空き家を相続するデメリットは?リスクと対処法を解説2024.11.08
空き家は相続しないほうがいい?
相続した実家を空き家の状態で放置してはいけない理由は?
空き家を相続したらどうするべき?
空き家を相続する予定の方のなかには、本当に相続しても良いのか、放置してはいけないのか悩んでしまう方も多いでしょう。
ここでは、空き家を相続するデメリットと解決策をお伝えしたうえで、空き家の状態で放置するリスクと具体的な対処法を解説します。
この記事でわかること
空き家を相続するデメリット
相続した空き家を放置するリスク
空き家を相続したときに考えるべき対処法
空き家相続のデメリットと解決策
実家や親族の所有していた建物を相続すると財産が増えて得をすると考える人もいますが、いくつかのデメリットもあるので注意が必要です。
すでにマイホームを購入していたり、相続した不動産の遠方に住んでいたりするときは、活用方法も限られてしまうでしょう。
空き家を相続する際に把握しておくべきデメリットと対処法を解説します。
相続税と登録免許税がかかる
相続した不動産は、居住者の有無を問わず相続税が発生します。
被相続人が居住用として住んでいた物件に対しては、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例が適用され、相続税評価額を最大80%まで減額できます。
ただし、誰も住んでいない空き家に対しては小規模宅地等の特例が適用されないので、相続税の減税措置は利用できません。
また、不動産の相続登記の際には、相続税の申請と同時に固定資産税評価額に対する0.4%を登録免許税として課税されます。
減税措置が適用されずに資産価値が高く評価されてしまうと、相続人の大きな負担となります。
維持すると固定資産税がかかる
空き家を相続して所持し続けるとなれば、毎年固定資産税の納付義務が生じます。
居住者の有無を問わず固定資産税は一律に設定されており、毎年所有者に対して納税通知が送付されます。
毎年発生するランニングコストの一部になるため、誰かが住んだり賃貸運用して収益化したりしない限りは、無意味な出費になりえるので注意が必要です。
所有期間が長引くほど、固定資産税の総支払額は高くなっていきます。
さらに、2023年には空き家対策特別措置法の改正案が可決されて、倒壊リスクや著しく景観を損なう状態の建物は減税措置が適用されなくなりました。
減税措置が適用されないと、物件タイプによって3〜6倍の増税につながります。
管理の手間と費用がかかる
空き家を相続した場合、誰も住んでいなくても管理をしなければなりません。
一戸建て住宅では、換気や通水のほかに部屋の掃除や庭の草むしりなど基本的な作業をするだけでも1日がかりの手間がかかります。
遠方に住んでいて飛行機や新幹線などでアクセスする必要があれば、1回の訪問で数万円単位の出費になるでしょう。
手間を削減するならば管理会社に委託する方法もありますが、毎月5,000〜10,000円程度の管理費用を支払わなければなりません。
さらに、外壁や屋根の老朽化が進めば大型修繕が必要になりますが、100万円単位の高額な出費が発生する可能性もあります。
税金のほかに不定期で維持費が発生する点も、資産計画に入れる必要があります。
管理義務が生じる
空き家を相続する際、所有者には管理義務が生じるので、土地や建物を適切な状態に維持するように努めなければなりません。
築年数の古い実家や周囲に隣接した建物が多い物件を相続したケースでは、とくに注意が必要です。
自分が相続した建物が自然災害などで倒壊して周囲の物件に被害をもたらしたり、物件の一部が飛んでいき誰かを怪我させたりしたら、所有者に責任が問われてしまいます。
また、自治体が著しく衛生面や危険性の高い物件と判断した際には、修繕やリフォームなどで改善しなければなりません。
自治体からの指導を無視すると、最終的に強制撤去されてしまう可能性もあるので、長期的に管理する責任がのしかかる点を理解しましょう。
ちなみに、遺産放棄をしたものの後順位の相続人がいないと、最後の相続人に管理義務の責任が残ります。
相続した空き家を放置するリスクは?
