相続した空き家の対処法とは?
放置し続けるリスクや相続する際の注意点も解説2024.03.04
相続した実家を、空き家のまま放置しても大丈夫?
使い道のない空き家の対処法を確認したい
空き家を相続する際に注意点はある?
実家を相続したものの、使い道がなく空き家になってしまい、どう対処すればいいか悩んでしまってはいないでしょうか?
本記事では、空き家を相続したものの扱いに困っている方に向けて、放置し続けるリスクや具体的な対処法、相続する際の注意点などを解説します。
この記事でわかること
相続した空き家を放置し続けるリスク
相続した空き家の対処法
空き家を相続する際の注意点
1.空き家を相続したまま放置するのはリスクが大きい
人が住まない空き家は劣化するのが早いため、定期的な掃除や換気が必要不可欠です。
ですがもし、何も管理せず放置し続けてしまったら、一体どうなってしまうのでしょう?
まずは相続した空き家を放置してしまった場合の主なリスクについて、解説します。
1-1.固定資産税が最大で6倍になる
所有する土地や建物には、不動産価値に応じて固定資産税がかかりますが、それは空き家も例外ではありません。
使いもせず、ただ放置しているだけの空き家に税金の支払い義務が生じるのですから、負担に思う方は少なくないでしょう。
ですが空き家を放置し続けて劣化が進み、倒壊などの危険が高いと判断されてしまった場合、固定資産税が最大で6倍にまで増えてしまう可能性があるので、注意が必要です。
具体的には、国土交通省の定めるガイドラインなどを基準に該当する危険・有害な状態と認められた場合、自治体から管理不全空き家、または特定空き家に指定されてしまいます。
通常、住居に対しては固定資産税の軽減措置が適用されていますが、管理不全空き家や特定空き家に指定されると、翌年から軽減措置の対象外となってしまいます。
その結果として、固定資産税が最大で6倍になってしまうのです。
1-2.資産価値が急速に低下する
人が住まなくなった家は急速に劣化が進むため、それに応じて資産価値も急速に低下します。
資産価値が下がれば売却価格が低下しますし、売却しようにも劣化が進んで状態が悪くなってからでは、買手を見つけるのさえ困難となるでしょう。
もちろん適切な修繕やリフォームを施せば、資産価値を高めるのも可能です。
ですが劣化した空き家は、外観など目に見える部分もさることながら、天井裏や床下などの見えない部分にもさまざまな不具合が発生しています。
建物全体がもろくなっている以上、部分的な修繕や簡易なリフォームだけでは到底済みません。
売却前に、高額な費用がかかってしまう可能性が高くなるでしょう。
1-3.犯罪に利用されるおそれがある
長らく放置され、人の出入りする気配がまったく見られない空き家は不法侵入が発生しやすくなるため、場合によっては犯罪に利用されてしまう可能性があります。
たとえば違法薬物の受け渡し場所として、放置され人の出入りがまったくなかった空き家が利用されたケースが、実際に発生しています。
不法侵入者が、空き家内に残された金品を盗み出すケースも少なくありません。
放置されて荒れ果ててしまった空き家には、周辺住民も近寄らなくなってしまいます。
そうしてますます人の目が遠ざかった空き家は、犯罪者や不法侵入者にとって格好の的です。
犯罪の温床になってしまうリスクが高くなるでしょう。
1-4.不法投棄や放火のターゲットにされやすくなる
まったく管理されていない空き家には、不法投棄のターゲットにされやすいリスクがあります。
敷地内にゴミが溜まってしまうと、悪臭やハエなどの害虫、ネズミなどが発生するおそれがあるため、近隣住民の迷惑になってしまう可能性が高いです。
溜まったゴミがさらなる不法投棄の呼び水となってしまう側面もあるため、早めの対処が求められます。
人の目が届かず、敷地内にゴミなどの可燃物が多い空き家は、放火の標的にされてしまう可能性も高まります。
発見が遅れると周囲の建物に延焼してしまう可能性も高くなるため、大変危険です。
1-5.近隣住民の迷惑になるおそれがある
放置され続けた空き家は、外壁が崩れるなど倒壊の危険が出てくるだけでなく、景観の悪化、たまったゴミによる悪臭や害虫・害獣の発生など、周囲に悪影響を及ぼす可能性が高いです。
また不法侵入や住み着き、盗難、不法投棄、放火など、犯罪行為も招きやすくなるため、周辺地域の治安悪化の原因になってしまうおそれもあります。
このような空き家は、近隣住民からのクレームや、トラブルの原因になる可能性が高いです。
