相続登記から不動産売却までの流れを解説!
スムーズに進める方法や注意点も2026.01.27
● 相続不動産をすぐ売却する場合、相続人への名義変更は省略できる?
● 不動産を相続しても、そのまま名義変更しなければどうなるの?
● 相続した不動産を売却する場合のポイントや注意点が知りたい
諸事情により「相続した不動産をすぐに現金化したい」と不動産売却を急ぐケースは珍しくありません。
ただし、相続不動産を売却するには先に相続登記を済ませておく必要があります。
そこで今回は、相続後に不動産売却を検討されている方向けに、相続登記の手続きの流れやポイントなど、売却時の注意点やトラブル事例も含めて解説します。
この記事でわかること
● 不動産売却の前にやっておくべき相続登記の手続きの流れと注意点
● 相続登記と売買登記を同時進行できるのか、その場合の売却リスク
● 相続登記から不動産売却までの手続きをスムーズに進めるためのポイント
相続した不動産を売却するには相続登記が必要!手続きの全体像と流れを解説
相続した土地や建物を処分したくても、名義が故人(被相続人)のままになっていると売却はできません。
そのため、相続をしたらまず相続登記の手続きをおこない、相続人への名義変更をしておく必要があります。
ここでは、相続から不動産売却までの全体像と流れを解説します。
ステップ1:相続発生(遺言状の有無を確認)
相続が発生したら、遺産を特定・調査したうえで、有効な遺言書の有無を確認します。
遺言書があるときは遺言書に基づいて遺産分割をおこない、遺言書がないときは相続人を確認したうえで、複数人いるときは遺産分割協議へと進みます。
ステップ2:遺産分割協議
相続割合を遺産分割協議で決める場合、単独相続を除けば「共有分割」「代償分割」「換価分割」の3パターンで分割するケースが多いです。
【共有分割】
1つの相続不動産を複数の相続人で共有する相続方法です。
一見すると平和的解決に思えますが、不動産売却や改築をする際には共有者から同意を取り付ける必要があるので、将来的にトラブルに発展する可能性があります。
【代償分割】
1人の相続人が遺産を一括相続し、別の相続人に相続分のお金を支払う相続方法です。
「このまま住み続けたい」「売却して現金に換えたい」など、相続人の意見がまとまらないケースに用いられます。
【換価分割】
相続不動産を現金化して、相続人で売却金額を分割する相続方法です。
不動産を現金化すると遺産を均等に分割できるようになるので、相続トラブルを回避する有効な手段として広く用いられています。
遺産分割協議が終了したら、書面にまとめて遺産分割協議書を作成します。
なお、遺言書がある場合は、遺言書に書かれた内容が最優先されるので、遺産分割協議はおこなわれません。
ステップ3:相続登記(名義変更)
不動産を誰が相続するかが決まったら、売却に向けて所有者の名義を故人から相続人へ変更する必要があります。
必要書類や費用を準備したら、不動産を管轄する法務局にて登記申請をおこなってください。
登記申請は、「申請書提出→審査→登記完了」の手順で進み、手続きが完了すると登記識別情報通知書が交付され、正式に完了となります。
ステップ4:不動産売却(売買契約締結)
名義変更後、不動産会社に査定を依頼し、相続した不動産の売却活動を開始します。
買主が見つかったら、売買契約を締結して代金の決済・物件の引き渡しへと進み、売主から買主への所有権移転登記もこのタイミングでおこないます。
相続した不動産の名義変更から不動産売却の完了までは、半年程度の期間を見込んでおくのが一般的です。
なお、遺産分割の方法が換価分割の場合は、不動産売却後に相続人で利益を分割します。
相続した家・土地・マンションを売却する場合の注意点とトラブル事例
通常の不動産売却と比べると、物件情報の不足や単独で意思決定ができないなど、相続不動産の売却は大きく状況が異なります。
そのため、相続した家・土地・マンションなどを売却する際は慎重に検討する必要があります。
ここでは、相続不動産の売却時の注意点とトラブル事例を解説します。
相続登記は義務付けられている
相続人は不動産の相続開始を知ってから3年以内に相続登記をおこなう義務があります。
これは、所有者がわからない空き家や空き地を減らすための政策として、2024年4月の法改正により相続登記が義務化されたためです。
