不動産売却で押さえるべき注意点とは?
相談から引き渡しの全体像で徹底解説2026.01.27
● 不動産をできるだけ高く売りたい
● 信頼できる不動産会社を見つける方法を知りたい
● 所有している不動産に対する最適な売却方法がわからない
このようなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
不動産売却は、人生で何度も経験するものではなく、日常的な取引と比べて高額なやりとりになるからこそ、入念な準備が欠かせません。
実績豊富で信頼できる不動産会社を見つけるのはもちろん、売主として想定されるリスクとその対策を講じる姿勢が重要です。
今回は、不動産売却の全体像を押さえたうえで、各プロセスにおける注意点を解説します。
この記事でわかること
● 不動産売却の準備段階で知っておくべき注意点
● 不動産会社や担当者選びの注意点
● 媒介契約や売却方法に関する注意点
はじめに:注意点を把握せずに不動産売却を進めるリスク
不動産売却では、事前に注意点を把握せずに契約を進めたために、売却条件や契約内容に関するトラブル事例が数多く報告されています。
不動産会社による強引な勧誘や不十分な説明によって、望まない契約を締結してしまう消費者からの相談件数も増え続けているのが現状です。
不動産売却で発生するトラブルの多くは、売却プロセスを十分に理解しないまま第三者に判断を丸投げしたり、自身での確認やリサーチを怠ったりする点が原因となっています。
大切な資産を納得できる形で売却するためにも、売主として基本的な売却プロセスや、各段階での注意点を事前に理解しようとする姿勢が求められます。
不動産売却で押さえたい全体の注意点
円滑な不動産売却を成立させるためには、全体像を把握したうえで、各プロセスで意識するべき注意点を押さえましょう。
ここでは、不動産売却における全体のプロセスで押さえたい注意点を4つ解説します。
売却の流れを把握する
不動産売却を始める前に、売主にどのような動きを求められるかを把握してください。
国土交通省が公表している不動産取引の流れは、以下のとおりです。
1. 不動産会社と媒介契約を締結
2. 購入申し込みがあれば、価格や引き渡し時期など条件を調整
3. 重要事項説明を受けて売買契約を締結
4. 残代金決済と引き渡し
上記の流れは、あくまで一例であり、実際の取引では不動産の状況や契約条件、仲介役の不動産会社の方針などで取引の流れが一部異なる場合があります。
なお、「媒介契約締結」「重要事項説明」「売買契約締結」は、宅地建物取引業法によって宅地建物取引業者(不動産会社など)から書面交付が義務付けられていますので、必ずご確認ください。
査定価格の高さだけで選ばない
複数の不動産会社から提示された査定価格に違いがあった場合、金額の高さだけでなく、根拠や販売戦略を確認するようにしてください。
不動産会社のなかには、高めの査定価格を提示して媒介契約を締結した後、理由をつけて売出価格や成約価格を引き下げるケースも少なくありません。
極端に相場よりも高い査定価格を提示された際は、担当者からの説明や実績を踏まえた判断が求められます。
優先順位を決める
売却を始める前に「時間がかかってもいいので高く売却したい」「多少の値下げ交渉に応じるつもりで売却期間を短くしたい」など優先順位を整理しましょう。
一般的な仲介取引による不動産売却では、媒介契約の締結から買主探し、売買契約、引き渡しまで複数のプロセスがあり、数か月を要するケースが一般的です。
優先順位を曖昧にすると、購入希望者からの価格交渉で素早く判断できず、売却チャンスを逃す原因につながります。
住み替えや税金の控除利用の都合で早期売却を希望するなら、相場価格での売り出しや積極的な価格交渉を行い、高額売却を希望するなら、売却期間の長期化を想定した計画が必要です。
売却後のトラブルを想定する
不動産売却では、引き渡し後にトラブルが発生するケースも珍しくありません。
売却した物件に事前告知をしていない不具合や欠陥が発覚した場合、売主に対して契約不適合責任を問われる可能性があります。
雨漏りやシロアリ被害、設備不良などが代表例であり、裁判で損害賠償請求や契約解除などが認められた事例も存在します。
物件に関する不安要素をすべて伝えるほか、インスペクション(建物状況調査)やシロアリ点検、瑕疵保険への加入もご検討ください。
