不動産売却時の3,000万円控除を受けるには?
手続きの方法も解説2026.01.27
● せっかくマイホームが高く売れたのに税金で手取りを減らしたくない
● 節税効果が高い制度だから、手続きでミスをしたくない
● どういう制度なのか、自分も利用できるのか気になる
このような悩みを抱えている売主様は少なくありません。
不動産売却時の3,000万円控除制度は、場合によっては数百万円の節税効果をもたらすため、手続きで失敗をするわけにはいきません。
失敗しないためには、手続きの方法や、自分が利用できるかどうか調べ、必要書類を用意する必要があります。
今回は、3,000万円控除制度の仕組みや要件、手続きなどを解説するので、参考にしてください。
この記事でわかること
● 3,000万円控除制度の手続きの流れ
● 3,000万円控除制度に必要な書類
● 3,000万円控除制度で注意するべきケース
不動産売却で活用できる「3,000万円控除」の全体像と仕組みを徹底解説
不動産売却によって受けられる3,000万円控除制度の活用により、数百万の節税効果を得られたり、所得税自体がかからなくなったりする可能性があります。
ここでは、3,000万円控除制度の仕組みを解説します。
3,000万円控除とは
3,000万円控除とは、不動産売却で利益を得た際に、譲渡所得から最大で3,000万円まで控除できる制度です。
譲渡所得とは不動産売却によって出た利益を指し、この譲渡所得の金額に応じて所得税・住民税・復興特別所得税がかかります。
この譲渡所得を3,000万円まで控除できるため、数百万単位の節税、場合によっては所得税や住民税の負担を免除できるケースもあります。
この3,000万円控除制度は、自宅の売却であれば適用できるため、多くの方々の利用が可能です。
ただし、適用条件が定められており、場合によっては利用できないケースもあります。
そのため、利用する前に、自分が対象かどうかをチェックしておきましょう。
3,000万円控除を利用した場合の税額は
3,000万円控除制度は、譲渡所得の金額を控除できる制度です。
まずは、どのように譲渡所得税が計算されるのかを覚えておきましょう。
譲渡所得の計算式は、以下のとおりです。
● 売却金額-(取得費+譲渡費用)
取得費とは、不動産を購入する際にかかった費用です。
具体的には、以下の費用が該当します。
● 不動産の購入代金
● 不動産取得税
● 仲介手数料
● 整備費・改良費
● 登録免許税
● 印紙税
● 立退料
● 造成費用
● 測量費
取得費がわからない場合は、売却金額の5%を概算取得費として計上が可能です。
しかし、購入代金を計上するときと比べて譲渡所得の金額が大きくなってしまうときは、かかる税金も高くなってしまう可能性があります。
また、購入代金については、所有期間中の減価償却費を代金から差し引かなくてはなりません。
そのため、購入代金がわかっても、その購入代金全額を計上できないケースもあります。
譲渡費用は、売却時にかかる費用です。
具体的には、以下の費用が譲渡費用になります。
● 仲介手数料
● 印紙税
● 立退料
● 解体費用
● 名義書換料
名義書換料とは、借地権が設定されている土地において、借地権譲渡にあたり、地主の承諾を得るために支払うお金です。
譲渡所得金額を計上したあとは、その譲渡所得金額に、所有期間に応じた税率がかかります。
| 所有期間 | 所得の種類 | 税率 |
| 1月1日時点で5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63% |
| 1月1日時点で5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315% |
税率は、所得税・住民税・復興特別所得税の3つを合わせた金額です。
3,000万円控除を利用した際の税金シミュレーション
実際に、3,000万円控除制度を利用した際の、不動産売却時の税金を計算してみましょう。
仮に、不動産売却金が4,500万円、取得費がわからないため売却金の5%を計上、譲渡費用が400万円、所有期間が8年だとします。
まずは、譲渡所得を、以下のように計算します。
● 4,500万円-(225万円+400万円)=3,875万円
この3,875万円から3,000万円が控除され、譲渡所得を課税されるのが875万円です。
所有期間が8年であるため、長期譲渡所得となります。
つまり、875万円に20.315%の税金がかかり、所得税・住民税・復興特別所得税を含めた金額は、約177万円です。
もしこの3,000万円の控除を利用しなかった場合は、3,875万円に20.315%の税金がかかり、納税額は約787万円になります。
今回の事例では、3,000万円の控除制度により、約600万円の節税効果を期待できます。
3,000万円控除の「適用要件」と注意すべきケースをわかりやすく解説
3,000万円控除制度に大きな節税効果がありますが、誰しもが利用できるわけではありません。
ここでは、3,000万円控除制度の適用要件と、注意したほうがよいケースを解説します。
控除の適用要件
