不動産売却時に発生する仲介手数料とは?
計算方法や比較ポイントを解説2025.10.17
● 不動産売却時に発生する仲介手数料って、どんな手数料?
● 仲介手数料の計算方法は?
● 仲介手数料の相場はどれくらい?
不動産を売却する際、仲介を依頼した不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。
ですがこの仲介手数料が何に対して支払うもので、どのような特徴があるのかご存知でしょうか?
この記事では、不動産を売却する際に発生する仲介手数料とは何か、計算方法や早見表、相場、不動産会社を選ぶ際の比較ポイントなどを解説します。
この記事でわかること
● 不動産を売却したときに発生する仲介手数料の基本
● 仲介手数料の計算方法、早見表
● 仲介手数料の相場
不動産売却時に発生する仲介手数料とは?
不動産売却時に不動産会社に支払う仲介手数料とはそもそも何に対する手数料で、誰が支払うべきなのでしょうか?
まずは仲介手数料の基本から確認していきましょう。
売却を仲介した不動産会社に支払う成功報酬
不動産売却時に発生する仲介手数料とは、仲介を依頼した不動産会社に対する、売買契約成立の成功報酬です。
たとえば、実際に媒介契約を結んで不動産会社に売却を依頼しても、買主と売買契約を締結するまでは、仲介手数料を支払う義務はありません。
仲介を依頼したものの買主を見つけられなかった場合も、仲介手数料は発生しません。
なお複数の会社と一般媒介契約を締結していた場合、仲介手数料が発生するのは買主を見つけた不動産会社に対してのみとなります。
契約したすべての不動産会社に支払うわけではないので、安心してください。
仲介を依頼した側が支払うのが基本
仲介手数料は、仲介を依頼した人が支払うのが基本です。
たとえば不動産売却時であれば、物件を売りたい売主が不動産会社と契約して、買主を探すケースが多いでしょう。
この場合は売買契約成立後、売主が仲介手数料を支払います。
買主も同様に不動産会社に依頼して物件を探している場合は、買主も別途、仲介手数料を支払います。
上記はあくまで基本で、必ずしも依頼者に支払い義務が発生するとは限らない点に注意してください。
なかには買主に購入を決断してもらうために、買主の仲介手数料も売主が負担する、といったケースも見受けられます。
仲介手数料に含まれるのは仲介業務の経費だけ
仲介手数料は売買契約成立の成功報酬であるのと同時に、不動産売買の仲介業務に対する報酬でもあります。
たとえば不動産会社は、依頼された不動産の売却を進めるために、物件の調査をおこない、販売戦略を立て広告を出し、買主を探して売買契約締結や物件の引き渡しをサポートします。
これらの仲介業務にかかる費用が、仲介手数料として請求されます。
なお、仲介手数料に含まれない対応をおこなった場合、仲介手数料とは別に料金を請求される場合があるので注意してください。
また、遠方の購入希望者との売買交渉を依頼した場合は出張費用が請求されますし、売主の希望で特別な広告を出した場合は、その分の費用を支払う必要があります。
売却予定の物件内部に家具やゴミが残っていた場合は、それらを保管・処分するための費用も必要です。
仲介手数料には上限がある
不動産売却時の仲介手数料は宅地建物取引業法によって、売却価格に応じた上限額が定められています。
上限額以上の仲介手数料は請求されないので、安心してください。
上限額の計算方法は、あとの見出しで詳しく解説します。
なお下限額についてはとくに定められていないため、上限の半額としているケースや、キャンペーンで一時的に値下げをしているケース、なかには無料としているケースも見受けられます。
とはいえ値下げをしている不動産会社は決して多くはなく、あまり値下げにこだわり過ぎてしまうと、不動産会社選びに苦労してしまうかもしれません。
2回に分けて支払うのが一般的
仲介手数料は、売買契約締結時に半分を、物件を買主に引き渡す際に残りの半分を支払うのが一般的です。
基本的には現金払いである点に注意してください。
銀行振込に対応している不動産会社もありますので、利用したい場合は事前に確認しておきましょう。
買主から手付金を受け取る場合は、手付金から仲介手数料を差し引いての支払いも可能です。
現金を用意する必要がなくなるので、仲介手数料以上の手付金を受け取る場合におすすめの方法です。
売買契約締結時か物件引き渡し時に、一括で払う方法もあります。
現金での分割払いが難しい場合は、物件引き渡し時に受け取った売却代金から、仲介手数料を一括払いする方法がおすすめです。
不動産売却時に発生する仲介手数料の計算方法と早見表
不動産売却時に発生する仲介手数料の上限額は、具体的にいくらになるのでしょうか?
