不動産売却時の契約書における注意点は?
重要項目や事前準備について解説2025.04.08
● 不動産売却契約の基礎知識について知りたい
● 売買契約を結ぶ際とくに注意すべき重要事項は?
● 売買契約の締結前後でリスクを回避するための事前準備とは?
不動産売却において、重要な局面はいくつかありますが、売買契約の締結時も気を引き締めておく必要があります。
とくに、売買契約書については内容をつぶさに確認しておきましょう。
締結時にその場で説明される重要事項説明については将来的に起こりうるトラブルを回避する目的があります。
内容を把握するよう努めなければなりません。
この記事でわかること
● 不動産の売買契約締結における基礎知識がわかる
● 契約書を交わす際、とくに注意すべき重要事項がわかる
● 売買契約締結時の注意点がわかる
はじめに
不動産売却における取引のなかで重要になるのはいったいどのフェーズでしょうか。
買い手との出会いの場である売却活動も重要ですが、見落としがちなのが、契約書に書かれている内容です。
通常、不動産会社が仲介に入ると必ず売買契約書を締結します。
プロに依頼したから内容に問題はないはずだとたかを括っていると、予期せぬ契約内容に合意してしまい、あとになって苦労するかもしれません。
将来的に起こりうるトラブルを未然に防ぐためにも、不動産売却時に締結する契約書の内容は必ずご自身で確認しておきましょう。
不動産売却契約の基礎知識
不動産売却時の契約書の内容について、知識を深めるための基礎部分を解説します。
じつは、不動産会社が仲介に入っていれば必須ですが、個人間のやり取りになる場合は特段、売買契約書を締結する必要はありません。
それだけ、売買契約書の内容は物件ごとに異なるものです。
一般的に売買契約書には何が書かれているのかについて見ていきましょう。
不動産売却における契約書の内容は案件によって異なる
大前提として、不動産売買で取り交わされる契約書の中身は契約によって違います。
標準的な内容こそ存在しますが、詳細な内容については売買契約を交わす当事者同士や物件を取り巻く環境や条件次第で異なってくるのです。
売主と買主間におけるいった・いわないを回避するための内容が書かれていると考えてください。
不動産の売買契約書に記載される内容
一般的に、不動産の売買契約書には以下のような内容が記載されています。
● 売買契約を結ぶ当事者の情報:売主や買主が特定できる個人情報
● 売買の対象となる不動産の情報:登記簿に記載される不動産の情報
● 不動産の対象面積の決定方法:対象となる不動産が土地である場合は、登記簿上の情報ないし実測にて面積が確定する。もしくは、対象となる不動産が建物である場合は登記簿上の情報で面積が記載される
● 売却価格の決定方法:面積を実測して割り出した場合、売却価格の決定は売買契約までに確定させるか、契約後に実測して記載される
● 境界にまつわる情報:隣地との境界については売主が責任をもって明確にしておく必要がある
● 代金の支払い時期・方法の情報:不動産に対する支払いについて支払う時期と支払い方法を明示する必要がある
● 手付金・手付解除:手付金の扱いや金額について明示する※手付金は、売買契約が白紙になった際の違約金の役割を持つ
● 所有権の移転登記:所有権の移転登記は原則、売主によって代金の支払いと同時におこなわれる
● 引き渡し時期の明示:引き渡し時期は原則、売主によって代金の支払いと同時におこなわれる
● 設備・備品にまつわる情報:設備表を作成し、物件に付帯する設備を明らかにする必要がある
● 抵当権や地上権の抹消:当該不動産に、抵当権や地上権が設定されている場合は抹消し、その旨を記載する必要がある
● 公租公課(固定資産税や都市計画税)の扱いに関する情報:取引に際し、売主と買主それぞれの固定資産税や都市計画税の負担割合を記載する必要がある
● 危険負担:物件の引き渡し前にやむを得ない理由で当該不動産が損害を被った場合の対応についてあらかじめ決めておく必要がある
● 契約違反による契約解除に関する情報:売主と買主の双方において重大な契約違反が見つかった場合の対応について記載する。違約金の割合も記載する。
● 反社会的勢力に対する排除条項:売買契約を結ぶ当事者同士が反社会勢力ではないと契約書にて確約する
● ローン特約にまつわる情報:ローン特約の有無について記載する※ローン特約とは万が一売買契約締結後に審査落ちしてしまった場合に契約を無かったものにできる特約
● 契約不適合責任にまつわる情報:契約内容が履行されなかった場合の対処法について記載する必要がある※瑕疵担保責任の記載は民法の改正を受け契約不適合責任に変わった
不動産の売買契約書には、売主と買主の双方について詳細がわかる内容が書かれています。
特に、契約にまつまる内容については自分に不利になるような内容が書かれていないか、想定していない手続きが含まれていないかなど、詳細をチェックしてからサインしましょう。
記載内容はどの範囲まで自由?
