不動産売却で住民税が上がりにくくするには?
特別控除や資金計画について解説2026.01.27
● 不動産の売却を考えているけど住民税が上がるのはなぜ?
● いくら上がるのか、今年売った場合、課税されるのはいつか知りたい
● 住民税の負担を軽減する具体的な方法ってあるの?
不動産売却で譲渡所得を得た場合、翌年度の住民税は上がります。
住民税は課税額を決めるいくつかの要素によって、税額が大きく変わるため、不動産売却を考える人は入念なシミュレーションをおこなわなければなりません。
本記事では、主に翌年に影響が出やすい「住民税」に焦点を当て、不動産売却で住民税が上がりにくくするための方法について解説します。
この記事でわかること
● 不動産売却によって住民税があがるメカニズムがわかる
● 住民税の負担を軽減するための具体的な行動がわかる
● 実際、不動産売却で住民税がどう影響を受けるのかがわかる
はじめに
不動産を売却した際、利益が出ると翌年の住民税は上がります。
通常、住民税の税額通知は5〜6月頃に来るため、家や土地を手放したタイミング次第では、忘れた頃に想定以上の住民税が通知される可能性は大いにあるでしょう。
つまり、不動産の売却では「いくらで売れるか?」にばかり気をとられますが、金銭的な負担を包括的に考えるなら「税金がどのくらい上がるか?」も加味する必要があります。
とくに、所得税は確定申告の際に徴収されますが、住民税については確定申告をした数か月後に通知がきて正確な課税額が判明するため、備えが必要です。
不動産売却により翌年の住民税が上がる仕組みを徹底解説
不動産売却によって譲渡所得が発生すると、翌年の住民税は増えます。
住民税が上がる理由は、譲渡所得=売却益に住民税が課せられるからです。
ただし、厄介なのは不動産売却によって課せられる税金には住民税の他に所得税があり、それぞれ課税されるタイミングが異なります。
まずは基礎知識として、家や土地を売って住民税が上がる仕組みについて見ていきましょう。
不動産売却の売却益がプラスに転じると住民税は上がる
不動産を売却して住民税が上がるのは、譲渡所得がプラスに転じた場合のみです。
損失が出たり控除によってプラス分が出たりしなければ、課税されないので住民税は上がりません。
一般的に、譲渡所得は不動産を売った価格(売却額)から不動産を購入した際の金額(取得費)と売るのにかかった諸費用(譲渡費用)を差し引く方法で算出します。
この譲渡所得が0を上回れば税金がかかる仕組みです。
また、譲渡所得に対して課税されるのは住民税と所得税ですが、税率は不動産をどのくらい所有していたかによって変わります。
住民税の基礎知識
住民税とは、お住まいの地方自治体に納める地方税です。
市区町村と都道府県に対して納める税金を合算したもので、所得税がベースとなって計算されているため不動産売却の譲渡所得も対象になります。
通常、譲渡所得は他の所得と合算しない分離課税で、課税額は前年度の所得によって決まるものです。
税率は不動産の所有期間で決定し、5年を超える場合は5%、5年以下なら9%になります。
不動産売却の住民税はいくら?計算方法や必要な費用一覧
不動産売却時の住民税を計算する流れは以下のとおりです。
● 課税所得を算出する
● 実際の数値で計算する
● 所有期間に応じた税率をかける
具体的な数字を入れたシミュレーションを解説します。
● 売却価格:3,500万円
● 購入価格(取得費):2,800万円
● 売却時の諸費用(仲介手数料・印紙税など):200万円
● 所有期間:7年(5年超)
まず、譲渡所得は売却価格(3,500万円)から取得費(2,800万円)と譲渡費用(200万円)から差し引いた額なので500万円になります。
次に、譲渡所得の500万円に税率をかけますが、所有期間によって異なる税率は5年超の場合は5%、5年以内の場合は9%です。
譲渡所得が500万円の場合、5%なら25万円、9%なら45万円になります。
不動産売却時の住民税の負担を軽減できる方法
不動産売却時にかかる住民税を軽減するには、いくつか方法があります。
ここでは、特別控除と損益通算・繰越控除について見ていきましょう。