ここからは、仲介手数料の上限額を求める計算方法をわかりやすく解説します。
仲介手数料の計算方法
不動産売却時の仲介手数料は宅地建物取引業法によって、売却価格に応じた上限額が定められています。
物件の売却価格。 | 仲介手数料の上限額。 |
---|---|
200万円以下の部分。 | 売却価格(税抜き)の5%+消費税。 |
200万円超、400万円以下の部分。 | 売却価格(税抜き)の4%+消費税。 |
400万円超の部分。 | 売却価格(税抜き)の3%+消費税。 |
「売却価格の部分」ごとに上限が決められている点に注意してください。
たとえば3,000万円の物件を売却した場合、以下の3つの部分を合計した金額が、仲介手数料の上限となります。
● 200万円以下の部分:200万円の5% = 10万円
● 200~400万円の部分:200万円の4% = 8万円
● 400万円超の部分:2,600万円の3% = 78万円
● 合計:96万円 + 消費税
なお、空き家売買の促進を目的として、2024年7月から空き家を売却した際の仲介手数料上限が変更されています。
空き家の売却価格。 | 仲介手数料の上限額。 |
---|---|
800万円以下の部分。 | 30万円 + 消費税。 |
800万円超の部分。 | 売却価格の3% + 消費税。 |
上記のとおり売却価格が800万円までの空き家(低廉な空き家)は、仲介手数料の上限が一律で30万円となりました。
たとえば空き家を1,000万円で売却すると、仲介手数料の上限は以下のとおりです。
● 800万円以下の部分:30万円
● 800万円超の部分:200万円の3% = 6万円
● 合計:36万円 + 消費税
状態の悪い空き家は売却価格が低くなりやすく、得られる仲介手数料も少なかったため、不動産会社は仲介を敬遠しがちでしたが、この変更によって一定の利益を得やすくなっています。
ですがその分だけ売主の負担が増してしまっているため、800万円以下の空き家を売却する予定がある方は注意してください。
手早く確認したい場合は速算式がおすすめ
上記のとおり仲介手数料は、売却価格を3つの部分に分解したうえで計算していく必要があるため、手間がかかります。
そのため手早く仲介手数料を確認したい場合は、より簡単に計算できる速算式を用いるのがおすすめです。
売却価格 | 速算式 |
---|---|
200万円超、400万円以下 | 売却価格の4% + 2万円 + 消費税 |
400万円を超える場合 | 売却価格の3% + 6万円 + 消費税 |
速算式を用い、3,000万円の物件を売却した場合の仲介手数料を計算すると、以下のとおりとなります。
3000万円の3%(90万円)+ 6万円 = 96万円(+消費税)
ご覧のとおり、先にお伝えした仲介手数料の計算方法とまったく同じ結果です。
仲介手数料の早見表
仲介手数料の上限額を、1,000万円ごとにまとめました。
おおよその手数料を把握する場合などにお役立てください。
売却価格 | 上限額(税抜き) | 上限額(税込み) |
---|---|---|
200万円 | 10万円 | 11万円 |
400万円 | 18万円 | 19.8万円 |
800万円 | 30万円 | 33万円 |
1,000万円 | 36万円 | 39.6万円 |
1,500万円 | 51万円 | 56.1万円 |
2,000万円 | 66万円 | 72.6万円 |
2,500万円 | 81万円 | 89.1万円 |
3,000万円 | 96万円 | 105.6万円 |
4,000万円 | 126万円 | 138.6万円 |
5,000万円 | 156万円 | 171.6万円 |
6,000万円 | 186万円 | 204.6万円 |
7,000万円 | 216万円 | 237.6万円 |
8,000万円 | 246万円 | 270.6万円 |
9,000万円 | 276万円 | 303.6万円 |
1億円 | 306万円 | 336.6万円 |
不動産会社選びと仲介手数料の相場・比較ポイント
不動産売却の仲介を依頼する不動産会社を選ぶにあたって、仲介手数料は1つの指標となるでしょう。
ですが実際のところ、仲介手数料の相場はどのくらいなのでしょうか?
