不動産売却の専任媒介契約のメリットとデメリットは?
流れと売主がやるべき事項を解説2025.03.28
● 不動産会社に仲介依頼をする際にはどのような契約になるの?
● 自分にぴったりな媒介契約はどれになるの?
● 不動産会社に仲介依頼しても売主がやるべき点はあるの?
不動産売却をする際には、販売活動のノウハウを持つ不動産会社と媒介契約を締結するのが一般的ですが、契約方法には3つの種類があります。
3つの契約方法のうち、専任媒介契約はちょうど中間に位置するものであり、自由度の高さと効率の良さのバランスがあるのが特徴的です。
ただし、囲い込み被害や担当者の対応力の低さを理由に売却期間が長期化するおそれもあるため、不動産会社選びは慎重にならなければなりません。
この記事でわかること
● 不動産売却で締結する媒介契約の基本概要と3つの種類
● 専任媒介契約のメリットとデメリット
● 専任媒介契約の流れと売主がやるべき事項
不動産の売買取引における媒介契約とは
不動産の売買取引で仲介業者と締結する「媒介契約」とは、所有している不動産を売却したい売主と、不動産を購入したい買主の間に入って売買契約を成立させる契約です。
宅地建物取引業法では、媒介契約や取引態様を表すときに「媒介」が用いられています。
「媒介」とよく似た場面で用いられる言葉として「仲介」がありますが、こちらは売主と買主の間に入って契約の成立から取引の最後まで終了させる意味を持ちます。
不動産会社と媒介契約を締結した場合、売買取引が成立すると「仲介手数料」が発生するのは、調査やサポートまでおこなうからです。
不動産の売買取引では、不動産会社と媒介契約を締結せずに売主が買主を探して契約を成立させる方法があります。
この方法を自己発見取引と呼びますが、契約書の作成や確認事項でミスがあると、トラブルに発展するリスクがあるので注意が必要です。
媒介契約の種類
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任契約 | |
自己発見取引 | 可能 | 可能 | 不可 |
ほかの不動産会社との媒介契約 | 複数可能 | 不可(1社のみ) | 不可(1社のみ) |
契約期間 | とくになし | 最長3か月間 | 最長3か月間 |
レインズへの登録義務 | 義務なし(任意) | あり(媒介契約締結の翌日から7営業日以内) | あり(媒介契約締結の翌日から5営業日以内) |
不動産会社から売主への報告義務 | 義務なし(任意) | あり(2週間に1回以上) | あり(1週間に1回以上) |
媒介契約には3つの種類があり、それぞれ次のような違いがあります。
レインズとは、国土交通省から指定された不動産流通機構が運営しており、全国の宅地建物取引業者が販売中の不動産情報を閲覧できるシステムです。
3つの媒介契約の種類、それぞれの特徴を解説します。
一般媒介契約
一般媒介契約は、自己発見取引が可能であり、売主が複数の不動産会社に仲介を依頼できる自由度の高い契約方法です。
明示型と非明示型の2種類に区分されますが、ほかの不動産会社との契約状況をオープンにする明示型を選択すると、積極的な売却活動が期待できます。
レインズの登録や不動産会社からの報告が義務付けられていないので、売主が主体となって販売活動を管理しなければ売れ残ってしまうリスクが懸念されます。
立地や広さなどで強みがあれば、複数の不動産会社の競争力を活かして短期間の売買契約の成立に結び付けられるケースも多いです。
専任媒介契約
専任媒介契約は、自己発見取引が可能であるものの、売主が1社の不動産会社のみに仲介を依頼できる契約方法です。
ほかの不動産会社との同時契約はできないものの、1社に絞って担当者との信頼関係を築ければ効率よく売買契約の成立を目指せます。
レインズへの登録が義務付けられているため、全国の宅地建物取引業者に情報が公開されて、幅広い購入希望者から注目してもらえます。
不動産会社からの報告義務は2週間に1回以上と決まっており、売却活動の進捗状況を把握できるため安心です。