不動産の種類によって利用できる特別控除
不動産売却時は、税負担を軽減してくれる特別控除なるものが存在します。
手放す土地や建物が特定の要件に該当する場合に課税額が控除され、それにより課税額がゼロになるケースも少なくありません。
代表的な特別控除には、以下のようなものがあります。
● マイホームや空き家の売却に使える3,000万円の特別控除
● 公共事業を推進するための売却に使える5,000万円の特別控除
● 農地の有効活用するための集約化に使える800万円の特別控除
いずれも、居住用の建物であったり空き家であったりといった事実関係を証明すれば税負担を大きく軽減できる特別控除です。
譲渡損失が出た場合に使える損益通算と繰越控除
損益通算とは、不動産売却によって出た譲渡損失を別の所得と通算できる制度です。
通常、不動産売却によってマイナスが出る=譲渡損失が出た場合は税金がかかりませんが、損益通算すれば別の所得に対する課税額を軽減できます。
つまり、不動産売却による譲渡損失は給与所得などの所得と相殺できるのです。
さらに、初年度に損益通算をおこなった場合に控除しきれなかった損失については、翌年から3年間、繰り越して控除できます。
この制度は繰越控除と呼ばれ、不動産の所有期間が5年超になる長期譲渡所得に該当する場合にのみ利用可能です。
不動産売却時に住民税が上がりにくくする行動とは?
不動産売却時に住民税が上がるのは、制度の仕組み上不可避ではあります。
しかし、仕組みを理解しているからこそのシミュレーションと事前準備を徹底すれば、根本的に住民税が跳ね上がりにくくなる可能性があるでしょう。
ここからは、住民税の負担を多少なりとも軽減する具体的な方法について解説します。
譲渡所得を正しく把握して課税額を減らす
不動産売却時の住民税は、譲渡所得の金額をもとに計算されるため、減らせれば課税額も軽減できます。
通常、課税所得は売却価格から不動産を取得するのにかかった費用や仲介手数料などを差し引くので、漏れなく計上するようにしてください。
過去の売買契約書を探しきれずに概算取得費を活用する場合もありますが、できるだけ実際の契約書の金額を引用した方が課税所得を減らしやすくなります。
地道な方法ではありますが、住民税が必要以上に課税されるのを防ぐのには有効です。
特別控除や特例の適用要件について把握しておく
不動産売却時に課税される住民税を抑えるうえで欠かせないのが、各種特別控除や特例の活用です。
しかし、いずれの方法も適用される条件を満たす必要があります。
たとえば、代表的な特別控除であるマイホーム売却に使える3,000万円の特別控除は、投資用の不動産や仮住まいなど居住実態が把握できない場合には使えません。
また、同じ家の売却でも相続した家の場合は空き家の特例を使うべきなど、状況次第で使う制度を変える必要もあります。
きっと使えるだろうと詳細を確認せず、いざ手続きの段階になって制度が利用できないとなると税負担の軽減はかないません。
所有期間が5年前後になる不動産は売却時期を見極める
急ぎで売却を進める必要がなければ、所有期間が5年超になるように売却期間を調整するのも1つの手です。
所有期間が5年以内の不動産にかかる住民税の税率は9%ですが、5年を超えると5%になります。
所有期間のカウントは毎年1月1日に更新されるので、売却を考える直近で所有期間が5年を超える場合は売却時期を工夫して税率を下げましょう。
判断に迷う場合は専門家の意見も参考に
不動産売却時の住民税は、いくつかの方法で軽減する手段はあるものの、実際の税務を素人がミスなくやり遂げられるかについては不安感がぬぐえません。
実際、いざ不動産売却する際に「住民税が上がる可能性があるのは理解しているが、具体的な対策がわからない」といった声も多く聞かれます。
判断ミスが怖いなら、不動産売却を考えた時点で専門家に相談するのも1つの手です。
自身でも情報収集しながら、税務に精通した不動産会社を頼ってみましょう。
不動産売却時の住民税に関するよくある質問
不動産を売却した際の住民税について、よくある質問をまとめました。
家を売ったのは去年なのになぜ翌年の住民税が上がるのですか?