苦情を無視して放置を続けた結果、損害賠償を求める裁判を起こされてしまったケースもあるので注意してください。
2.対処法は空き家の資産価値を確認してから決めるのがおすすめ
不要な空き家の対処方法はいくつかありますが、空き家にどの程度の資産価値が残されているかによって、取れる対処法は違ってきます。
たとえば資産価値が低く、家としての需要が低い場合は、空き家のまま売却するのは難しくなるでしょう。
一方で家の資産価値が高く需要が見込める場合は、売却できる可能性が高まるだけでなく、賃貸として貸し出すなど、別の対処法も選択肢に入ってくる可能性が高まります。
空き家の資産価値を確認する方法としては、固定資産税評価額から計算する方法や、地域の相場から推測する方法がありますが、不動産会社に訪問査定を依頼するのが手軽で確実です。
相続後、できるだけ早い段階で確認しておきましょう。
3.相続した空き家の対処法
使い道のない空き家を相続した場合の対処法は、以下の7つが考えられます。
売却する
賃貸物件として貸し出す
自宅として住む
解体して売却する
解体して土地活用する
自治体などに寄付する
国に引き渡す
ご自身の状況や空き家の資産価値なども考慮しつつ、どの対処法にするのか検討しましょう。
3-1.売却する
空き家にある程度の資産価値がある場合は、売却できる可能性があります。
手放してしまえば管理をする必要も、固定資産税などの維持費を支払う必要もなくなるので、できるだけ早く決断するのがおすすめです。
複数の相続人での共有名義になっている場合は、共有者全員が売却に同意する必要があるので注意してください。
しっかりと話し合い、同意を得るための時間を用意しましょう。
売却によって利益が出た場合、その利益に対して所得税や住民税が課せられますが、相続空き家の3,000万円特別控除が利用できる可能性があります。
売却時の税負担を大幅に減らせる制度なので、積極的に活用してみましょう。
3-2.賃貸物件として貸し出す
空き家を手放したくない場合には、賃貸物件として貸し出す方法があります。
建物の状態が良く、賃貸物件としての需要も期待できる場合におすすめです。
建物の劣化が進んでいる場合は、状態に応じてリフォームや建て替えが必要になるので注意してください。
戸建ての賃貸はあまり馴染みがないかもしれませんが、近年はファミリー層からの需要が増加しているものの、供給数が足りていない状態です。
需要が見込める立地であれば、安定した収入源になる可能性も十分にあるでしょう。
ただし大家としての管理責任が発生するほか、入居者が見つからなければ収入は得られないなど、リスクがともないます。
3-3.自宅として住む
マイホームを所有していない場合は、自宅として移り住むのも方法の1つです。
売却が難しい場合や、思い入れのある空き家の場合におすすめの方法ですが、間取りや内装が気になるのであれば、リフォームをして理想的な空間に仕上げるのも良いでしょう。
すでにマイホームを所有している場合でも、セカンドハウスとして利用する方法もあります。
ただし自治体によっては、セカンドハウスとして利用するための届け出が必要な場合があるので注意してください。
3-4.解体して売却する
建物の状態が悪く売却が難しい場合には、建物を解体して更地の状態で売り出すのも良いでしょう。
立地が良く、土地自体に十分な価値が見込める場合には、建物を解体したほうが売れやすくなる可能性があります。
ただし、空き家の解体には100万円以上の費用が必要になる点や、住居に対する固定資産税の軽減措置の対象外となってしまう点に注意してください。
更地のまま翌年1月1日までに売却できなかった場合、固定資産税が高くなってしまいます。
3-5.解体して土地活用する
解体後に売却せず、土地活用する方法もあります。
具体的な活用方法は、駐車場やコインパーキング、駐輪場、コインランドリー、トランクルーム、貸店舗などさまざまです。
うまくすれば安定した収入が得られるので、その土地の需要に合った活用方法を検討してみましょう。
ただし、ある程度まとまった初期費用が必要になるほか、必ずしも収入が得られるとは限らない点に注意してください。
3-6.自治体などに寄付する
売却が難しい場合には、自治体や企業、NPOなどの公益法人に寄付するのも1つの方法です。
ただし、公益法人への寄付は受け入れられやすいものの、企業や自治体は難しい傾向があります。
特に自治体への寄付の場合、利用価値の認められない空き家の寄付は、基本的に認められません。