契約期間中に購入希望者が見つからなければ、ほかの不動産会社と再契約したり一般媒介契約に切り替えたりできます。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約は、自己発見取引ができず、売主が1社の不動産会社のみに仲介を依頼できる契約方法です。
3つの媒介契約のなかでは、制限が多いのが特徴的です。
自己発見取引が認められないため、売主が自分で購入希望者を見つけてきたとしても、専属専任媒介契約を締結している不動産会社を介して取引しなければなりません。
レインズへの登録は義務付けられているので、全国の宅地建物取引業者に情報が公開され、幅広い購入希望者から注目してもらえる点は、専任専属契約と同じです。
不動産会社からの報告義務は1週間に1回以上と決まっており、実績豊富で信頼できる担当者をみつけられれば、効率よく売買契約が決まりやすいです。
不動産売却で専任媒介契約を選ぶメリット
専任媒介契約は、一般媒介契約と専属専任媒介契約のちょうど中間に位置する契約です。
一定の自由度が残りつつ、不動産会社を1社に絞り積極的な販売活動をおこなってもらえる可能性が高い点が特徴的です。
ここでは、不動産売却で専任媒介契約を選ぶメリットを解説します。
積極的な販売活動をしてもらいやすい
専任媒介契約は、不動産会社にとって「自社で購入希望者を見つけられれば、仲介手数料がもらえる」とのインセンティブがある魅力的な契約です。
よって、一般媒介契約で複数の不動産会社に仲介依頼をするよりも、売却活動に力を入れてもらえる傾向にあります。
広告や購入希望者への対応に時間と費用をかけてもらいやすいため、結果的に成約率の向上が期待できます。
さらに、売主と担当者は販売戦略や進捗状況を密に連絡を取り合うからこそ信頼関係が築きやすく、効率的な売却活動が可能です。
自分で購入希望者をみつけられる
専任媒介契約は、専属専任媒介契約ほど制限が厳しくありません。
売主が購入希望者をみつけてきた場合、不動産会社を介さずに直接売買契約を締結してもよいとされているため、売却チャンスが増えます。
自分でも積極的に購入希望者を探せる柔軟性があり、不動産会社と売主がそれぞれのやり方で販売活動がおこなえる柔軟性の高さが特徴的です。
これにより販売活動の振れ幅が広がり、スピーディーな不動産売却を目指せる可能性が向上します。
不動産会社とのやりとりを一本化できる
専任媒介契約では、1つの不動産会社に絞って契約を締結するので、同時に複数の不動産会社の担当者とやりとりする手間がかかりません。
販売状況や物件情報に関するコミュニケーションの窓口が1つになれば、無駄な混乱を避けられるため、売主の負担を軽減できます。
不動産売却では、新居探しや引っ越し準備などのプロセスを並行しておこなうケースも多く、販売活動を一本化できれば、売主の心理的安心にもつながります。
最小限のストレスで円滑なコミュニケーションにこだわりたいのであれば、専任媒介契約がおすすめです。
不動産売却で専任媒介契約を選ぶデメリット
専任媒介契約は、自由度と効率性のバランスがよく取れている一方で、無知のまま契約を結んでしまうと思わぬ落とし穴が隠れている可能性があるため注意が必要です。
ここでは、不動産売却で専任媒介契約を選ぶデメリットを解説します。
囲い込み被害のリスクがある
専任媒介契約では、1つの不動産会社のみに仲介依頼をするため、「囲い込み」の被害に遭うおそれがあります。
囲い込みとは、不動産会社が自社で抱えている売主と買主を無理やりマッチングさせようとして、他者からの問い合わせに制限をかけるものです。
自社で抱える売主と買主をマッチングさせられれば、双方から仲介手数料を取れるので不動産会社にとっては大きな利益になります。
一方の売主としては、高額取引のチャンスを逃したり、物件が売れ残ったりするリスクがあるため重大な問題です。
こういった囲い込みトラブルの被害者にならないためにも、信頼できる不動産会社の選定が重要視されています。
不動産会社の力量に左右される
不動産売却は、販売活動をおこなう不動産会社の実績や担当者の経験値によって、成約率に大きな差がでます。