不動産売却前におこなうべき事前準備と注意点
不動産売却のプロセスではさまざまな手続きや意思決定が求められるため、入念な事前準備をするか否かが重要なポイントとなります。
ここでは、不動産売却を始める前に確認しておくべき準備事項と注意点を解説します。
売却目的を明確にする
不動産売却を始める前に、最初におこなうべき準備事項が売却目的の明確化です。
● 自分もしくは親族の住み替えのため
● 生活費や事業費など資金調達のため
● 公共用地になるため
● 相続資産を整理するため
● 管理できなくなった空き家を手放すため など
売却目的が曖昧なまま売却準備に取り掛かると、相続税の支払いや控除対象期限に間に合わず金銭的な負担が発生したり、価格交渉の判断が揺らぎ売れ残ったりする懸念があります。
媒介契約にも複数の類型があり、売却目的や優先順位が明確であるほど、情報拡散に強い一般媒介、戦略売却に強い専任媒介・専属専任媒介のどれが適切かを判断しやすくなります。
市場調査で相場感を把握する
不動産売却では、売主自身で市場調査をおこない、相場感を把握する準備も欠かせません。
査定後に提示される見積価格は、立地や周辺環境などを踏まえて算出されるため、市場調査を事前に済ませておくと、提示された金額の適正さを判断しやすくなります。
インターネット上に掲載されている売出価格は、売主の希望売却価格であり、実際の成約価格とは異なるケースがあるため、参考にする際には注意が必要です。
国土交通省が公開する不動産情報ライブラリからは、過去の取引事例に基づく成約価格を確認できるため、客観的かつ現実的な相場を把握するための情報として役立てられます。
権利関係を整理する
不動産売却では、建物や土地のほか、権利関係の整理も準備事項に含まれます。
よくある権利関係の売却トラブルとして、以下のような項目があります。
● 売主と登録名義が一致しているか
● 抵当権が抹消されているか
● 共有名義の場合は共有者全員から同意を得ているか
● 借地権が設定されていないか など
権利関係を整理しないまま売却活動を始めた場合、購入希望者が見つかりにくかったり、契約手続きを中断せざるを得なくなったりするおそれがあります。
共有名義や抵当権、借地権などが絡んだ権利問題は、整理するだけで一定の時間を要するケースが多いため、売却計画にも影響を及ぼす可能性があります。
登記事項証明書などを取り寄せて権利関係を把握し、必要に応じて早い段階で不動産会社や専門家に相談するようにしてください。
リフォームや解体の必要性を判断する
所有している建物が古い場合、売却活動を始める前にリフォームや解体をおこなうべきか悩むケースもでてくるでしょう。
しかし、必ずしもリフォームや解体を選んだほうが売却に有利になるとは限りません。
国土交通省の調査では、中古住宅選びの理由として「適切な価格だったから」の項目が過半数を超えており、価格の妥当性や納得感を重視していると推測できます。
新築住宅よりも価格を抑えられる点は、中古住宅における大きなメリットでもあり、購入後に自分好みのリフォームを検討する方も多い点を踏まえて、慎重な判断が求められます。
不動産会社選びで失敗しないための注意点
不動産売却では、どの不動産会社と媒介契約を締結するかによって、成約までの期間、売却価格、取引の安心感が大きく異なります。
ここでは、不動産会社選びで押さえたい3つの注意点を解説します。
売却目的や不動産条件に応じて会社の規模を選ぶ
不動産会社には、全国規模で運営している大手から地域密着型の中小まで多様な規模があり、それぞれ強みとする戦略が異なります。
大手は広告による集客力と蓄積された確かなノウハウを活用した営業力が期待できる一方、地域密着型は地域特有のネットワークにアプローチできます。
また、住宅ローンの支払いができずに任意売却を検討しているなど事情がある場合、弁護士や司法書士と連携して対応してもらえる環境が整っているかが重要です。
根拠や対応力から信頼性を見極める
複数社に査定依頼を出した際、見積価格の高さだけで選ぶのはリスクがあります。
見積価格はあくまで市場に売り出す価格の目安でしかなく、実際の成約価格とは大きく異なる可能性があるため「なぜこの価格になるのか」の根拠を示してもらいましょう。