住民税は前年度の所得を加味して計算されます。
つまり、2027年度の住民税の計算に用いられるのは、2026年1月1日〜12月31日までの期間中に得た所得の合計額です。
サラリーマンの場合、12月におこなわれる年末調整を経て翌年の3月におこなわれる確定申告が終わると税金にまつわる諸手続きが終わったような印象を受けます。
しかし、実際に住民税の通知が来るのは例年5〜6月頃で、さまざまな手続きが終わったあとにくるため、跳ね上がった税額に驚くケースも少なくありません。
住民税は前年度の所得を参考にして決まるため、あとから税金が上がったような印象が強いでしょう。
不動産を売っても住民税が上がらない可能性はありますか?
不動産を売って売却益が出た場合でも、各種特別控除や特例を駆使して課税所得をゼロにできれば住民税は上がりません。
また、譲渡損失が出た場合は翌年度以降に繰り越して控除も受けられます。
不動産を売ったら必ずしも住民税が上がるわけではないので、詳細を把握するためにも細かくシミュレーションするのがおすすめです。
具体的に家を売った際に住民税はいくら上がりますか?
不動産売却時の住民税は、所有期間が5年を超えるか否かで税率が5%か9%になります。
たとえば譲渡所得が200万円であった場合、所有期間が3年であれば住民税は18万円ですが、所有期間が7年の場合は10万円です。
しかし、譲渡所得が1,000万円を超えてくると住民税も50〜90万円にものぼるため、利益が出るほど住民税の上り幅も大きくなってしまいます。
住民税がいくらになるかは確定申告の時点でわかりますか?
確定申告の際に精算されるのは住民税ではなく所得税です。
確定申告の段階で特別控除などの適用は通りますが、住民税の確定通知が送られてくるのは約2、3か月後の5〜6月になります。
確定申告の時点ではわからないので注意してください。
住民税の節税対策はいつから始めるのがベスト?
不動産売却における住民税の節税対策は、土地や建物を売る前から計画しましょう。
理由は、不動産の所有期間に応じて税率が変化し、取得費や売却にかかる諸経費の明細を調べるなど一定の時間がかかってしまうからです。
不動産を売却すると、必ず翌年の3月におこなう確定申告で手続きをおこなう必要があります。
このタイミングを逃すと税負担を軽減する方法はありません。
なるべく住民税を上げないように工夫するためには、売却時期や節税対策方法を考えておく必要があるため、売る前から計画を立てるのがベストです。
不動産売却時の3,000万円の特別控除は必ず使える?
マイホームや空き家を売却した際に使える3,000万円の特別控除は、適用要件を満たした場合にのみ使える制度です。
特別控除が使えるかどうかで税額は大きく変動するため、要件を満たしているかについては必ず事前に確認しておきましょう。
また、農地や公共事業のための売却など特別控除や特例の種類は多岐に渡ります。
どの制度が利用できるかも調べておくのがおすすめです。
まとめ
不動産を売却して譲渡所得が得られる=利益が出ると、翌年の住民税は上がります。
住民税は前年の1月1日~12月31日までの所得をもとに計算されますが、年度をまたぐため住民税の通知は忘れた頃にやってくるような印象があるのも仕方ありません。
住民税がいくら上がるかは、譲渡所得と税率がいくらになるのかで決まります。
譲渡所得も概算取得費で計算するより、実際の売買契約書で計算した方が抑えられる傾向にあるため、できるだけ不動産売却は事前に準備して進めていくようにしましょう。