これを怠った場合、10万円の過料のペナルティ対象になるおそれがあるため、相続したらまず相続登記を済ませるのが賢明でしょう。
仮に相続登記をせずそのままにした場合、全相続人の共有財産とみなされ、以下のようなリスクが高まる点にも注意が必要です。
● 不動産売却ができない
● 他の相続人が勝手に名義変更して売却してしまう
● 相続人の死後、相続人が増えて状況がさらに複雑困難になる
相続登記を怠ったために起きるトラブルの代表例は、先祖代々名義変更をしていない土地を売却する事例です。
たとえば、親から不動産を引き継いだものの、名義が祖父から変わっていないなどのパターンが挙げられます。
売却したくても、祖父の相続人となる親類の協力が得られない、あるいはすでに亡くなっていて連絡先がわからないケースも少なくありません。
共有名義の売却は全共有者の同意を得る必要がある
遺産分割の際、共有名義を選択したために起きるトラブル事例も多く、代表例は共有者の1人が反対して全員での売却を諦めるケースです。
単独で所有している不動産なら独断で売却や賃貸も可能ですが、共有名義になっている場合は、売却するのに全共有者の同意を得る必要があります。
1人でも反対する人がいれば、不動産売却ができなくなり、結果的に断念せざるをえません。
たとえば共有者の1人が自分の持ち分のみ売却した場合、他の相続人は赤の他人となる第三者と共有状態になってしまうおそれがあります。
特例や納税には期限がある
相続不動産の売却期限は、3年以内が目安といわれています。
これは、相続不動産で利用できる以下の特例の期限が3年を目安に設定されているためです。
● 取得費加算の特例
● 相続空き家の3,000万円特別控除
相続登記から不動産売却完了まで半年以上かかるケースも多く、気がつくと3年が過ぎていた、などの事態も起こりえます。
要件などもしっかり確認し、3年以内の売却を目指すよう心がけましょう。
また、相続税の期限も10か月以内となっており、期限に遅れると以下のようなデメリットが生じます。
● 無申告加算税が課される
● 延滞税が課される
● 小規模宅地等の特例が適用できない
● 地価下落により売却額が減少する
● 税理士などに依頼した場合は追加費用が発生する
上記は、遺産分割協議などに時間がかかった場合に起きがちなトラブル事例です。
さらに、減額要素を見逃すなどして相続税を収めすぎた場合も、5年の還付請求の期限をすぎると戻ってきません。
こうした手続きには専門知識が必要となるため、少しでも疑問点があれば、不動産売却や相
続に詳しい専門家への相談がおすすめです。
相続登記と売買登記は同時にできる?未登記不動産の売却リスクを解説
なかには、特別な事情で相続登記と不動産売買を並行して進めたいと希望される方もおられるでしょう。
結論からいえば、原則として可能ですが、未登記不動産の売却にはリスクがともなう点を理解しておく必要があります。
相続登記と売却登記の同時進行は原則可能
相続登記と不動産売却による所有権移転の同時進行は、原則として可能です。
このような同時申請を「連件申請」といいますが、手続きには書類の正確性のほか、全相続人の実印や印鑑証明書などが求められます。
そのため、一連の流れをきちんと把握していないと、さまざまなリスクがともなうため注意しましょう。
相続から売却までの名義変更は、「被相続人→相続人→買主」の流れでおこなう必要があり、直接「被相続人→買主」にはできません。
これは、権利変動の過程を正確に登記しなければならないと法で定められており、相続による所有権移転登記の中間省略は認められないためです。
よって、相続登記と売却登記を同時申請する場合は、2件分の所有権移転登記の申請書を用意し、それぞれに必要な書類も揃えておく必要があります。
名義変更をしない不動産売却のリスク
未登記となる不動産の売却には、大きなリスクが発生します。
不動産の名義変更をしなければ、売買契約締結や所有権移転登記の手続きができず、最終段階の引き渡しまで進められません。
その他にも、以下のような重大なリスクが発生する可能性があるので、速やかに対処するのが望ましいでしょう。
● 売買契約の無効
● 損害賠償請求
● 法的トラブル
● 登記義務違反
未登記不動産は取引先へのリスクが大きく、買主や金融機関から売買契約書の特約などで対処するよう求められるケースもあります。