曖昧な説明だけで契約を迫る不動産会社は避け、不動産の基本情報や市場調査の結果を踏まえた価格の根拠や計算方法を提示してもらえる不動産会社を選ぶと安心です。
また、デメリットやリスクも正直に説明してもらえるか、質問に対して丁寧かつ迅速に回答してもらえるかどうかも、不動産会社の質を見極めるポイントとなります。
勧誘に流されて即決せずに冷静に比較する
不動産会社のなかには、しつこい勧誘や即決を迫られるケースがあるので注意が必要です。
実際に国民生活センター宛に「強引な勧誘で市場価格より安く売却してしまった」「契約解除を申し出たら高額な違約金を請求された」などの相談が数多く寄せられています。
威圧行為・迷惑な時間帯の勧誘・勧誘の継続行為などは、宅地建物取引業法によって禁止されています。
電話や訪問などの勧誘があっても、その場で契約せず、契約内容の妥当性や対応力を総合的に判断し、納得できるまで契約しない姿勢が不可欠です。
媒介契約に関する注意点
不動産売却における媒介契約とは、買主を探すための仲介役となる不動産会社(宅地建物取引業者)と締結する契約を指します。
ここでは、媒介契約を締結する際に押さえたい3つの注意点を解説します。
媒介契約の種類を理解する
宅地建物取引業法によって媒介契約には、3つの類型があります。
| 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
| 基本概要 | 複数の不動産会社に同時依頼できる | 依頼できる不動産会社が1社のみ | 最も制約が多い |
| 依頼者に課せられる制約 | 制約なし | 自己発見取引が可能 | 自己発見取引が不可 |
| 不動産会社に課せられる義務 | レインズ登録は任意報告義務は任意媒介契約の有効期限は法令上の上限なし | レインズ登録義務(7日以内)2週間に1回以上の報告義務あり媒介契約の上限は3か月以内 | レインズの登録義務(5日以内)1週間に1回以上の報告義務あり媒介契約の上限は3か月以内 |
契約類型によって、売主と不動産会社の双方に課せられる制約や義務が変わります。
情報拡散力が高く、売主が主体となって購入希望者を探したいと考えているのであれば、制約の少ない一般媒介契約が適しているといえるでしょう。
一方で、不動産会社から販売活動の進捗状況を共有してもらいたい場合、報告義務のある専任媒介契約や専属専任媒介契約が向いています。
契約内容はすべてに目を通す
媒介契約を締結する際には、契約書に記載された内容を十分に確認してください。
媒介契約書で確認するべきチェックポイントとして、以下のようなものがあります。
● 媒介契約の契約期間
● 報告義務の頻度
● 指定流通機構(レインズ)への登録義務の有無
● 仲介手数料の取り扱い
● 売却活動に関する重要事項 など
内容を理解しないまま媒介契約を結ぶと、ほかの不動産会社に相談できないなどの思わぬ制約が発生したり、積極的な売却活動に踏み出してもらえなかったりする原因になります。
契約内容でわからない点は、必ず担当者に確認して納得してから締結すると、売却活動でのトラブルを防げます。
仲介取引以外の選択も検討する
不動産売却には、仲介取引以外にも複数の方法があります。
● 買い取り:専門業者が買主となり売買取引をおこなう
● リースバック:自宅を売却して資金を得た後、家賃を払って自宅に住み続ける
● 任意売却:金融機関から同意を得て売却する
買い取りは、仲介取引よりも売却価格が低くなりますが、売却期間を短縮したい場合や購入希望者が見つかりにくい条件がついている場合に有効です。
また、生活資金が足りない場合はリースバック、住宅ローンの支払いが厳しくなった場合は任意売却が活用できる可能性がありますが、それぞれ契約条件があるので事前確認が欠かせません。
仲介取引に固執せず、自身の生活や不動産情報を踏まえて、最適な売却方法を検討すると、悔いのない不動産売却につながります。
まとめ
不動産売却では、売却目的や優先順位を明確にし、売主自身でも全体の流れや注意点を理解したうえで進める意識が重要です。
また、見積価格の根拠や担当者の対応力を見極められれば、質の高い不動産会社と媒介契約を締結でき、最後まで安心して売買取引を成立させられる可能性が高まります。
近年、強引な勧誘や十分に理解しないまま締結した売買契約による相談件数が増えているため、事前準備と冷静な判断を重ね、納得できる不動産売却を実現しましょう。