少子高齢化や新築思考などを理由に、日本国内では空き家の数が増加しています。
空き家の大半は相続によるものだともわかっており、売却しようにも買い手が見つからずに、ついつい放置する人も多いでしょう。
しかし、空き家を放置すると建物の劣化による近隣トラブルや自治体からの指導、税金や管理費の負担面からデメリットが生じます。
一般的に誰も住んでいない物件は経年劣化の速度が早まるので、倒壊リスク・腐敗・異臭などで近隣住民からクレームが入りやすいです。
自治体からの指導を無視して放置すると、最終的には強制解体になる可能性もあるので注意が必要です。
また、土地や建物は使用状況を問わず、所有者に対して税金と管理税の支払い義務があります。
将来的に利用する予定のない不動産は、不必要に出費を重ねる原因にもなりうるので早期処分を検討するのが賢明です。
相続した空き家の対処法
相続した空き家を放置するとさまざまな問題が蓄積されていくため、できるだけ早いタイミングで対処できるように準備を進めるべきです。
おもに3つの方法があるので、それぞれ解説します。
住居として活用
相続人がマイホームを購入していないのであれば、住居として空き家を活用できます。
先祖代々大切に残してきた土地や幼少期を過ごした実家を相続した際には、売却したり第三者に貸し出したりしたくない方も多いでしょう。
誰も住んでいない建物は老朽化も進みやすいので、より良い状態で維持するためにも自分が住む方法はメリットが大きいです。
ただし、すでにマイホームを持っていたり仕事の都合でアクセスが悪かったりするのであれば、ほかの活用方法を検討してみてください。
賃貸物件として第三者に貸し出し
資産価値の高い空き家を相続したならば、第三者に貸し出して収益化できます。
立地・間取り・広さなどで借り手が見つかりそうな物件の場合は、毎月家賃収入が得られるので、思い入れのある物件でも手放さずに運用できます。
ただし、第三者に貸すためにはハウスクリーニングやリフォームが必要なときもあるので、初期費用が発生する可能性も視野に入れておきましょう。
3年以内の売却
相続した空き家に誰かが住んだり賃貸物件として貸し出したりする予定がなければ、できるだけ早く売却するのがおすすめです。
なぜなら、相続から3年以内に売却した空き家は、最大3,000万円の譲渡所得の特別控除や取得費加算の特例が適用されるケースがあるからです。
いくつかの適用要件を満たす必要があるものの、資産価値の高い空き家を売却しても相続人の税金負担は小さくなります。
いずれかの特例を利用するにしても3年以内の売却が絶対条件のため、相続したらできるだけ早く販売活動をはじめましょう。
空き家を相続するか相続放棄するかの判断ポイント
空き家を活用する予定がないのであれば、相続放棄の選択肢があります。
しかし、相続放棄をすると空き家以外の財産も引き継ぐ権利を失ってしまうので、気を付けなければなりません。
ここでは、相続放棄を検討している人が確認するべきチェックポイントを解説します。
相続人
空き家のように物理的に分配がむずかしい財産は、複数人で相続する共有名義ではなく代表者1人が相続する単独名義のほうがよいとされています。
なぜなら、共有名義になると全員の合意なしに売却やリフォームができない場合や、税金や管理費の負担が偏るケースがあるからです。
相続するためには優先順位が設けられているものの、遺言書があると順位が入れ替わるケースがあるので厄介です。
空き家を単独相続する人が決まらないのであれば、負担になるだけのため相続放棄を検討しなければなりません。
相続する費用
空き家を相続する際、税金・手数料・維持費・管理費など費用がかかります。
費用面を考えずに活用する予定のない空き家を相続すると、売却できずに毎月・毎年無駄な諸費用を払い続けなければなりません。
空き家を相続するとどれほどのランニングコストがかかるのか、事前の検討が重要です。
相続するときには相続税・登録免許税がかかりますが、評価額に応じて税金額が変動します。
また、固定資産税・都市計画税・管理委託費・メンテナンス費・修繕費などは、空き家の広さや状態に応じて変動します。
相続時の費用やランニングコストが負担に感じるのであれば、相続放棄も視野に入れたうえで検討しなければなりません。
空き家以外の財産と負債
空き家を相続するのが大きな負担になるのならば相続放棄する選択肢もありますが、ほかの財産もすべて失ってしまいます。
そのため、相続放棄をする前には空き家以外にどのような財産・負債があるのかを入念にリサーチしなければなりません。
財産には証券・自動車・貴金属などが含まれており、負債には住宅ローンや借入金などが含まれます。
空き家の維持費・処分費用・負債が財産を上回るならば、遺産すべての相続放棄をする選択も視野に入れるべきです。
一方でどうしても手放したくない財産があるなら、相続放棄を慎重に決断してください。
空き家の資産価値と需要
相続後に空き家を売却して現金化したり、賃貸物件として貸し出したりするつもりでいるのであれば、資産価値や需要があるのかの確認が必要です。
資産価値があるなら売却できる確率は高くなりますが、譲渡所得に応じた税金の支払額が高くなるので気を付けましょう。
逆に資産価値や需要のない空き家を相続してしまうと、想定どおりに売却・賃貸としての貸し出しができずに費用の負担だけが大きくなる可能性があります。
そのため、現実的に売却や貸し出しが厳しいのなら、相続放棄や無償譲渡などの処分方法を考えなければなりません。
空き家に使える特例の有無
空き家の相続では、いくつかの適用要件を満たしているだけで税金を最小限に抑えられる特例が利用できる可能性があります。
相続時・空き家の売却時には、多くの費用がかかるからこそ、あらかじめ節税対策の手段をリサーチしておくと得策です。
空き家に使えるおもな特例は、空き家の譲渡所得3,000万円特別控除と小規模宅地等の特例の2種類です。
空き家の譲渡所得3,000万円特別控除とは、被相続人の居住用物件・耐震基準・建築時期などの適用要件を満たすと最大3,000万円控除されます。
小規模宅地等の特例とは、一定要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%まで抑えられます。
金銭的な負担を軽減するためにも、減税措置が利用できるかどうかを確認したうえで、相続する負担が少なく済むかどうかをチェックしましょう。
まとめ
相続で空き家を取得した際、適切に管理しなければ近隣トラブルや強制撤去させられる可能性があります。
所有者には空き家の管理義務があるので、定期的に物件を訪れて保守点検をするか、管理会社に管理を委託する必要があります。
もしも自分で住んだり第三者に貸し出したりする予定がなければ、特例が利用できる3年以内の売却も検討してみてください。