借地の相続でよくあるトラブルとは?
発生しやすい事例と解決策を解説2025.02.13
●借地の相続はトラブルが多いと聞いた
●どのような内容のトラブルが多いのか気になる
●トラブルの解決策を知りたい
親族同士でも相続トラブルは起きやすいものですが、借地の場合には地主の権利にも配慮が必要になるため話し合いが難航します。
大切な財産をトラブルなく相続するには、発生しやすい事例と解決策を事前に知っておくようにするのが大切です。
ここでは、借地を相続する方に対し、起こりやすいトラブルの事例と、その解決策を解説します。
この記事でわかること
●借地で起こりやすいトラブルの事例
●借地の相続について
●借地相続によるトラブルの解決方法
借地権とは
土地を所有者から借り受けて、その土地を利用するための権利を借地権といいます。
借地のため、自分の財産ではないと勘違いしている方もいますが、借地権も相続対象です。
本記事では、普通借地権と定期借地権について解説します。
普通借地権
30年を存続期間としますが、土地所有者と契約すれば30年以上でも借地権を継続できます。
借主は必要であれば土地所有者に契約更新を求められますが、所有者はそれを拒否できません。
そのため、借地に建物がある場合、借主は契約を更新して、そこに住み続けられるのです。
借主が建物を売却したい場合には、建物買取請求権を行使して土地所有者と話し合い、買い取ってもらいます。
定期借地権
定期借地権は、契約期間が決められた間だけ土地を使用できる権利です。
普通借地権は借主に有利な権利ですが、定期借地権は土地所有者の権利を守るもので、契約終了後には土地にして返却しなければなりません。
住宅を建てる場合には、存続期間が50年以上の一般定期借地権があり、オフィスなど事業用定期借地権は30年以上50年未満があります。
借地の相続トラブル例と対応方法
借地を相続する場合は土地所有者の承諾を得る必要はありません。
承諾が必要なのは、相続人以外の第三者に借地権を譲るケースのみです。
借地の相続にはトラブルが多いため、知識がないままに口約束したり契約しないように注意してください。
起こりやすいトラブル例と、その対応方法について解説します。
土地の返却や立ち退きを求められた
借地の相続タイミングには、土地の返却や立ち退きを求められやすくなります。
所有者が亡くなり交代した際に、新しいオーナーが土地を売却したいようなケースです。
借地からの立ち退き請求には法的な「正当事由」が必要であり、土地を相続したから立ち退いて欲しいや、売却したいから返却して欲しいなどには応じる必要はありません。
建物が老朽化して危険性が高い場合や、空き家であったり、家賃として賃料が支払われていなかったりなどの理由がない限りは、返却や立ち退きは理由として認められないのです。
土地所有者と話し合いが進まない場合には、速やかに弁護士に相談してください。
名義変更手数料を請求された
借地権の名義変更の手数料を請求されるケースがあります。
第三者に売却する際には支払う必要がありますが、相続での名義変更には必要がないものです。
一般的に相続によって土地の借主を変更した場合、その事実を土地所有者へ報告するのみで、費用の支払いは必要ありません。
相続の承諾は必要ありませんが、知らないうちに名義が変更されているのは、あまり気持ち良くはないでしょう。
相続後は名義変更した旨を報告し、被相続人と同じ契約内容で相続人が土地所有者と借地契約を締結します。
また、土地所有者とトラブルにならないためにも、手数料を支払って事なきを得るのも一つの方法です。
借地料を値上げされる
借地権を相続した際に「借地料を値上げしたい」と相談されるケースは良くあります。
被相続人と顔見知りや友人だったため、相場より安く貸していたり、被相続人と連絡がつかず値上げ交渉ができなかったりしたのが原因です。
借地契約書に「定期的な借地料の見直しができる」「協議によって借地料を変更する」とあった場合には、相談の上で相場に近い借地料を決定します。
借地料の交渉は相続人と地主だけでおこなわずに、専門家に事前に相談し、トラブルにならないよう進めましょう。
家の建て替えを拒否されてしまった
相続した借地で家の建て替えを検討している方もいるでしょう。
契約書に、建て替えや増改築の承諾料が必要にある特約が付いている場合には、土地所有者の承諾が必要です。
特約が付いていない場合でも、土地所有者に了解を得てから工事に入った方がトラブルにはなりにくいでしょう。
家の売却を拒否される
借地を相続したけれど、家は必要ないため売却したい方もいます。
