裕を持たせておく
空き家を売却する際は、余裕のあるスケジュールを立てるのがおすすめです。
ですがどのような手順を踏んで売却を進めるのかわかっていなければ、スケジュールを立てるのが難しくなります。
そのため空き家を売却する際は、事前に大まかな流れを把握しておきましょう。
不動産の売却は、3ヶ月から半年程度かかるのが一般的とされています。
不動産の状態によっては、それ以上の時間が必要になってしまうケースも珍しくありません。
空き家売却の流れを事前に確認したうえで、ある程度余裕を持たせてスケジュールを立てましょう。
空き家の状態を確認しておく
不動産の売主は、契約不適合責任を負っています。
そのため空き家の売却後に欠陥が見つかった場合、買主は売主に対して損害賠償や契約解除などを要求できます。
欠陥の存在を故意に伝えなかった場合はもちろん、売主が欠陥を把握してなかった場合にも責任を問われてしまう可能性があるため、売却前に空き家の状態を確認しておくのが大切です。
特に築年数が古い空き家の場合、雨漏りなどの見て確かめられる欠陥だけでなく、基礎部分や配管などの見えない部分にも、何らかの欠陥を抱えている可能性があります。
住宅診断(ホームインスペクション)などを活用して、把握できていない欠陥がないか確かめておきましょう。
空き家を売却した後に注意すべきポイント
空き家を売却したあとも、いくつか注意すべき点があります。
売却益や税金に関わる重要なポイントなので、こちらもしっかり確認しておきましょう。
売却の翌年には確定申告が必要
空き家を売却した場合、翌年に確定申告が必要です。
売却によって利益が発生した場合は譲渡所得税を納める必要があるため、必ず忘れずに申告しましょう。
利益が出なかった場合は原則不要となりますが、確定申告をした場合に限り、給与などの他の所得との損益通算が可能になります。
金額が大きいほど節税効果が期待できるので、ぜひ申告してみてください。
特別控除の申請には期限がある
相続した空き家を売却した場合、3,000万円の特別控除が利用できます。
譲渡所得が3,000万円以下の場合は全額が控除されるため、積極的に活用しましょう。
ただし控除を受けるには、相続した日から3年が経過した12月31日までに売却したうえで、確定申告をする必要があります。
相続した空き家を売却した際は、特別控除の利用期限を確認しておきましょう。
空き家を売却する際の流れ
空き家売却のおおよその流れは、以下の通りです。
1.空き家の査定を依頼する
2.不動産会社と媒介契約を結ぶ
3.売却活動を開始する
4.売買契約を締結する
5.空き家を引き渡す
それぞれのステップで具体的に何をするのか、解説します。
空き家の査定を依頼する
まずは不動産会社に査定を依頼して、空き家の売却価格を確認します。
査定価格は不動産会社によって変化するため、価格の妥当性を判断するためにも、基本的には複数の会社に依頼するのがおすすめです。
査定価格は、契約する不動産会社を選ぶ際の基準にもなりますので、比較検討しつつ納得できる会社を探してみましょう。
不動産会社と媒介契約を結ぶ
納得できる不動産会社を見つけたら、媒介契約を結びます。
媒介契約とは、不動産会社に仲介を依頼するための契約です。
媒介契約には一般媒介契約、専属専任媒介契約、専任媒介契約の3種類があり、契約できる会社の数や、自分で見つけた買主と取引できるか、などの違いがあります。
それぞれメリットとデメリットがありますので、納得できる契約を選びましょう。
契約できる会社の数 | 自分で見つけた買主との直接取引 | 契約の有効期間 | |
一般媒介契約 | 複数可能 | できる | 期限なし |
専属専任媒介契約 | 1社のみ | できない | 最大3ヶ月 |
専任媒介契約 | 1社のみ | できる | 最大3ヶ月 |
売却活動を開始する
不動産会社と媒介契約を結んだら、査定価格を参考に売出し価格を設定し、売却活動を開始します。
スムーズに活動を進められるよう、事前に不動産会社と協議し、販売方針を確定させてください。
売却活動の期間は、中古住宅の場合で3ヶ月程度が一般的です。
築年数が古い空き家の場合は、それ以上かかってしまう可能性があるため、スケジュールにある程度の余裕を持たせておくのがおすすめです。
売却活動開始後は、購入希望者が見つかる前に内覧の準備を整える必要があります。
内覧の印象が良ければ早期の売却も期待できますので、できるだけ魅力を感じてもらえるように空き家全体を綺麗にしておきましょう。
なお内覧当日は、売主が立ち会う必要はありません。
特に理由がない限り、内覧対応も不動産会社にまかせてしまって大丈夫です。
立ち会う場合は内覧者から物件に関する質問を受ける可能性が高いため、しっかりと答えられるように準備しておきましょう。
売買契約を締結する
購入希望者と価格や条件面で合意が得られたら、売買契約を締結します。
実印や印鑑証明、登記済権利証など、必要書類を揃えておきましょう。
多くの場合、買主は売買契約のタイミングで売主に手付金を支払います。
手付金は、売却価格の10%程度が一般的です。
買主の都合で契約がキャンセルとなった場合、手付金が違約料やキャンセル料の代わりとなります。
空き家を引き渡す
売買契約で定めた日時に、決済と引き渡しの手続きをおこないます。
引き渡し日は、売買契約の締結から1〜2ヶ月後に設定するのが一般的です。
買主から手付金が支払われていた場合、手付金は売却代金の一部として扱われるため、それ以外の残金が支払われます。
不動産会社への仲介手数料もこのタイミングで支払いとなるため、忘れずに準備しておきましょう。
決済確認後、引き渡しの手続きを済ませて取引は完了します。
空き家の売却に必要な費用
空き家を売却する際は、以下のような費用がかかります。
●仲介手数料
●印紙税
●所有権移転登記費用
●抵当権抹消登記費用