ここからは仲介手数料の相場と、不動産会社選びの比較ポイントを解説します。
仲介手数料は上限額が相場
仲介手数料は、ほとんどの不動産会社が上限額をそのまま適用しています。
そのため仲介手数料の相場は、上限額と考えて良いでしょう。
とはいえ売却価格が高くなるほど、仲介手数料は大きな負担となります。
基本的に現金で支払う必要があるため、場合によっては支払いが難しくなってしまうケースも珍しくありません。
そういった場合は、仲介手数料の値引き交渉をするのも方法の1つです。
仲介手数料は下限額に決まりがないため、交渉次第では値引きしてもらえる可能性があります。
ただし先にお伝えしたとおり、仲介手数料は仲介業務を実施するための費用でもある点に注意してください。
値引きによって担当者のモチベーションが失われてしまう可能性や、サービスの品質が落ちてしまうおそれがあります。
仲介手数料が安い=良い不動産会社とは限らない
なかには仲介手数料をゼロにしている会社や、割引キャンペーンを実施している不動産会社も存在します。
売却の仲介を依頼する不動産会社を選ぶ際は、そういった仲介手数料が安い会社を選びたい、と考えている方も多いのではないでしょうか?
繰り返しになってしまいますが、仲介手数料は仲介業務をおこなうための費用でもあります。
そのため十分な仲介手数料が得られないと、満足な仲介業務が実施できない可能性が出てきてしまいます。
もちろん、企業努力によってサービス品質を落とさずに業務を実施できているケースもあるでしょう。
ですが、すべての不動産会社がそうとは言い切れません。
仲介手数料こそ安いものの、サービスの質が悪い不動産会社と契約をしてしまったら、あとで後悔してしまう可能性が高いでしょう。
仲介手数料について正しく説明しない会社には注意が必要
多くの不動産会社は仲介手数料について、しっかりと説明をしてくれますが、なかには実際とは異なる内容や、間違った内容を伝えてくる会社もあるので、注意してください。
たとえば、どの会社でも仲介手数料は同じと法律で決められている、と説明したり、本来は仲介手数料に含まれる一般的な物件の広告費を、仲介手数料とは別に請求してきたり、といったケースです。
なかには、法律で定められた上限額を越える仲介手数料を請求してくる悪徳業者も、僅かですが存在しています。
こういった会社は利用者の無知に付け込み、ほかにもさまざまな虚偽の説明をしている可能性が高いです。
たとえ提示された仲介手数料がほかよりも安かったとしても、このような会社は選ばないようにしましょう。
不動産会社選びでの仲介手数料以外の比較ポイントは?
不動産会社を選ぶ際は仲介手数料だけでなく、ほかの比較ポイントもあわせて検討するのがおすすめです。
以下に、不動産会社を選ぶ際の代表的な比較ポイントを挙げます。
● 売却実績
● 評判・口コミ
● 物件のある地域に精通しているか
● 担当者の対応や相性
どんなに仲介手数料が安くても、物件をスムーズに売却できなければ意味がありません。
その点、過去の売却実績が豊富な不動産会社であるほど、スムーズな売却が期待できます。
会社の評判や、実際に利用した方の口コミも、重要な判断材料の1つです。
利用者だからこそわかる貴重な情報が書かれている場合もあるので、一通り確認してみましょう。
売却したい物件がある地域に詳しいかどうかや、担当者との相性も忘れずに確認してください。
不動産は地域によって相場やニーズが異なるため、地域の情報に精通していたほうが、スムーズな売却が期待できます。
担当者の経験や知識も同様に重要ですが、こちらの希望をしっかり受け止めてくれるか、誠実に対応してくれるかも大切なポイントです。
不動産売却時に発生する仲介手数料以外の手数料
不動産売却時には仲介手数料以外にも、以下のようにさまざまな手数料が発生します。
● 物件の調査費用
● 印紙税
● 各種登記費用
たとえば土地を売却する際、隣地との正確な境界がわからない場合には、測量をおこなって正しい境界を確認しておく必要があります。
土地の測量費用は一般的な仲介業務には含まれないため、別途費用の支払いが必要です。
売買契約書を作成する際は、取引金額に応じた収入印紙を購入し、契約書に貼り付ける形で印紙税を納める必要があります。
また物件を売却する際は、所有権移転などの登記手続きが必要です。
そのため登記の際に納める登録免許税や、手続きを依頼する司法書士への報酬などがかかります。
まとめ
不動産売却時に発生する仲介手数料は、物件の売買契約成立時に支払う成功報酬で、仲介業務の費用として支払います。
仲介手数料は法律によって上限額が定められており、多くの場合上限額がそのまま請求されます。
仲介手数料の計算は若干複雑なので、基本的には速算式で求めるか、本記事で紹介した早見表を確認するのがおすすめです。