5年以内の不動産売却は損?
節税できる特別控除や後悔しないためのポイントを解説2026.01.27
● 不動産を購入したばかりだが、すでに売却を検討している
● 5年以内の不動産売却は不利になると聞いて不安を感じている
● 最適な不動産の売却時期に悩んでいる
「所有期間が5年以内の不動産を売却すると損する」とされる一般的な見解がありますが、必ずしも一概に断言できるわけではありません。
本記事では、5年以内の売却が本当に損になるのかを複数の観点から整理し、所有期間による税金の違いや特別控除、損しないためのポイントを解説します。
この記事でわかること
● 3つの観点から見る5年以内の不動産売却への影響
● 所有期間に応じた税金の違いと節税効果のある特別控除
● 5年以内の不動産売却で損しないためのポイント
はじめに:5年以内の不動産売却が損するといわれる理由
一般的に「5年以内の不動産売却は損する」といわれる理由には、譲渡所得にかかる税率の違いが関係しています。
不動産売却では、所有期間が5年以内の場合は短期譲渡、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡として税金に課せられる税率の区分が異なります。
短期譲渡に該当すると、長期譲渡よりも高い税率が課せられるため、同じ売却益でも手取り額が少なくなる点に対して、不利になるととらえられてきました。
しかし、手取り額だけで売却するか否かを判断すると、市場相場や需要変動、利用できる特別控除の範囲に影響し、かえって損するケースもあるので注意が必要です。
5年以内の不動産売却は本当に損になるのか
「5年以内の不動産売却は不利だ」といわれていますが、すべてのケースで損失につながるとは限りません。
ここでは、3つの観点から5年以内の不動産売却に影響する要素を解説します。
税金の観点からみる影響
税金の観点からみると、5年以内の不動産売却は不利になる傾向にあります。
不動産売却では「収入金額 −( 取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額」によって、課税譲渡所得金額が決定します。
そして、不動産の所有期間が5年以内であれば短期譲渡として、課税譲渡所得金額に対する所得税と住民税を合算した納税負担が高くなるのが一般的です。
この税率の違いによって、同額の売却益でも手取り額に差が生じやすくなるため、税率だけに着目すると損失が多いといえます。
費用の観点からみる影響
費用の観点からみると、5年以内の不動産売却が不利になるとは断言できません。
なぜなら、不動産売却で発生する課税譲渡所得金額は、取得費や譲渡費用を差し引いてから算出されるからです。
取得費や譲渡費用に計上できる項目には、以下のようなものがあります。
● 取得費:購入代金、(売却のための)リフォーム費や解体費など
● 譲渡費用:仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙税、取り壊し費用など
これらは、所有期間を問わず発生する費用ですが、所有期間が長くなるほど固定資産税や管理費、修繕費などの費用負担が積み重なる点には注意が必要です。
早期売却したほうが将来的に発生する維持費の負担を抑えられるケースもあるので、税率の違いで発生する損失と将来的なコストを比較して判断する姿勢が求められます。
タイミングの観点からみる影響
タイミングの観点からみると、5年以内の不動産売却が不利になるとは断言できません。
不動産の市場は、景気動向や金利水準、需給バランスなど複合的な要因が絡み合って相場価格や需要に影響を与えるからです。
長期譲渡になるまで数年寝かせている間に、市場相場が暴落すれば、低い税率が適用されても売却価格そのものが下がってしまい、利益につながらない可能性があります。
価格水準や市場の推移を冷静に分析し、需要が高くて高額取引が期待できるタイミングを見極められれば、5年以内の売却でも高い利益を生み出せるチャンスは十分にあります。
不動産売却における「5年ルール」とは
不動産売却における「5年ルール」とは、民法や実在する税制の正式名称ではなく、所有期間が5年を境に譲渡所得税の税率が変わる点を指しています。
所有期間が5年以内だと短期譲渡に該当し、比較的高い税率が課せられ、所有期間が5年を超えると長期譲渡に該当し、比較的低い税率が課せられるのが一般的です。
税率の差は、不動産売却で発生する売却益の手取り額に影響するため、俗に「5年ルール」と呼ばれる場面があります。
ただし、前述しているとおり、実際の不動産売却では税率の差だけでなく、市場の流れや特別控除の適用可否など複数の要素を踏まえた判断が欠かせません。
所有期間による税金の違い
不動産の所有期間によって譲渡所得が異なり、最終的に手元に残る金額にも影響するため、この仕組みを理解せずに売却活動をおこなうと想定外の損失を招きます。
ここでは、所有期間によって異なる税金の違いを解説します。
所有期間が5年以内の場合
不動産を取得してから5年以内に売却した場合、短期譲渡所得に区分されます。
短期譲渡所得に課せられる税率は、所得税30%・住民税9%に復興特別所得税が加算され、合計が約39%です。
短期間での転売が起こると、取引価格の高騰や市場の混乱を招くおそれがあるため、それらを抑制する目的で高い税率が適用されています。
購入したばかりの不動産を売却する場合、購入価格と売却価格の差が少なくても、譲渡所得税の負担が相対的に大きくなる可能性が高いです。
ただし、課税対象になるのは取得費や売却費用を差し引いた譲渡所得のため、売却益が発生しないケースや特別控除が適用されるケースでは、非課税になる場合もあります。
所有期間が5年超の場合
不動産を取得してから5年を超えて売却した場合、長期譲渡所得に区分されます。
長期譲渡所得に課せられる税率は、所得税15%・住民税5%に復興特別所得税が加算され、合計が約20%です。
5年を超える売却は、資産保有が目的であると判断され、短期譲渡所得の約半分の税率に抑えられており、売却時の手取り額が増えやすい傾向にあります。