必要なければ権利の売却も可能ですが、借地権の種類によって土地所有者の承諾が必要です。
家を売却したい場合には、借地権が地上権か賃借権かを確認します。
地上権であれば土地所有者の承諾は必要ありませんが、賃借権であった場合には土地所有者の承諾なしに売却はできません。
借地とはいえ、建物には建築から維持費まで多額の費用が掛かっているため、売却ができないと住み替えもできなくなります。
このようなトラブルは少なくないため、土地所有者から承諾が得られず金銭的に困窮した場合には、裁判所に借地非訟の申し立てをして売却を進めるようにします。
相続人同士でもめてしまう
借地の相続は、土地所有者とのトラブルだけでなく、親族である相続人同士で揉めやすいのが特徴です。
財産としての価値が大きな借地に家が建っていれば、相続財産の価値も高くなるため、共有相続した場合には相続税の支払いや家の売却でもめる可能性があります。
借地権の共有は、権利関係が複雑なため土地所有者を巻き込み、大きなトラブルに発展するケースが多いです。
遺産分割協議で話しがまとまらない場合は、法的な手続きで解決するようになります。
借地の相続トラブルを事前に防ぐためには
土地所有者とのトラブルは日頃から交流があったり、こちらから譲歩していたりした場合、大きな問題にならないケースが多いです。
大きな問題となるのは親族間とのトラブルで、相続人が複数いる場合には注意が必要です。
トラブル防止策について解説します。
借地は共有しない
相続人が複数いる場合、配偶者と子どもが借地を共同相続するケースがあります。
共同相続すると地代や税金は共有者全員で負担しますが、請求書や納税書は代表者に届くため、後日請求しても支払わない相続人がでてくる可能性があります。
また、売却に同意しない相続人がいるとスムーズに処分ができなくなるため、注意が必要です。
借地の相続は単独名義で相続するのが望ましいため、借地は配偶者が相続し、他の相続人は金融資産を均等に相続するなどを遺産分割協議で決めると良いでしょう。
遺産分割協議書を作成する
トラブルの原因になりやすいのは、相続人が複数で誰が借地の相続人になるのか決まらないケースです。
借地がある地域に相続人が住んでいれば問題がありませんが、以下のような場合には遺産分割協議書の作成に時間がかかります。
● 遠方に住んでいて連絡がとりづらい
● 相続の話し合いにこない
● 引っ越してから連絡が取れなくなった
このような場合には司法書士や弁護士に依頼しますが、海外などに移住してしまうと連絡がつかず、遺産分割協議がまとまりません。
相続する親族が遠方にいる場合、遺産分割協議がまとまらないと何度も脚を運ぶようになるため、さらなるトラブルになりがちです。
このような場合には迷わず専門家に相談し、できるだけ早くに遺産分割協議書を作成しましょう。
借地上の建物は登記する
借地を相続する場合、借地上にある建物の登記が必要になるため、借地を相続した人が建物の登記をおこないます。
借地と建物の登記を別の相続人の名義にしてしまうと、土地所有者に無断で転貸や譲渡をしたと思われてしまいます。
親子や兄弟姉妹でも、土地所有者から見れば他人のため、契約違反として契約を解除されるケースもあるので注意が必要です。
借地の売却を検討する
相続でトラブルになるのであれば、借地権の売却を検討してみましょう。
土地所有者の承諾を得れば、借地権と底地権を同時に売却が可能になり、また買主の方は土地建物の所有権を得られます。
権利を単体で売却すると価値が下がるため、土地所有者の借地人にとってもメリットのある方法です。
このほかに、借地を土地所有者に売却すれば、建物の所有権も同時に渡せます。
土地所有者への承諾を取り、承諾料を支払う必要はありますが、親族間での争いを防ぐ効果はあるでしょう。
相続税にも注意
相続税は、借地の評価額で決められます。
土地の評価額が高くなると、相続税も高額になってしまい、納税額を見て驚いてしまう方もいるでしょう。
借地が高額である場合には、納税対策としてある程度多めの資金を用意しておくのが大切です。
相続税は、相続発生を知った時点から10か月以内に相続税申告をおこないましょう。
遺産分割協議は、相続税申告の期限までに済ませて書面に残してください。
まとめ
借地の相続は、土地所有者だけでなく相続人とのトラブルも多いため、あてはまりそうな事例を調べて対策をしておくと良いでしょう。
通常の相続と違い、借地の場合は複雑で深い知識が必要になるケースもあります。
自分たちでは解決できないような問題が起きそうなときには、事前に専門家に相談するのをお勧めします。