手続きや話し合いが複雑かつ長期化するケースも多いので、正当な理由がないなら速やかに手続きをするのが望ましいでしょう。
やむを得ない事情がある場合は、不動産会社や相続のプロを交えて不動産売却を検討するのがおすすめです。
相続登記・不動産売却手続きをスムーズに進めるためのポイントと注意事項
相続登記から不動産売却手続きまでスムーズに進めるには、必要書類の準備や全相続人の同意、および税金関係の確認が不可欠です。
今一度、相続登記や不動産売却の流れをしっかり確認し、税金や費用の準備も万全にしておくのが成功のポイントとなります。
相続登記に必要な書類一覧
相続登記で必要となる書類は種類が多く、取得に時間を要するケースもあります。
申請の際に不備があると、修正や再提出となり、余計に時間と手間がかかってしまうので要注意です。
被相続人・相続人関連では戸籍謄本や住民票、印鑑証明書、不動産関連では固定資産評価証明書や登記事項証明書などが必要になります。
書類ごとに取得先が異なるので、細かな注意点なども含めてきちんと内容をチェックしておきましょう。
| 必要書類 | 取得先 |
| 戸籍謄本(被相続人は出生から死亡までのもの) | 本籍地の市区町村役場 |
| 住民票(除票) | 住民登録地の市区町村役場 |
| 相続人全員の住民票(現住所が反映されたもの) | 各市区町村役場 |
| 固定資産評価証明書(不動産ごとに最新の年度で取得) | 市区町村の税務課 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 各市区町村役場 |
| 遺産分割協議書 | 相続人で作成 |
その他、相続関係説明図や登記申請書の作成が必要なため、不安な場合は相続や不動産の専門家に相談しながら進めると安心です。
共有名義不動産の売却時の注意事項
不動産売却でとくに多いのが、共有名義の相続不動産の売却でトラブルになるケースです。
たとえば遺産分割協議書がまとまらないまま売却話を進めてしまうと、他の相続人と意見が衝突し、売却手続きが立ち行かなくなるパターンも少なくありません。
そのため、売却を検討するなら、全員の同意を取り付け、遺産分割協議書を作成しておくと、トラブル回避につながるでしょう。
同意が得られないときは、家庭裁判所による調停や弁護士など専門家へ相談するのも有効です。
いずれにせよ、共有者同士の意思疎通が不可欠のため、事前の売却条件の確認やコミュニケーションが重要になります。
不動産売却時に発生する税金や諸費用
相続した不動産の売却時には、譲渡所得税や登録免許税など、実にさまざまな税金や諸費用が発生します。
● 譲渡所得税
● 登録免許税
● 仲介手数料
● 印紙税
● 所得税・住民税
譲渡所得税が課せられ、その金額は「売却価格-取得費-譲渡費用」で求められます。
取得費には被相続人が不動産を取得した際の購入金額、登録免許税、不動産取得税も含まれ、取得費がわからないときは売却価格の5%で算出可能です。
譲渡所得税率は、不動産の所有期間により変動し、長期(5年超)なら約20%、短期(5年以下)なら約39%と負担が異なります。
相続不動産の売却は、このような税制のメリットや特例の適用などを踏まえて、計画的に実行するのがポイントです。
確定申告が必要な場合の必要書類
不動産売却により利益が発生した場合は、その翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告をする必要があります。
確定申告の方法は、必要事項を記入した申告書と、必要書類を揃えて税務署に提出するのが一般的です。
確定申告の必要書類の具体例は以下のとおりです。
● 売買契約書
● 登記事項証明書
● 売買契約書や領収書など、取得費の証明となる書類
● 仲介手数料などの領収書
● 相続税申告書(取得費加算特例を利用する場合)
近年は便利なe-Taxの利用者も増えており、申告書作成やデータ保存、出力まで可能な国税庁サイトの「確定申告書等作成コーナー」の利用もおすすめです。
まとめ
相続不動産を売却するには、被相続人から相続人へ名義変更するための「相続登記」が重要になってきます。
相続登記が未了であっても売却は進められますが、契約締結までには完了しているのが大前提です。
売却までのステップをスムーズに進めるためにも、登記のタイミングや各手続きのフローなどを把握し、事前準備を怠らないよう心がけましょう。