専任媒介契約では、1つの不動産会社のみしか仲介依頼をできないからこそ、提案力や購入希望者のリストなどが乏しければ、売却期間の長期化につながります。
一方で、実績から蓄積されたノウハウや経験値からくる知識量が充実していれば、限られた売却チャンスを逃さずに売買契約に結びつけてもらえるでしょう。
「1つの不動産会社としか契約できないから」となんとなく選ぶのではなく、複数の不動産会社の実績や担当者の対応力の比較が重要です。
専任媒介契約締結後の不動産売却の流れ
専任媒介契約を締結したあとの不動産売却の流れは、次のとおりです。
1. 担当者と販売戦略を立てる
2. 不動産会社が物件情報を広告に出す
3. 購入希望者の内覧や交渉に対応する
4. 重要事項説明をしてから売買契約を締結する
5. 引き渡しと決済をおこなう
専任媒介契約を締結したら「できるだけ早く売りたい」「期限を決めつつ高額で売りたい」などの希望を伝えて販売方針を決めます。
物件の立地や周辺環境、ターゲット層などのアピールポイントをまとめたら、ポータルサイト、顧客へのDM、チラシのポスティングなどで広告をだします。
購入希望者の対応をして、売主と買主の間で取引内容に合意が取れれば、重要事項説明と売買契約の締結へと進み、成約完了です。
売買契約締結時に引き渡し日を決めて、司法書士立ち会いのもとで所有権移転登記と決済をして一連の流れは終了となります。
専任媒介契約で売主がやるべき事項
専任媒介契約を締結すれば、不動産会社に販売活動をおこなってもらえますが、成約率を高めるためには任せっきりにするわけにはいきません。
ここでは、専任媒介契約で売主がやるべき事項を解説します。
信頼できる不動産会社を選定する
専任媒介契約は、複数の不動産会社に仲介依頼をできないからこそ、信頼できる不動産会社を見極める必要があります。
売主として、不動産会社ごとの実績や販売力、担当者の対応力を十分に比較して、「ここなら安心して任せられそうだ」と思えたところと契約しましょう。
過去に不動産会社を利用した人たちから寄せられた口コミや評判、実際の取引実績を参考にすると、ミスマッチを防ぎやすいです。
最長3か月間の契約期間が設定されているからこそ、時間を無駄にしないための不動産会社選びは時間をかけて進めてみてください。
不動産会社からの報告を確認する
専任媒介契約では、不動産会社が売主に対して2週間に1回以上のペースで販売活動の進捗状況を報告する義務が課せられています。
売主として、不動産会社から届く報告書の内容は丁寧に読み込み、疑問点や不安要素があればすぐに問い合わせをするようにしましょう。
信頼できる不動産会社に仲介依頼をすれば問題ありませんが、売主が積極的に販売活動に介入する姿勢をみせるほど、担当者の意識も引き締まります。
不動産会社と売主が販売方針や戦略を同じレベルで理解できていれば、協力しやすく成約率の向上にもつながります。
ほかの不動産会社や契約方法の切り替えを検討する
専任媒介契約を締結したものの、不動産会社の販売活動に成果がみられない場合、契約期間を満了したタイミングで媒介契約の切り替えを検討してもよいでしょう。
ほかの不動産会社を探したり、一般媒介契約や専属専任媒介契約などの契約方法を切り替えたりする選択肢があります。
これらの決断をするためには、不動産会社から届く報告書の内容を理解して、成約につながる可能性があるのか見極める力が求められます。
より有利な条件で売買契約を締結するためにも、柔軟な決断力を持つようにしてください。
まとめ
不動産売却の専任媒介契約は、一般媒介契約と専属専任媒介契約の特徴を融合した特徴を持ちます。
複数の不動産会社と同時契約はできませんが、2週間に1回以上のペースで販売状況を報告してもらえるので、成約につながりやすいです。
また、売主が自分でみつけてきた購入希望者と直接取引も可能であり、自由度の高さを残しつつ不動産会社のサポートを受けたい方におすすめです。
専任媒介契約の特徴を正確に理解して、強みを活かした販売活動をおこなってもらいましょう。