結論、不動産売買の契約書の内容は自由ですが、公序良俗に反するような記載は認められていません。
また、強行法規といって公の秩序に違反してしまう契約内容も無効とされています。
つまり、契約書の内容は当事者で自由に決められるものの、公共性に欠けるような記載内容は無効とされるので注意してください。
売却契約書でとくに注意すべき重要項目
実際、不動産を売却する際は、代金や所有権にまつわる内容に注意してください。
いつお金をどのような方法で支払うのか、締結する契約書は、具体的にどのような記載内容であれば問題ないのでしょうか。
重点的に注意すべき項目について解説します。
売買代金や手付金の支払い方と徴収タイミング
不動産売買における契約書では、売却代金をいつ、どのようにして払うのかを明確にしておく必要があります。
手付金についても同様で、いくらをいつまでに払うのかしっかりと明記しておきましょう。
また、売買契約が何らかの理由で白紙になってしまった際の対処についても、どう対処すべきかを明確にしておく必要があります。
所有権や抵当権の移転はなるべく売買契約締結と同時にする
不動産売却では、所有権はもちろん住宅ローンを借り入れていたなら抵当権についても必ず契約書で触れておく必要があります。
所有権や抵当権は、売買契約の締結とともに売主から買主に移行させるのが一般的です。
どの手続きでも後手に回ってしまうと、お金を払ったのに不動産が自分のものにできない、どのタイミングで売却代金が受け取れるかわからないといった問題につながります。
些細なトラブルに発展させないためにも、すべての手続きは同時におこなうのが鉄則です。
契約不適合責任の内容については必ずあらためておく
契約不適合責任とは、不動産における重大な欠陥について売主が負うべき範囲をより明確にしています。
今までは知らなかったで済まされていた不具合や欠陥については、売主が責任を持って補填しなければなりません。
契約不適合責任は基本的に買主を守る考え方であるため、売主にとっては記載内容がシビアであると感じられる場合もあるでしょう。
契約締結前:リスクを回避するための事前準備と確認
不動産の売買契約締結時には、以下の書類が必要です。
これらをきちんと揃えておけば、スムーズな取引に向けた事前準備は整うでしょう。
● 運転免許証などの本人確認書類
● 実印
● 印鑑証明書(取得から3か月以内のものに限る)
● 売主の住民票と売却物件の住民票(マイホームを売却する場合は1枚のみで可)
● 登記済権利証
● 登記識別情報通知書
● 収入印紙
● 固定資産税納税通知書
● 境界確認書
● 付帯設備の説明書
固定資産税の納税通知書については提出の有無は不動産会社によるので個別で必要になるかどうかを確認してください。
登記簿や住民票などの書類は、取り寄せるのに時間がかかります。
平日の昼間は仕事で役所に足を運べないなら、早めに申請書類の準備に取りかかっておくのが無難です。
契約締結時:当日の流れと注意点
不動産の売買契約を交わす際の当日の流れは以下のとおりです。
● 不動産会社が作成した売買契約書を受け取る
● 宅地建物取引士から重要事項の説明がある
● 重要事項説明書に署名・捺印する
● 買主・売主が売買契約書に署名・捺印する
不動産契約書については、売主と買主のいずれも売買契約を結ぶ当日に目にするケースが圧倒的に多いでしょう。
きちんと内容の確認ができるよう、集中して臨む必要があります。
重要事項説明は書面と口頭の両方でおこなわれる
売買契約締結において、重要事項説明は長時間を割いておこなわれます。
理由は、書面と口頭の両方にて細部まで契約書に書かれた内容を確認していくからです。
逆にいえば、不動産の売却手続きにおいて重要事項説明が省かれるケースはありません。
万が一、詳細な説明を省こうとされた場合は、話を止めてでも説明を受けられるようにする必要があります。
売買契約書にサインするとキャンセルできない
不動産の売買契約書にサインをすると、基本的にキャンセルは認められません。
一度締結してしまった契約を無効にするには、解除と呼ばれる手続きをおこなう必要があります。
それでも解約に踏み切る場合は、手付金を使うかローン特約を行使するか、契約不適合責任や危険負担を主張する必要があるでしょう。
手付金には買主の購入の意思を示す役割がありますが、何らかの理由で契約が結ばれないとなった場合は違約金の役割も果たします。
ローン特約といって、万が一ローン審査に落ちてしまった場合、それを理由に契約を解除できる特約もあるので不安な場合は付加しておいた方がいいでしょう。
また、契約不適合責任や危険負担があると主張して契約を無効にする方法もあります。
どちらも買主の権利を守るための取り決めです。
契約締結後から引き渡しまで:トラブルを避けるための対応
不動産の売却手続きは、売買契約締結後にも注意すべきポイントがあります。
買主との間でトラブルが起きないよう、事前に起こりうるケースについて把握しておきましょう。
トラブルに対処すべく契約不適合責任の内容を再度確認する
契約不適合責任とは、取引した不動産に何らかの欠陥があった場合、売主がその責任を負うと明確に定められた取り決めです。
それまでは瑕疵担保責任が定められていましたが、売主の知りえない欠陥については不問とされてきました。
しかし、契約不適合責任では、売買契約書に書かれた内容を履行できていなければ、その損失補填を売主に求められるようになり、買主が守られるようになったのです。
実績の豊富な不動産会社をパートナーに選ぶ
不動産売却における売買契約の締結時は、その内容を把握しておく必要があります。
売り手にも買い手にも要望があるように、売買契約書には双方に関係する細かな取り決めが記載されているからです。
支払日や引き渡し日など、手続きのなかには把握していなかったためにトラブルに発展してもおかしくない重要なやり取りがたくさんあります。
経験豊富な不動産会社と媒介契約を結べば、こういった諸手続きについても手厚いサポートが期待できるでしょう。
まとめ
不動産売却時に交わされる売買契約書には、売主と買主双方にとって非常に重要な項目が記載されています。
とくに、ご自身が売主側に立つときはトラブルの火種となりやすい契約不適合責任を負わなければならないため、契約書の内容はつぶさに確認しましょう。
また、売買代金の支払い方法や手付金の扱い、抵当権や所有権の抹消と移転など、契約書に記載が必要な項目は多岐に渡ります。
よりスムーズな手続きを望むなら、仲介役となる不動産会社選びに注意しましょう。
売買契約書の内容をより確実なものに仕上げてくれて、諸手続きのサポートもやってくれるような実績豊富な不動産会社をパートナーに選ぶのがおすすめです。