3,000万円控除制度の適用要件を事前に覚えておけば、自分が利用できるかどうかがわかります。
ここでは、3つの要件を解説するので、参考にしてください。
売却したのが居住用財産である
そもそも居住用財産とは、自分が本拠地として利用していた建物とそこにある土地です。
つまり、マイホームとして利用している家とその土地です。
住民票を置いただけでは適用されず、実際に生活をしている必要もある点も覚えておきましょう。
以下は居住用財産とはならないため、控除制度を利用できません。
● 投資用の建物
● セカンドハウスや別荘
● 仮住まいとして利用していた家
● 親族に無償で貸し出しており、自分は住んでいない家
また、3,000万円控除制度を利用するのだけが目的で住んでいたとみなされた場合は、同様に適用要件から外れるため、注意してください。
反対に、名義人が単身赴任で家に住んでおらず、配偶者と子どもしか住んでいない場合は、単身赴任が終わったら名義人がその家に住むと認められれば要件に該当します。
過去2年間で特定の控除制度を利用していない
過去2年間に、以下の控除制度を利用していた場合は、3,000万円控除制度を利用できません。
● この控除制度(マイホームを売ったときの特例)
● マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
● 住宅ローン控除
マイホームを買い換えた際に損失が発生した場合に、その損失を給与所得から差し引ける制度があります。
この制度を昨年か一昨年に利用していた場合は、3,000万円控除制度が利用できません。
住宅ローン控除は、50万円を上限として、年末の住宅ローン残高の1%の金額を所得税から減らせる控除制度です。
昨年か一昨年にこちらを利用していた場合も、3,000万円控除制度を利用できません。
当然ながら同時の併用もできないため、どちらの節税効果がより高いかを、考えましょう。
相手が親族ではない
売却相手が特別な関係にある人は、売却の対象外となります。
具体的には、売却相手が以下に該当するケースです。
● 親子・兄弟姉妹
● 夫・妻
● 生計をともにする親族
● 売却したあとにその家で同居する親族
● 特別な関係にある法人
売却したあとにその家で同居する親族とは、たとえば自分が子どもと同居しているときに、その子どもに家を売却し、自分も引き続きその家に住み続けるケースです。
注意すべきケース
これらの要件を覚えたうえで、要件から外れてしまう可能性があるケースがあります。
事前に、覚えておきましょう。
居住用としてみなされない可能性がある
売却不動産が居住用かどうかは、住民票があるかどうかで判断されます。
住民票を移さずに居住する人がいますが、その場合は、3,000万円控除制度が利用できないケースが散見されます。
住宅ローンを利用して不動産を購入した場合は、新しい住民票を金融機関に送らなければいけないため、基本的には気にする必要はありません。
注意すべきなのは、住宅を現金で一括購入した場合です。
住宅を現金で一括購入した場合は、住民票を金融機関に送る必要がないため、住民票の移転を失念している可能性があります。
ただし、住民票があるだけで適用されるわけではありません。
3,000万円控除を利用する目的で住民票を移したと判断された場合は、投資用物件の売却となり、控除制度を利用できません。
実際にその家で生活していた実態があって、初めて3,000万円控除制度の対象となる点に注意が必要です。
現在は住んでいない
たとえば、親が住んでいた実家を相続したが、自分はその家に住んでいないため、その不動産を売却するとします。
その場合は、住まなくなった日がいつかによって、適用されるかどうかが異なります。
3,000万円控除制度では、住まなくなったときから3年を経過する日の12月31日までに売却すれば適用対象です。
もし2023年の4月から引っ越していた場合は、3年が経過する日の12月31日は2026年の年末となるため、2026年内に売れば制度を適用できます。
反対に、2022年以前から引っ越していた場合は、すでに3年が経過しているため、3,000万円控除制度を利用できません。
相続後の空き家は、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除(通称:空き家特例)」が適用されます。
空き家特例には「耐震基準の適合」や「取り壊し」などの厳しい要件があるため、空き家再生の専門家へ早めに相談をしましょう。
家を解体した
昔は住んでいた家だったが、今は別の家に住んでおり、その家を解体していたとします。
その土地を売るときに3,000万円控除制度を利用する場合は、追加で以下の要件を満たさなくてはいけません。
● 土地の譲渡契約を家屋取り壊しから1年以内に締結している
● 住まなくなってから3年が経過する年の12月31日までに売る
● 家屋取り壊しから譲渡契約締結までに、その敷地をその他の用途に使っていない
その他の用途としては、貸駐車場などが該当します。
月極駐車場として運営していた場合は、3,000万円控除制度の対象外となるため、注意してください。
任意売却でも適用できる?