事前に寄付について相談するなどして、確認しておくのが良いでしょう。
自治体以外に寄付した場合は、寄付した側にみなし譲渡所得税が発生するケースがあります。
公益法人に寄付した場合は非課税になりますが、さまざまな手続きが必要になるので注意してください。
3-7.国に引き渡す
令和5(2023)年4月27日より、相続した土地を国に引き渡せる「相続土地国庫帰属制度」の運用が始まりました。
いくつかの要件を満たしている必要はあるものの、一定の負担金さえ支払えば、不要な土地を引き取ってもらえます。
近年、人口減少などの影響で土地の需要が低下しており、土地の売却が難しくなってきています。
土地は所有しているだけでも、管理する手間や固定資産税などの維持費がかかるうえ、必要ないからと言って捨てられるものでもありません。
そういった状況を踏まえて作られたのが、相続土地国庫帰属制度です。
引き取ってもらうのに費用がかかりますが、要件さえ満たしていれば確実に土地を手放せます。
建物だけでなく、土地そのものの売却も難しい場合は、ぜひ利用を検討してみてください。
ただし、国が引き取ってくれるのはあくまで土地だけのため、事前に建物を解体しておく必要がある点に注意してください。
4.空き家を相続する際の注意点
空き家の相続前や相続後には以下の通り、注意したい点がいくつかあります。
相続放棄も検討する
相続後すぐに相続登記を済ませる
小規模宅地等の特例を利用する
売却する場合は3,000万円特別控除を利用する
それぞれ解説します。
4-1.相続放棄も検討する
相続前に不要な家だと判断できるなら、そもそも相続しない、というのも1つの方法です。
相続放棄は、財産を相続する権利そのものを放棄するための手続きです。
不要な空き家や、借金などのマイナスの遺産を相続する必要がなくなりますが、プラスの財産も一切受け取れなくなってしまうので、注意してください。
受け取れる遺産よりも空き家の維持や処分費用のほうが高くつきそうな場合や、プラスよりもマイナスの遺産のほうが多い場合には、相続放棄も検討してみてみましょう。
4-2.相続後すぐに相続登記を済ませる
令和6(2024)年4月1日から、相続登記が義務化されました。
これにより、相続の開始から3年以内の登記が必要です。
期限を過ぎても登記をしなかった場合、過料が発生する可能性があるほか、土地の売却ができなくなるおそれがあるため、忘れないようにしてください。
空き家を売却する際は、売却前に相続登記を済ませ、空き家の名義と実際の所有者を一致させておく必要があります。
売却活動をスムーズに始められるよう、相続後できるだけ速やかに登記を済ませておきましょう。
相続登記は自分でもできますが、手間がかかるだけでなく、ある程度の専門知識も必要です。
基本的には司法書士に依頼したほうが良いでしょう。
4-3.小規模宅地等の特例を利用する
小規模宅地等の特例とは、相続した家が建っている土地にかかる相続税が大幅に軽減される特例です。
具体的には、相続した宅地の相続税評価額が最大で80%減額されます。
たとえば相続した土地の評価額が1億円で、相続税の税率が10%だった場合、納税額は以下のように変化します。
制度を利用しない場合:1億円 × 10% = 納税額1,000万円
制度を利用する場合:2000万円 × 10% = 納税額200万円
利用できれば相続税の負担を大幅に減らせるので、相続時には利用条件を満たしているか、必ず確認しましょう。
4-4.売却する場合は3,000万円特別控除を利用する
空き家を売却する際は、相続空き家の3,000万円特別控除を利用しましょう。
この制度によって、空き家の売却益(譲渡所得)から最大で3000万円まで控除できます。
具体的には、譲渡所得が3000万円以下の場合、譲渡所得税がかかりません。
こちらの制度も一定の要件を満たしている必要がありますが、利用できればかなりの負担減になるでしょう。
ただし、相続開始から3年以内が利用期限と定められているので、売却する場合は期限を過ぎないように注意してください。
5.まとめ
空き家のまま放置し続けると、固定資産税が6倍になる、犯罪に利用される、不法投棄や放火のターゲットにされる、などのリスクが高まります。
空き家の資産価値を確認したうえで、売却や賃貸、解体、土地活用など、空き家の対処法を検討しましょう。
また空き家を相続する際は、相続放棄の検討や、小規模宅地等の特例の利用を忘れないように注意してください。
売却時には、3,000万円特別控除を積極的に利用しましょう。