ただし、税率が低くなる点だけを重視して売却時期を先延ばしにすると、市場価値の暴落や維持費の負担などで、最終的には損失が生じる可能性があるため注意が必要です。
相続や購入後5年以内の売却に関連する特例控除
相続や新規購入で取得した不動産を5年以内に売却する場合でも、税金面の負担を抑えるための制度を活用できる場合があります。
ここでは、相続や不動産購入から5年以内に売却する際、利用できる特別控除とその適用条件を解説します。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例は、居住用財産(自宅・マイホーム)を売却した際、課税譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる制度です。
売却活動を始める時点で、実際に居住している住宅のほか、新居に引っ越した後に残された住宅も対象になります。
特例を利用するには、自身が居住した事実がある、買主が親族や特別な関係者でない、過去2年以内に同じ特別控除を受けていないなど、一定要件を満たす必要があります。
これらの適用要件を満たせば、所有期間を問わず利用できるので、5年以内の売却でも課税譲渡所得額を大幅に減らし、納税負担を軽減できる可能性が高いです。
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例は、被相続人が1人で住んでいた住宅や土地を相続した際、一定期間内に売却すれば課税譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる制度です。
特例を利用するには、相続開始直前まで被相続人が住んでいた、相続後に収益目的で使用していない、耐震基準を満たすか解体するなど、一定要件を満たす必要があります。
相続開始から3年経過する年の年末までに売却した不動産が控除対象になるため、課税譲渡所得額を大幅に減らし、納税負担を軽減できる可能性が高いです。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例は、相続で取得した不動産を売却する際、支払った相続税の一部を取得費として加算できる制度です。
課税譲渡所得額は「収入金額 −( 取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額」で算出されるため、取得費の項目が増えれば、課税対象の割合を圧縮でき、納税負担の軽減につながります。
相続税を納付して、相続税の申告期限から3年以内に売却が済んでいれば、相続税と譲渡所得税の二重負担を緩和できる可能性が高いです。
5年以内の不動産売却で損をしないためのポイント
5年以内の不動産売却は、譲渡所得税の税率が高くなるため損すると指摘されがちです。
しかし、いくつかのポイントを押さえれば、納得できる売却が実現する場合もあります。
ここでは、5年以内の不動産売却で損しないためのポイントを4つ解説します。
特別控除の適用可否を確認する
所有期間が5年以内の不動産売却で損失を避けるためには、まず適用できる特別控除があるかの確認が重要です。
最大3,000万円の控除を受けられる制度や相続税と譲渡所得税の二重払いを避けられる制度を活用すれば、金銭的な支払い負担を大幅に軽減できます。
これらの制度は申請しなければ利用できないため、制度の内容を把握せずに売却活動を進めてしまうと、本来軽減できた税負担が発生する可能性が高いです。
対象となる不動産の取得方法や所有期間を整理し、適用できる制度があるかを確認してから、本格的な売却活動に取りかかりましょう。
不動産市場の動向を冷静に予測する
不動産売却では、譲渡所得税の税率だけでなく市場動向も重要な判断材料の1つです。
地価の上昇・下落、景気動向、金利水準、需給バランスなどが変動すると、売却価格への影響が避けられません。
5年を超える所有期間を満たせば長期譲渡所得で低い税率が課せられますが、その間に市場環境が変化すると、売却価格の下落に巻き込まれるリスクもあります。
長期譲渡所得になるまで待つ戦略が必ずしも有利になるとは限らないため、現状と将来の市場環境を冷静に予測して、判断する姿勢が重要です。
維持する負担や将来的な資産性を考慮する
不動産を所有し続ける場合、所有者に管理義務があり、固定資産税や管理費、修繕費などの維持コストが継続的に発生する点を考慮しなければなりません。
相続で取得した空き家や築年数の古い物件を放置すると、老朽化による倒壊や犯罪現場の温床になるリスクが高まり、近隣住民からの苦情や行政指導の対象になり得ます。
また、不動産の売却を先延ばしにするほど、人口減少や周辺環境の衰退が原因で将来的に資産価値が低下する懸念も出てきます。
単に税率が下がるまで所有期間を延ばすのではなく、将来的な資産性の低下リスクを踏まえた判断が求められます。
手続きの流れや期限を厳守する
不動産売却で特別控除の利用を検討している場合、手続きの流れや申請期限が細かく設定されている可能性が高いため、必ず確認しておきましょう。
とくに相続で取得した不動産が対象となる特別控除には、5年よりも短い申請期限が設けられており、売却時期や申告期日を過ぎると控除を受けられなくなります。
控除を受ける前提で売却準備を進めたものの、手続きや期限を守らなかったために納税負担が増えると、結果的には大きな損失につながります。
売却を検討する準備段階で、特別控除の適用可否と適用条件を同時に整理し、余裕のあるスケジュールで手続きを進める心がけが欠かせません。
まとめ
所有期間が5年以内の不動産売却は、譲渡所得税の税率が高くなるため、損するととらえられがちですが、すべてのケースに当てはまるとは限りません。
税率の高さのみを理由に売却を先延ばしにすると、市場動向や維持コスト、将来的な資産性などの要因によって、想定外の損失につながる可能性があります。
所有期間による税金の違いと同時に、特別控除の適用可否、手続きの期限を含めて整理し、最適な売却時期を見極められるようにしましょう。