住宅ローンの返済が厳しく任意売却を選択する場合も、譲渡所得が発生したときは、3,000万円控除制度を適用対象です。
特例を活用すると、競売を回避して手元に資金を残せる可能性もあります。
債務超過だから税金は関係ないと勝手に判断せず、任意売却を扱う不動産会社か法律の専門家に相談してみましょう。
3,000万円控除の「手続き方法」と確定申告に必要な書類リスト
手続きを事前に知っておけば、申請する際のトラブルを防げます。
ここでは、手続き方法と必要な書類を解説するので、覚えておきましょう。
確定申告時の手続き方法
3,000万円控除制度を利用するときは、確定申告をおこなわなくてはいけません。
確定申告は、翌年の2月16日から3月15日までです。
もし2026年の間に不動産売却をして、3,000万円控除制度を利用する場合は、2027年の2月16日から3月15日の間に確定申告をします。
さらに、自宅売却による利益は譲渡所得にあたるため分離課税となり、給与所得などとは別に申告しなければいけません。
つまり、会社員であっても確定申告をおこなわなければいけないため、あらかじめ覚えておいてください。
さらに、3,000万円控除制度を利用すれば税金がかからない場合であっても、制度を利用するのであれば確定申告が必要です。
必要書類
確定申告には多くの書類が必要となります。
そのため、余裕をもって書類を用意しておく必要があります。
必要書類は、大まかに分けて5つです。
確定申告書・譲渡所得内訳書
確定申告書と譲渡所得内訳書は、最寄りの税務署や国税庁のホームページからダウンロードできます。
譲渡所得内訳書には、以下を記載します。
● 不動産の所在地
● 売却額
● 購入額
● 売却の際の経費
● 代金の受け取り状況
上記の5つを、かならず記入してください。
売買契約書の写し
自宅を売却した際の売買契約書の写しも必要です。
また、取得費を計上する場合は、購入したときの売買契約書の写しも用意しなくてはいけません。
購入時の売買契約書はなくても申告は可能ですが、その場合は売却額の5%しか取得費に計上できなくなります。
あるのとないのとでは数百万円も税額が変わる可能性があるため、できれば用意しておいてください。
領収書の写し
売買契約書の写しと同様に、領収書の写しも必要となります。
こちらは、仲介手数料・印紙税・登録免許税・解体費用などを支払った際の領収書や、借地権付物件の売却で支払った名義書換料に対する地主の受取書が該当します。
譲渡費用は、当然、取得費を計上する場合にも必要です。
用意できれば取得費の計上が可能になるため、できる限り用意しておくとよいでしょう。
本人確認書類
確定申告にはマイナンバーカードか本人確認書類のコピーが必要です。
本人確認書類をすぐに用意できない人は少ないと思われますが、あらかじめ覚えておきましょう。
インターネットで確定申告をおこなう場合は、本人確認書類は不要です。
ただし、手続きの際にマイナンバーの入力、もしくはマイナンバーカードの読み取りと利用者証明用電子証明書などのパスワード入力が求められます。
源泉徴収票
給与所得がある人は、源泉徴収票も用意しなくてはいけません。
源泉徴収票に記載された内容を、確定申告書に転記するためです。
確定申告の際に出す必要はありませんが、なければ確定申告書を作成するのに苦労します。
3,000万円控除の適用で節税するための事前準備と専門家相談のすすめ
3,000万円控除制度を利用するにはさまざまな書類や手続きが必要となるため、事前の準備が大切です。
ここでは、2つに分けて解説します。
申告時の手順を知っておく
確定申告の際の手順の把握により、手続きを円滑に進められます。
申告の流れは、以下のとおりです。
1. 書類を揃える
2. 譲渡所得の計算をする
3. 確定申告書・譲渡所得内訳書を作成
4. 税務署に提出し、納税
納税額に間違いがなければ、これで完了となります。
申告時のトラブルを事前に知っておく
3,000万円控除制度を利用するうえでよくあるトラブルは、以下の3つです。
● 居住用財産である説明が不足
● 取得費を証明する書類が見つからない
● 登記住所と実際の居住地が違う
居住用財産である説明が不足していると、たとえ長年にわたって住んでいても、実際には住んでいないと判断されてしまいます。
公共料金の領収書や郵便が届いていた点を説明すれば、生活していると判断される可能性があります。
また、取得費を証明するものがなくても、売却金の5%を取得費として計上できますが、支払い税額が多くなる点を覚えておきましょう。
迷ったら税理士などの専門家に相談しよう
3,000万円控除制度の適用要件や手続きについてわからない点があれば、税理士などの専門家に相談しましょう。
自分1人で手続きをするよりも確実なうえ、個人の収入や状況を踏まえた節税のアドバイスもしてくれるからです。
自己判断だけでは、用意する書類に不備が出やすく、適切に制度を利用できないほか、支払う税金が多くなるリスクが考えられます。
まとめ
3,000万円の控除制度とは、譲渡所得税を計算するうえで出てくる譲渡所得から3,000万円まで控除できる制度です。
支払い税額を数百万円も抑えられるため、利用できそうであればかならず利用しましょう。
しかし、売却したのが居住用財産である・過去2年間で特定の控除制度を利用していない・売買の相手が親族や特別な関係ではないなどの要件があります。
また、控除制度を利用したときに税金がかからなくても、確定申告の必要があるため注意してください。