●譲渡所得税
●空き家の解体・リフォーム費用
必ずしも、上記の費用すべてが発生するとは限らない点に注意してください。
たとえば売却しても利益が得られなかった場合は、譲渡所得税は発生しません。
以降の中見出しで、それぞれの費用の内訳や金額の目安などを解説します。
仲介手数料
仲介手数料は、仲介を依頼した不動産会社に支払う成功報酬です。
契約期間中に売却できなかった場合は、支払う必要はありません。
仲介手数料は法律で上限が定められており、上限額以内であれば、不動産会社が自由に設定できます。
ですが基本的には、上限額がそのまま請求されるケースが多いでしょう。
売却価格が800万円以下の場合、上限額は一律30万円(税抜き)です。
800万円を超えた部分に関しては、売却価格の3%が上限に加算されます。
たとえば1000万円で売却できた場合だと、800万円までの30万円に、200万円の3%にあたる6万円がプラスされた36万円(税抜き)が上限となります。
仲介手数料の一般的な支払いタイミングは、売買契約成立時と物件引き渡し時の2回です。
それぞれで半額ずつの支払いとなるので、契約成立までに用意しておきましょう。
印紙税
印紙税は、特定の書類に対して課せられる税金です。
課税対象の書類に、収入印紙を貼り付ける形で納める必要があります。
空き家売却の場合は、売買契約書が課税対象の書類です。
具体的な金額は、売却価格によって以下のように変化します。
(2027年3月31日までは軽減税率を適用)
売却価格(税抜き) | 本則税率 | 軽減税率 |
1万円以下 | 非課税 | 非課税 |
1万円超、10万円以下 | 200円 | 200円 |
10万円超、50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超、100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超、500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超、1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超、5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
たとえば、300万円で売却した場合は2,000円(軽減税率の場合は1,000円)、800万円で売却した場合は1万円(軽減税率の場合は5,000円)が課税されます。
所有権移転登記費用
売却前に所有権移転登記をおこなった場合に必要となる、各種費用です。
具体的には、登記の際に納める登録免許税と、司法書士に登記を依頼した際に支払う報酬の2種類が主な費用となります。
登録免許税の具体的な金額は以下の数式の通り、所有権を移転する土地や建物の固定資産税評価額に対して、税率を掛けて求められます。
売却価格ではないので、注意してください。
登録免許税額 = 固定資産税評価額 × 税率
税率は所有権を移転する理由によって変化し、売買の場合は2%(土地の場合は2026年3月31日まで1.5%)となっています。
司法書士報酬は、依頼する司法書士や事務所によって異なりますが、所有権移転登記の場合は4〜10万円程度が相場です。
なお売却に成功した場合、物件の引き渡し時にも所有権移転登記が必要となりますが、こちらの費用は一般的に買主が負担します。
抵当権抹消登記費用
売却前に抵当権抹消登記をおこなった場合に必要となる、各種費用です。
費用の主な内訳は所有権移転登記費用と同様で、登録免許税と司法書士報酬となります。
具体的な費用は、登録免許税が1,000円、司法書士報酬の相場が1.5万円程度です。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産売却によって得られた利益(譲渡所得)に対して課せられる所得税と住民税です。
利益が出ていなければ課税されません。
3,000万円の特別控除(空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例)を利用した結果として課税額がゼロになった場合も、支払う必要がなくなります。
具体的な譲渡所得税の計算式は、以下の通りです。
譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 売却費用)
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率
税率に関しては以下の通り、売却した物件の所有期間によって変化します。
●5年以内(短期譲渡所得):39.63%
●5年超(長期譲渡所得):20.315%
所有期間5年以下の場合、5年超の2倍に近い税率になってしまうので注意してください。
空き家の解体・リフォーム費用
売却に先立って空き家を解体・リフォームする場合には、その費用が必要です。
具体的な金額は、いずれも空き家の広さや構造、築年数などによって変化します。
解体費用は、30〜50坪の木造住宅で120〜200万円程度が相場です。
リフォーム費用の相場は、全面的なリフォームの場合で1,000万〜1,500万円程度となっています。
工事内容によっては2,000万円を超える可能性もありますが、水回りのみなど、部分的なリフォームであれば100〜200万円程度で済む場合もあります。
まとめ
空き家を売却する前の注意すべきポイントには、空き家の名義の確認、隣家との境界線を確定、抵当権の抹消、売却に必要な費用の把握などがあります。
一方、空き家を売却した後の注意すべきポイントは、確定申告、特別控除の申請期限の2点です。
売却をなるべくスムーズに進めるためにも、売却のおおよその流れや必要な費用も、あらかじめ確認しておきましょう。